5
夢を見た。
僕は1人、草原に立っていた。
周りを見渡しても、そこには、何もない。
僕は広くて美しい所にいるはずなのに、何だか息が苦しくて、胸を抑えている。
気付くと僕は檻の中にいた。
僕は、出口を探す。だけど、無いのだ。何もない。
僕は、どんどん苦しくなる。
僕は、逃げられない。
目を開けると、僕はベッドに寝ていた。隣を見ると、友梨が寝ている。
僕は夕べ、声にならない声を上げて泣いてた。そしてそのまま、ベッドに行ったのだ。友梨は、僕を抱きしめていた。だけど僕は、それに甘えてはいけなかった。
どうして、僕は手に入らないものばかり求めてしまうのだろう。
どうして、僕は先生をこんなに好きなのだろう。
僕は……。
ホテルを出て、僕は友梨と別れた。電車に乗り、家へ向かった。きっともう、父さんは仕事に行っている。
学校に行く気にはなれない。先生にも、父さんにも、会いたくなかった。僕は、自分の恋を、自分の手で、終わらせてしまったのだ。
家の前に着くと、玄関の扉が開く音がした。ばあちゃんかな、と思って、僕は近付いた。
「愛斗」
出てきたのは、父さんだった。
「何でまだ居るん」
僕は足を止めた。父さんには、1番会いたくなかった。
「先生送って、そんままどこ行っちょったん」
「…関係ないやろ」
「純平は、家に帰ったで、さっき。お前はどこにおったんか」
「どこでもいいやん」
「愛斗!!!」
父さんが、僕に怒鳴る。父さんに怒られるのなんて、いつ以来だろうか。
「心配しちょったんぞ。先生にも、迷惑かけるやろうが!!」
「うるせえよ!!!」
僕は言い返していた。きっと、近所に聞こえるような、大声だった。
「お前、自分が間違ったこと、してないっち思っちょんのか」
父さんが僕に近寄ってくる。
「父さんに…何がわかるん。俺の欲しいもん、父さんにはわからんやろうが!!先生のことも、何も知らんくせに…先生が、俺のことなんか心配するかよ!!」
僕は、完全な八つ当たりをしているのだろうか。恋敵の父さんに、僕はただ吠えることしかできない。父親には敵わない。それは、確実なことだ。だけどそれが、こんな形で分かるなんて、残酷すぎる。
僕は、走っていた。
「愛斗!!!」
父さんの呼ぶ声がしたけど、僕は構わず走った。逃げたのだ。また、僕は。自分の思いと向き合うことから、逃げているのだ。父さんが、追いかけてきている気がした。僕は振り向かなかったけど、何となく、それが分かった。




