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携帯のアラーム音が、部屋に響く。僕は手探りで携帯を手に取り、片目を開ける。時刻は朝の、7時ちょうど。まだ五月だというのに、何だか暑く感じる。僕はベッドから起き上がり、制服に着替えた。
部屋を出て一階に降りると、リビングにはばあちゃんがいて、僕の朝食を準備してくれている。
「おはよう、愛斗」
ばあちゃんは、しわしわの顔をもっとしわしわにして、僕に笑った。
マナト、という僕の名前は、愛という漢字が使われていることで、小さい頃、女の子みたいだと、よくからかわれていたのだけど、僕は自分の名前が好きだった。なんだか、いい名前のような気がしていた。今ではもう死んだ母さんが、付けてくれた名前だ。
「愛斗、もうすぐ家庭訪問やなあ」
僕が朝食を食べていると、作業着を着た父さんが洗面所から出てきた。父さんは、建設業の社長だ。
「うん、多分今日、学校で家庭訪問の日程表もらうわ」
僕は食パンを食べながら、そう答えた。
父さんは、学校行事がとても好きだ。僕が幼稚園の頃から、PTAだの、家庭訪問だの、運動会だのは、毎回毎回仕事を休んで参加している。家庭訪問に至っては、僕も母さんと父さんと並んで、先生の話を聞かされていた。
「斉藤先生には、三年も世話になったけん。最後の家庭訪問は、お礼言わんといけんな」
父さんはニコニコしている。そう、僕は三年間、担任が変わっていない。クラス替えが無いからだ。だけど僕は、家庭訪問が憂鬱なので、三回も来なくていいだろ、と思う。だけど、そういうわけにはいかないみたいだ。
「じゃあ、行って来るけん」
僕は自転車の鍵を持ち、家を出た。




