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この街で、僕は恋をした  作者: めい
第四章
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2


僕は1人、勝手に先生と気まずいまま、毎日を過ごした。先生が僕に対して、何かを思っているのかは分からないけど、僕は二者面談のときの、告白のような、違うようなことをした自分が、すごく恥ずかしかった。


「愛斗、起きちょんか」


一階から、父さんの呼ぶ声が聞こえる。

今日は、母さんの命日だ。



母さんは、僕が高1の秋、急死した。脳出血で、倒れたのだった。


僕はそのとき、いつものように学校で授業を受けていた。放送で呼ばれた僕は職員室に行って、先生から、それを聞かされた。

僕は純平を呼び、先生の車で病院へ向かったのだけど、そのときはすでに、母さんは死んでいた。


ばあちゃんは、ぼろぼろと泣いていた。父さんは、ただ黙って、母さんの手を握っていた。

泣いてない父さんを見て、僕は、なんて奴だ、とか思っていたのだけど、その夜中に聞こえた、嗚咽のような泣き声を、僕は一晩中聞いていたのだ。


「準備できたかえ、愛斗」


ばあちゃんが喪服を着て座っている。僕が制服に着替えていると、純平もやって来た。


「もう、二年経つんやな。今もここにおりそう」


純平は、慰め方だとか、そういうのを知らない、というか、下手なので、ありきたりなことを言って、和ませようとする。


「じゃあ、行くで、乗りよ」


僕らは父さんの運転する車に乗り込んだ。



母さんの墓参りなんて、僕は滅多に来ない。父さんは多分、かなりの回数、行っている。


「母さん、来たで。寂しかったやろう」


父さんの、優しい声だ。僕はその声を聞くと、体の中の汚いものが、出て行くような気持ちになる。


「遅くなりまして、すみません!」


ふと、後ろから声が聞こえた。僕は、誰か親戚でも来たのかな、と思って振り向いた。

だけど、そこにいたのは、先生だった。


「裕子!来たんや」


純平も驚いて、先生の方を見る。


「俺が、呼んだんや。去年の命日んとき、次は来るっち、言ってくれたけん」


僕は、そう言って笑う父さんの声に、胸が痛くなった。どうして、どうして呼ぶんだ。僕と、父さんの、いる所に。僕が知らないところで、2人は連絡を取ってたのか。

神様は、どうあっても、僕を傷付けたいのか。

僕はそんなことまで思ってしまった。


「お母さん、お久しぶりでございます。昨年は、来られなくてすみません」


先生が、墓前で母さんに挨拶をしていた。僕の心は歪んでいて、父さんのこと、好きなくせに。なんて、思ってしまった。それは、ただの嫉妬から来る、心の叫びだ。


「先生、わざわざありがとう。今日は良かったら、うちでご飯食べて行きますか」


僕は耳を疑う。父さん、どうして、そんなことを言うんだ。僕はもう、先生を忘れて、苦しみから解放されたいのに。どうあっても、僕は、先生を諦められないのか。


僕が先生を見ると、先生はやっぱり、周りには気付かれないように小さな変化だけど、嬉しそうな顔をしていた。


「では、お言葉に甘えて」


「じゃあ、俺もお言葉に甘えて〜」


純平が、すかさず口を挟んだ。



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