表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この街で、僕は恋をした  作者: めい
第四章
16/33

1


夏休みが明けた。


僕は、友梨と続いていた。僕にとっては思いやりのない行為でも、友梨は感じていた。

友梨とは、先生を思い出すたび、重なった。友梨は、僕がどんなに強引なことをしても、悦んでいた。僕はその時間だけは、友梨だけを見ていられた。


純平は、夏休みは補習で終わった。彼女からは怒られ、先生からは呆れられ、とんでもない夏休みだったようだ。


僕は、先生を避けていた。出席をとるときの返事くらいしか、先生と話さなかった。個人的に呼ばれても、体調が悪いとか何とか、適当に断り続けた。

そして、友梨と重なる。

僕の感情はだんだん麻痺してきているようだった。

ただ僕は、先生を忘れることが出来たら、それで良かった。

そして、友梨を好きになれなくても、先生さえ忘れられれば。そう思って、毎日を過ごした。



だけど、担任を避けるなんて不可能に近くて、三年でもある僕らは、二者面談を担任としなければならなかった。


「次、瀬能」


僕の前の出席番号の奴が、僕を呼ぶ。僕は廊下に出て、先生と向かい合って座った。こんな風に近くで話すのは、久しぶりだ。


「瀬能くん、最近元気ないなあ」


先生は、僕をまっすぐに見つめる。僕は、目を合わせないように下を見る。


「進路はどうする?お父さんのとこは、継がんのやったかな」


僕は、沈黙を続けたかった。だけど、それだとどうも終わりが見えない気がした。


「やりたいこと、まだ分からん」


「そりゃあ、今決めたことが、人生ずっと続くわけやないけん。とりあえず働いて、行きたいとこあったら行くとか。やりたいこととか、欲しい資格とか、ないん?」


先生は、俯いている僕の顔を覗き込んだ。僕はそれに、心臓を締め付けられる。

だめだ、僕は先生を諦められない。その視線に、そう感じた。


「俺が、やりたいこと…」


先生に、好きだ、と言いたい。大事な時期なのに、僕の頭の中は色ボケでいっぱいだった。もう、どうあっても、先生のことしか考えられなかった。


「年上の嫁さん欲しいわ…」


僕は、そうつぶやいていた。


「お!いいやん、私とかどう?」


先生が、冗談めかして僕に言った。僕は先生の顔を、じっと見つめた。

先生、好きだ。先生が好きだ。僕は、久しぶりに見つめる先生を、すごく愛しく思った。

夏休みが明けてからは、見ないようにしていた、その姿を、僕は焼き付けるみたいに、見つめた。

その手に、触りたい。髪を撫でたい。僕だって…名前で呼びたいのに。


「ん?瀬能くん?」


「なに。嫁に来てくれるん?」


先生は、困ったように笑ったり、真顔になったりした。


「そんなことより、進路は?真面目に答えてよ〜」


「真面目に答えて、真面目に聞きよんのやけど」


先生は、黙ってしまった。僕は冷静にしていたけど、内心は消えてしまいたいくらい、泣きそうなくらい、心臓もバクバクした。


「…まあ、また考えがまとまったら聞くけん。次呼んで」


先生はそう言って、僕を見なくなった。僕はそれがすごく嫌だったから、また自分を隠す。


「とか本気にすんなよ、先生」


僕がそう言うと、先生は安心したように笑った。


「な、なんも本気にしてないけん!もう、最近おかしいんやけど瀬能くん!」


僕は笑いながら、教室へ戻った。

泣きたい。泣きたい。泣きたい。

また僕は、自分で自分の首を締めてしまったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ