4
次の日、僕は電車で大分駅へ向かった。長谷川友梨は、もう来てるだろうか。彼女のことを、何と呼べばいいのだろう。どこに行こう。何を話そう。
僕は、待ち合わせ場所に着くまで、そんなことばかり考えていた。
駅前に着くと、長谷川友梨が立っていた。
ピンクの、さも女の子、みたいなワンピースを着て、僕の方を見た。
「愛斗くん!おはよう!ごめんな、急に誘って」
「いや、いいよ。どこ行く?」
「あんな、水族館。姉ちゃんから、割引券もらったけん、行かん?」
長谷川友梨がそう言うので、僕らは、水族館に行く事にした。水族館までの道のりを、長谷川友梨はずっとしゃべり通していて、今までの彼氏は1人なの、だとか、好きな歌手は、とか、愛斗くんの好きなタイプは、とか、愛斗くんの好きな音楽は、とか。
僕は質問に答えていただけなのに、何だか疲れてしまった。
水族館では、イルカのショーを見たり、大きな水槽を見たりした。長谷川友梨は終始、はしゃいでいて、たまに僕を気遣ってくれたりした。
一日は、あっという間に終わって、僕と長谷川友梨は、水族館を出て、海の見えるところに座って休憩をした。
「愛斗くん、今日楽しかった?」
長谷川友梨が、急に聞いて来る。
「うん、楽しかったよ。水族館とか、俺、幼稚園とか以来やったし」
「良かった!わたしも今日楽しかったな。愛斗くん、ほんとかっこいい。一目惚れとか、人生で初めて」
一目惚れ…。僕は、先生と父さんのことを考えた。
だめだ、考えたくないのに。
「愛斗くん」
長谷川友梨の声が、急に小さくなる。
「付き合おうか」
僕が返事をする前に、長谷川友梨は話し終えてしまった。彼女からの、二度目の告白だ。
「いや、俺のことあんま知らんに、そんなこと言っていいん?」
「これから、知って行く」
長谷川友梨は、僕をじっと見つめた。
「わたし、愛斗くんのこと、もっと好きになると思う」
僕は、長谷川友梨から、目をそらせなかった。彼女は、真っ直ぐに、僕のことを好きなのだ。僕は、頭の中に出て来そうな、先生をかき消すように、返事を出した。
「いいよ、付き合おうか」
長谷川友梨は、一気に表情を明るくして、僕の腕にしがみついてきた。
「嬉しい!!」
僕は、もう考えるのを辞めておくことにした。いいんだ、これから、好きになっていけばいいんじゃないか。
僕は、先生への辛い思いを、もう捨てるんだ。
僕は自問自答する頭の中を、空っぽにした。そして、友梨にキスをしていた。




