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教室に戻ると、純平がふてくされながら待っていた。
「愛斗、告白でもされたん」
「ああ、なんか、メールしろっち」
純平は机に頭を乗せて、唸っている。
「あの女子さあ感じ悪いよな!俺のこと完全に無視で?ふざけんなよまじ」
「お前には彼女おるけんいいやろ」
僕は、長谷川友梨のアドレスを書いた紙を見つめた。僕の何が良かったのだろう。会話もしたことがないのに。第一、僕は彼女を初めて見たのに。
「愛斗、どうするん。付き合えば」
純平は、ヘラヘラと笑う。僕は少しムカついたので、純平の頭を鞄で叩いた。
「いてっ」
僕は笑いながら、教室を出た。
家に帰ってからも、僕はその紙を見つめていた。あの子は一体、何だったのだ。
「好きです、ねえ」
僕も、あんなに強引に真っ直ぐと、先生に言えたらどんなにいいか。教師と生徒なんて立場も関係なしに、勢いだけで進めたら。
そんなことを考えていると、この、長谷川友梨が、羨ましく思えた。
丸っこい字で、名前とアドレスを書いているメモ。
もし、この子と仲良くなって、好きになれたら、僕は先生への思いを消すことが出来るだろうか。
僕の脳裏を、そんな考えがよぎった。僕はずるい。
僕は携帯を手に取り、文章を作る。
『どうも。瀬能っす』
僕はメールを送信した。
すると、一分も経ってないんじゃないか、という早さで、返信がくる。
『うわわ!ありがとう!メールくれるなんて思ってなかった〜!いきなりごめんね。友梨って呼んでね!愛斗くんって呼んでいいかなあ☆』
なぜこんな文章を、素早く打てるのだろう。
『うん、よろしく』
僕はそう返し、先生のことを思い浮かべた。
この夏休み中に、僕は、この苦しみから抜け出せるだろうか。
僕の、最後の夏休みが始まる。




