何故ですの!
初めは何かどこかで見たことあるわ…だたの。
自分のお兄様を見てどっかで見たことあるわ…と、思ったなんて変な話よね。金色の髪に青い瞳。甘いマスクの物語の王子様の様な容姿をした二つ上のお兄様。そのお兄様を見て、幼い時の姿はこういう姿をしていたのね…と、思った時があるの。
…何でかしら???
思った自分にびっくりしたわ。
町の名前や初めて会う人の名前を知ってたりもしたの。どこで知ったのかしら? っと考えると頭の中に霧がかかったみたいにぼやけるわ。小さい頃はそれが当たり前で、気にしても仕方がないって事で考えるのを放棄してたの。
「っっううぅっっ!!!!」
前触れもなく、内側から何かが爆発して体の内側から痛みが走りましたの。その痛みに耐えきれなかった私は意識を手放したわ。
「フィーナ!!」
「……?」
「あぁ…良かった。目が覚めたんだね。初めて魔力暴走を起こしたんだよ。体は動かせる?」
目が覚めると、心配した顔をしたレツール・ビィンドル・デラントか私を抱きしめていた。
「レツぅーる?」
「っ!! 可愛い!! 僕の可愛い小鳥のような可憐な妹が僕の名前を呼んだ!!」
うぜえ。
一気に覚醒する意識と記憶たち。魔力暴走のショックにより、今まで感じていた違和感を理解した。
ここは乙女ゲームの世界だと言うことに。しかも主人公が現れる前の幼き時代。
しかも私はその攻略キャラの妹。
なんじゃそりゃぁ!!!
魔法系乙女ゲーム。主人公が魔法学校で魔法を学びながら恋愛や友情を育むというゲーム。
色々大変だったなぁ…。攻略キャラの好みに合うように魔法を磨きつつ好感度を上げていかないとイベントが起きない。好感度を上げないとチーム組めないし、魔法を磨きすぎると嫉妬されて好感度下がるし。魔法磨かないとチーム戦で負けてイベント起きないし。(磨いても戦い方が下手だと負ける事もある)しかも日常で攻撃受けるんだよ。いつ起こるかわかんないから防御魔法も磨かないとヤバいし。その日常で攻撃するのがフィーナ。攻略キャラナンバー2の王子様系キャラ‘レツール・ビィンドル・デラント’の妹。儚い系の美少女で、巨大な魔力を内側に秘めている所為で魔法を使うのが下手。魔力暴走を起こしては周りに被害炸裂という爆弾娘。「っ…ごめんなさい…」と毎回泣きながら謝るんだけど、泣きたいのはこっちだ!!! って思ったね。プレイヤーからついたあだ名が‘姫’。レツールを攻略しようとすると姫の攻撃を受ける確率も増える…。まぁ、姫と仲良くなるとボーナス貰えるんだけどねぇ……命がけだけどね。そのフィーナに私がなってる!!
どーしてぇぇ???
…考えても仕方がない。保留だ保留。違和感があった時だってそうしてきたんだから。
「………」
「僕の可愛いお姫様。大丈夫かい?」
心配そうにレツールが私の顔を覗き込む。
「……」
私の身内(兄)が王子キャラのレツール。……私の苦手攻略キャラだった。
ゲームの時はレツールのセリフが苦手で音声OFFしてたけど我慢だ我慢。あまりにもありえねぇ!! っと思う甘々セリフだけど……我慢できるかなー?
……意識してはイケナイ。この人はこれで通常運転ナノダカラ。幼くてもレツール。
「…大丈夫ですわお兄様」
そう言って私は微笑んだ。
とりあえず、魔力暴走しない為にも訓練あるのみ!!
****
日々、訓練してるけど……日常的に魔力暴走中。
本当に家が大きくて、金持ちで代々魔力が強い家系で助かった。魔力暴走しても対処がスムーズだし、強力な結界と巨大な敷地のおかげで被害が少ないし。貧乏だと強力な結界が張れなくて被害が大きくなるんだって。昔、町が消えたっていう記録が残っているらしいよ……。他人事じゃないデスヨ。
「はぁ……」
ため息が漏れる。
最近思ったけど、私の魔力暴走はイベントだから制御不可能なんじゃ……。
ありえそうでヤダ。
「僕の可愛い妹よ。ため息は幸せが逃げてしまうよ? さぁ、笑って?」
う・ざ・い・な・このシスコン兄貴!
私の魔力暴走を止めるために日頃から私の近くに居るっていうのは分かってるけど!!
「大丈夫だよ。僕が守ってあげるから」
そう言って私を抱きしめようとする手を私は抑えた。
スキンシップが激し過ぎるっ!!
「っ…」
「…くすくすくす」
初めは私がスキンシップを避ける(無意識に体が避けてた)と悲しい顔をしていたが、最近はそれを楽しんでいる事に気が付いた。気のせいでなければ腹黒キャラになってきたような……。
「ちゅっ」
私の頭にキスをした。
「っ!っっこの変態兄貴!!!」
「フィーナが可愛いからいけないんだよ? …お仕置きだね」
嬉しそうな顔してニッコリと笑う。
「あっ…」
「変態兄貴? どこでそのような言葉覚えたのかな?」
キラキラ王子スマイルのお兄サマ。お怒りデスネ。
記憶が復活してからどうも、乱暴な言葉遣いが時々出てしまいますヨ。
「ごごごごご…ごめんなさい」
「じゃぁ、昔みたいに‘大好きお兄様’って言ってキスして?」
「っ!!!」
素晴らしいお仕置きデスネお兄サマ。
ダメージを受けましたよ。
「……」
「フィーナ?」
笑顔ってコワインデスネ。
ここでぐずぐずしたら、お仕置きがパワーアップすること間違いなし。
女は度胸だ!! 相手は声変わり前の子供! 身内! お兄様!
「……だっ…だぃ…すき……おっ…兄様………ちゅっ」
そう言って私はお兄様の頬にキスをした。
体が熱い。特に頬に熱が集中するのが分かった。きっと顔が真っ赤になっているに違いない。
はーずーかーしーいぃぃぃっ!!!!! 穴プリーズ!!!!
「フィーナ」
もの凄く嬉しそうなデレデレスマイルのお兄様。
って、顔近い!!!
気付いた時は遅かった。キスの嵐炸裂。
「うきゃぁぁぁ!!」
「お昼にお客様来るからね」
満足顔のお兄様が、ぐったりしている私に言う。
「え?」
お客様? 聞いてないよ?
「僕と同じ年の息子も連れてくるらしいよ。だから、部屋から出ちゃだめだよ。僕の可愛いフィーナに悪い虫ついたら…何するか分からないしね」
笑顔なのに怖い。
息子をわざわざ連れてくるって事は、私たちと交流しなさいって事じゃないの?
あれ?
何か思い出的なイベントであったような……。
「5年後に入学する学校が同じらしいよ」
「!!」
思い出した! 攻略キャラのナンバー1の俺様系キャラ‘エネオス・グローイン・ボックス’。黒髪赤目の魔王様みたいな最強キャラ。設定だとレツールの親友だったはず。その二人の過去(出会い)イベント。…確かフィーナとは仲が悪かった気がする。魔力暴走をするフィーナに説教するシーンがあったし。
…会ってもろくな事にならなそう。なら、おとなしく引き籠ってよう。お父様の言い訳とかはお兄様がするだろうし。うん。
「…お部屋にいます」
「良い子だね」
そう言ってお兄様は頭を撫ぜた。
…もう、ハグとキスじゃなかったら…いいや…って思うぐらいにぐったりです。
疲れたから寝よう。うん。そう思いながら自分の部屋に行った私。
「……?」
何だこれ。
布団が山のように盛り上がっている事に気が付いた私は扉の前で固まった。
自分の部屋のベッドに誰かが寝ている。
そのベッドの布団の隙間から黒い髪の毛が見えた。
「……」
この家に黒髪の人間はいない。私のピンク色のレースたっぷりの子供用のベッドに寝れるのは子供だけ。黒髪の子供がベッドに寝ているということになる。
つまり、私のベッドに寝ているのは本日のお客様であるエネオス。
何でエネオスが私のベッドで寝てるのかなぁ…?
よし、決めた。
「ふふふふふ…」
憂さ晴らしもかねて攻撃します。だって面識ないから一応知らない人だし。どう考えてもレディーの部屋に無断で入った挙句、ベッドを占領するのは許されない行為。子供だからって許される行為ではありませんよ。
私は投げたくらいでは壊れない頑丈なものを探した。
「よし」
飾り棚の上にあった木で出来た小物を掴んだ。
「うっ……やめっ…」
私はまだ、攻撃していません。
「……」
うなされている子供。
何もしてないのに…なんか罪悪感が…。
「くぅ…ああぁ!!…」
「…はぁ…」
私はため息をつくと手にしていた小物をもとの場所に置き、兎の人形を取った。
魔力暴走を起こしてから私は眠れない日が続いたことがあった。いつ暴走するか分からない恐怖に怯えた。それに気づいた家族は一緒に寝てくれたり、私の部屋の結界を強化したり安眠グッツをプレゼントしてくれた。ベッドに施された美しい模様は魔力の安定と結界。侍女がリラックス出来る様にと庭師さん合同の優しいハーブの香りと私の頭に合わせた程よい硬さの枕を作ってくれた。布団は軽くて柔らかく魔力をくらってもそれを糧にしてしまう頑丈な素材。そして、私が手に持っている真っ白くて触り心地抜群の兎の形をした人形は魔法職人さんが作った安眠人形。どんな悪夢だろうがこれを抱いて寝ると安眠できてしまうという優れもの。しかもお兄様のお守り付き。どんな術かは怖くて聞けなかったけど。
私はその兎の人形を寝ている子供の横に置いた。
「……ふぅ…」
凄いなこれ!!
置いたとたん、唸り声が止んだ。そしてコロンと寝返りをうった。
「っ!!!」
初めて見る幼いエネオスの安らかな寝顔。良く言う天使の寝顔。しかも兎の人形と合ってる。
可愛い!!!
こんなに可愛いのに将来、俺様大魔王に変身するのか。もったいないなぁ。
「ふふふ…」
どうせなら堪能しようと、私は椅子をベッドのサイドの所に持って来て座った。
頭をなでなで。
やっぱりサラサラで気持ち良い髪~。
私はお母様に歌って貰った子守唄を歌う。
……実はこの歌、<安らかな眠り歌>と言う魔法の一種。効果も使用方法もその名の通り。
窓から入る温かい太陽の光と歌声が混ざり合って心地良い空間が出来上がる。
やれば出来るじゃない私。
その心地よい空間に私もまったり。気が付いたら寝てた……。
………?
寝てた上、何でベッドの中にいるの?
なーんーでぇぇぇーー。
しかも、身動きが取れない。お兄様と一緒に寝た時を思い出す。
後ろからガッチリ抱きしめられて甘々セリフの嵐。…爽やかな朝じゃないね。
その時と状況が酷似。
「姫だぁ~」
!!!
知らない人の声。
え? え? え? え?
そうだった!! 寝起きはどうしてもボケボケだわ。エネオスが私のベッに寝てたんだから……何で私もベッドにいるのか分からないけど。私を背中から抱きついているのはお兄様じゃなくて、エネオス。
「柔らか~い。いい匂い。本物の姫に触れるなんて…最高。小さくても可愛い」
ゾワゾワゾワ…。
うおっ!! きもいっっ!!!!
鳥肌が立った。
変態くさい発言に私がベットの中にいるのはエネオスの仕業だと気付いた。
しかも‘本物の姫’って言った!!
私と同じ元ゲームのプレイヤーってやつ?
フィーナの事‘姫’って呼んでたのはプレイヤーかお兄様だけだし。
ムニムニムニ
「っ!!!」
エネオス私の胸もんだー!!!!
「……残念。魅惑のメロンがない……」
「死ねっ!!!!」
9歳の子供が発育(特に胸)が良いわけないでしょ!!!
変態変態変態っ!!!
「姫が起きたっ!!!」
喜びの声を上げるエネオス。
『光の拘束の鎖』
魔法を繰り出そうとして失敗に終わる。
「!!!」
そうだった!! 魔力暴走があってベッドの中では魔法は使えないんだった!!!!
「姫姫姫ぇ~。声可愛い~!! もっとしゃべってぇ~」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
私が悲鳴を上げた瞬間、兎の人形の目が光ってエネオスの頭部に当たる。
「ぐえっ!!」
腕の力が弱まった隙に私はベッドから脱出に成功した。
これか! お兄様が言ったお守りはっ!! 凄い!!
「フィーナ!!!!」
魔法で私の部屋に現れたお兄様に私は抱きついた。
「お兄様!!!」
「フィーナ…。無事でよかったよ…」
「兄妹でラブシーン反対~!!!!」
攻撃から立ち直ったエネオスがふくれっ面で言う。
「…なるほど。居間の方にいたのは人形か」
「良く出来てるだろ!」
自慢げにニッコリ笑う。
「…あぁそうだね」
ニッコリ笑うお兄様。
もの凄く怒ってますよ。
「フィーナ」
え?
お兄様は私に移動魔法をかけた。
「あっ…待て!!」
視界が変わる瞬間に、毛布がエネオスを拘束したのが見えた。
「ぐえっ!!!」
「さて、どんなお仕置きがお好みかな?」
両親の元に私が届けられた為お兄様がエネオスに何をしたかは分からない。
けど…。
「申し訳ございません。僕の名前はエネオス・グローイン・ボックスと申します」
深々と頭を下げ、私から2メートル離れた距離。
その姿はまるで従者の様でした…。
何したのお兄様!!!
お兄様はにっこりと笑って私に一冊の本をプレゼントしてくれました。
「暫くは触れちゃダメだよ」
本には‘初めてのペットの飼い方’と記してあります。
「……」
「彼は魔力もソコソコだし、フィーナを慕ってるからね」
どうやら……ペットを手に入れたようです………。
フィーナ・ビィンドル・デラント
レツールの妹。魔力を暴走させてしまう儚げで気弱な少女。ヒロインと同い年。兄と同じ金色の髪に青い瞳。プレイヤーからは‘姫’と呼ばれる。
…が、現在は元プレイヤー。スキンシップが苦手で微妙に兄専属ツンデレ予備軍となりつつある。たまに口が悪くなる。ペットを正しく飼う為に奮闘中。
レツール・ビィンドル・デラント
フィーナの兄。甘いセリフと笑顔の王子様系攻略キャラ。魔法の力は幼い頃から妹を守る為に特訓していた影響で繊細な魔法が得意。神童とも呼ばれる。
…が、現在は妹のスキンシップ苦手を反抗期と捉え、ツンぶりを可愛がっている。妹が可愛くって仕方がない。腹黒い最強キャラに成長中。
エネオス・グローイン・ボックス
レツールと同い年。俺様キャラ。最大の魔力保持者で最強キャラ。我儘な俺様ぶりでレツールを振り回す。
…が、現在は元プレイヤー。フィーナ大好きの変態だが、暴走した結果レツールを怒らした影響で躾けられた。今はフィーナのペット。




