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短編集  作者: 紅もみじ
6/9

@言い訳じゃないさ

『言い訳だろうか』の続編。

そちらを先に読んでいただいた方が、面白味があると思います。


「じゃぁお先に失礼」

「ばいばーいなおちゃん」

ドアがパタンと閉まる。

沈黙。

俺、岡田誠也は冷や汗を背に感じながら、ある人物と二人きりの心臓に心底悪い状況の中にいる。仕事が終わらないから残るはめになっているわけだが、如何せん、全くはかどらない。

全く、今日は楽しみにしていたアニメが始まる日だっていうのに。録画してるけど。

それもこれもこいつ、会長である相模拓斗のせい。

俺は今、秘密を守るため、こいつのものになってしまっている。


「おい」

「……なに」


急に話しかけんな心臓に悪い。上ずったらどうしてくれるんだ。


「終わりそうか?」

「……」


いいえ。

あとデータのうち込みが30枚ほどあったりします。


「半分寄越せ。ファイル共有になってるだろ?」

「え、あ…うん」


俺なんもいってないんだけど。

相模は俺の顔を見て頬を緩める。そんなに分かりやすいだろうか。

とりあえず仕事が減るのは大歓迎なので、適当に、ちょっと多目にとって渡す。お前仕事早いからよゆーだろ。


「さっさと終わらせろ」


明らかに半分ではない量を文句も言わずに受け取り、相模はデスクに向かう。

少し、拍子抜けして俺も画面を見つめた。


キーボードを叩く音だけが、しばらくの間部屋をみたした。数字の羅列を一通り確認して息をつく。

やっと終わった。もしかして相模より先に終わったんじゃないの。だってほら、量的に。

そろりと相模を窺うと、優雅にカップに口をつけていた。

なぜか俺を見て。目バッチリあったんだけど。うかがい見るつもりが。

固まる俺。


「終わったか?」


頷いた。

既に帳が降りている。蛍光灯が眩しい。

いつの間にか大分時間がたったようだ。相模の背後に見える時計の短針は、6と7の間をゆっくり刻む。


「俺帰ろっかなぁー。かいちょーどうするのさ」


会話に目をそらす。不自然に見えなかっただろうか。

パソコンの電源を落として、完全に消えるまでの間に鞄に荷物をつめた。

あれ、眼鏡ケースどこやったっけ。がさごそと鞄をあさくって、ようやく見つけたとき、


「おい」


影が落ちた。

反射的に顔をあげる。

にんまりと笑んだこいつを見て、誰が平静でいられるだろうか。

断言できる。

誰でも不可能だと。

俺のように冷や汗を流すのは少数派だろうが。


「な、なにかな~」


お願いだからそのまま近づいてこないでくれ。怖いし、いろんな危険を感じるから。


「何じゃねぇよ。せっかく誰もいねぇんだ。させろ」

「や、やだ」

「んな拒否すんなよ。抱かねぇよ。明日も学校なんだから」

「……」


じゃぁなにをさせろと。


「キス」


耳元で響いた。スッと伸ばされた手が俺の顎をすくいあげる。至近距離にある彼を見て、自然とまぶたを閉じた。



熱に浮かされたと、自分に言い訳したあの時に、俺には確かに熱が点っていて。薪を入れる前にくべられた油は、俺に灯ったた熱を色濃く写し出した。

こいつにされるあれこれに大人しく翻弄されている俺に、もう言い訳なんて言う言葉は通用しないんだろう。


なんて、相模の温もりを感じながら考えた。

一気にかいたので、おかしいところが多々あると思います。


誤字脱字など、お知らせください。

また、拙い文ですが、感想評価などいただけると励みになります。

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