Fall in you
こちらは
風紀委員×チャラ男
です。
実は一番初めに書いたものwww
R15タグを使用します。
取られた手を払いのけた。
冷たい廊下に広がった乾いた音が、この場に俺たちしかいないことを如実に表す。
どうしてこうなった……?
『好きだ』
そう告白されたのは外も薄暗くなった放課後。生徒会の残業で今まで残っていた俺は、もともと得意ではない計算を終わらせ、結局最後になってしまった生徒会室を出た。
そして風紀の見回りをしていた東雲要とぶつかった。
ここまではよくあること。
なぜか俺が残業から上がると、生徒会室のある階にこいつは必ずいる。
そしてなんだかんだ注意してくる。
見てくれがチャラ男の俺は絶対にブラックリストに入っているだろうし、注意されるまでなら何の疑念も抱かなかった。
一寸うざったいなくらい。
だからこそ、この状況に激しい戸惑いを感じている。
会うたびに服装やらピアスやら頭髪やらと注意してきて、俺はそれを無視して。
どう考えても友好的とは言えない間柄。
これがどう転んで『好き』なんて甘い感情が芽生えるのか。
「……意味分かんないんですけど―?」
「結構遊んでるんでしょ。なら意味くらいわかるよね」
「や、そうじゃなくって……」
「何?」
俺の頭の横に手をついたまま、距離を詰められる。
すでに背は壁に密着していて、伝わる冷たさが自然と温まった体を冷ました。
だが頭は冴えても至近距離にあるのは整った東雲の顔。
その顔にいつもは感じない恐怖を感じた。軽くあしらえないことは明らかだ。
息をつめて目をそらす。高鳴っている胸に困惑した。
どうしたんだよ俺は。
「逸らさないで」
東雲がその色っぽい声で、耳元に呟いた。
「っ――」
体は固まって、胸板を押していた腕からも力が抜けた。
「僕は本気だから。例え俺に利のない返事でも、受け止める覚悟はできてる。……まぁ、たぶん吹っきれはしないんだけど」
細い切れ目をより細めて、切なげに眉根を寄せ自嘲気味に笑う。
俺も顔には自信があるけど、東雲はこんな表情を普段見せないので、一段と格好よく見えた。
だからなんだろうか。
「なら……本気なら、俺を落としてみてよ」
こんなことを言ってしまったのは。
○●○
「壬琴。君は何度注意すれば分かるんだい」
「何度しても無駄ですぅ―」
「……風紀室にてじっくり直してあげよう。さぁ来い」
「ノーサンキューで!」
「ったくまたそうやって逃げる。ボタンこんなに開けたら肌が見えるだろう」
「似合ってるからいいの―。ってか首根っこ掴まないでくんなーい!?」
「君色気むんむんなんだから安売りしないでよ。不快」
「意味わかんなーい。離してって、離せぇー!」
ということで風紀委員室。
攻防虚しく(というか引きずられてきたわけだけど)東雲しかいないこの部屋で、いつもの如く連行されたのは仮眠室。未使用の簡易ベッドに投げ出され、ぎしりと音がして俺に影が落ちる。
「ちょっ、こんな真昼間からっ、風紀委員としてどうよ!?」
「別にいつものことじゃない」
「それがおかしいんだって!ちょ、ヤダからね」
そう、残念なことにあの告白があってから妙に積極的になってしまった彼は、今の様に俺を連行して偶にことに及んでいる。俺がネコとかあり得ないのに、東雲が巧すぎる。俺だって慣れている筈なのにいつもいつも翻弄されるのは俺。そのことに少なからず苛立ちが沸く。
第一、まだ俺は返事をしていないのに。なんで無理やり抱いちゃうかな。落としてみろって言ったのは俺だけどさ、抱く以外の方法で落としてほしかった、かな……?
「仕方がないな」
そう言うと目と鼻の先だった顔同士の距離が離れた。
……え?珍しい。よかった。
ホッと胸をなでおろす。安心、したはずなのに心のどこかが少し落ち込む。
って、え?なんで、意味わかんない。残念がるとかおかしいでしょ。
「最後まではやらないであげる」
「なっ、んん!」
言葉の途中で唇を押しつけられた。強引に口を開け、ざらりと舌が入って来る。
やっぱあなたが此処まで来てなんもしないわけないですよね。俺が軽率でした。ったくほんといつもいつも……なんで一寸喜んでるの俺。やっぱ最近俺おかしいでしょ。見つけられて嬉しいとか。触れられて熱いとか。目があっただけで心臓苦しいとか。あれ、こんな病気あったっけ?初めてかかったよ。はしかかはしか。あ、ヤバい。
「ん、ぁ……ふ」
絡めた舌を吸われて押えていた声が漏れた。毎度のことながら巧みなキス。徐々に呼吸がままならなくなって、東雲の服を掴んだ。叩くほど力は入らない。
……余計深くなった。いつもならここで離してくれるのに。
「ふぅ……ん、しの、も、んっ」
もう無理という言葉はもう一度深く交わった口唇が呑み込んだ。
ちょ、ほんとやばい。息が。痺れる。頭溶ける。
歯列をなぞるように口内を一巡りして、東雲は唇を離した。
「はぁ、ん、はっ」
肩が上下に揺れる。やっと吸い込めた空気は巧く肺に入っていかず、荒い呼吸だけが繰り返される。
「涙」
ふと、頬に東雲の手が触れた。
涙?あ、俺もしかして泣いてる?
案の定東雲の手が掬ったのは俺の涙だったようだ。一寸眼を瞑るとくすりと笑われた。彼は常のごとく妖艶に笑い、掬った涙を舐める。
「!!」
かぁっと熱が集まるのを感じた。こいつ、仕草がえろいんだよ。そうだ、断じて舐めた姿がかっこよかったとかじゃない。……断じて。
「かわい」
「はっ!?ふざけ……ッ」
手がシャツをまくり直に肌に触れる。
火照った体に体温の低い東雲の手がなぞる様に上まで這って来た。
「……っ!」
出そうになる声を唇を噛んで押し殺した。
俺こんな感度良かったっけ……?ネコなんてこいつ相手しかしたことないけど、始めはこんなじゃなかった。こんな、触れられただけで声が出そうになるなんて。
くすりと声がした。また人を笑って、と彼を睨む。しかし、それ一秒と持たなかった。
よほど愛しい物を見るような、甘い表情。それでいて恍惚として、獲物を捉えた獣のよう。全身から醸し出される色気。
全てに息をのんだ。心臓が痛いくらいに脈打って、きゅぅっと締まる。
なにこれ。俺、こんなの知らない。
「ねぇ」
「っ!」
耳元で囁かれ肩が跳ねた。
俺が耳弱いって知ってるだろ……!だからいつも責められるわけだけど。お前のせいで余計耳弱くなったんだからな!
「壬琴、最近感度良くない?」
「耳元で、話すな!……お前、のせいだろっ」
「ふうん。じゃぁさ、もう止めようか」
東雲はつまらなそうにそう言うと、俺から離れ、捲っていたシャツも戻した。俺の上からも退き、ベッドから足を投げ出した形で脇に座る。
俺はただ瞠目した。
「や、める……?」
何を……?
「考えてみれば俺まだ返事聞いてないのに抱いちゃったし。順番間違えたんだよ。もう少し距離を置くべきだった」
確かにそれはそうだと思う。
でも、もう遅くない?もうお前抱いちゃったじゃん。告白して一週間で俺を押し倒した奴が言う?
ほんと、今更。
止めるとかいうから不安になったじゃんか……?あれ、なんで不安になんか。あれ?なんかさっきより苦しいような気がする。
離れて、欲しくない?触れて、欲しい?
距離なんて、いらない。
……抱いてからそんなこと、落としてからそんなこと、言わないでよ。
思って、驚く。
あぁそっか、そういうことか。
俺はもうとっくに、東雲に落とされてたんだ。きっと、抱かれる前から。
「間違えてないよ」
ベッドに手をついて起き上がり、彼のワイシャツの袖を掴んで呟いた。目を見開いてこちらを向いた彼の顔をひどく愛しく感じる。なんだ、俺もうこんなにこいつ好きなんじゃん。
自然と頬が緩む。東雲が息をのむのが分かった。
もっと俺を好きになればいいよ。
ちゅ、と触れるだけのキスを頬に落とし、そのまま首に腕を絡めてベッドに倒れ込んだ。
「もう落ちてた」
そう言ってほほ笑むと、彼は俺の唇にかみついた。
本日二度目。
なのに、こんなにも感覚が違う。
甘くて、気持ちよくて、何より愛おしい。
俺は初めて恋を知った。
お粗末さまでした。
誤字脱字等ありましたらお知らせください。
いつものように語りますと、
壬琴君は典型的なチャラ男君です。
ただ、自分のことになると鈍い。
下半身は緩いです。でもタチ専門。
東雲の作中での
「やめよう」
発言のは、自分の気持ちに気づいていないようだった壬琴に気づかせること。
つまりは作戦大成功って訳です(笑
反応見てて気づいてたんですよ、東雲は。
まぁ、分かってても面と向かって言われたらきっと理性なんか切れますねwww
では。
お付き合い下さりありがとうございました。
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