好きになったら、
感想、評価ありがとうございます。
こちらはリクエストいただきました、ツンデレが出てくるお話です。
CPとしては
美形×平凡
幼馴染設定です。
ツンデレにちゃんと成っているかは疑問ですが……(土下座
ではどうぞ。
「おーい哲也ぁ、帰ろうぜ―」
誰かが開けた教室の後ろ扉から顔を覗かせた彼に呼ばれ、俺は教科書を詰めたカバンを肩に担いだ。「あいよ」とそっけなくも聞こえる返事をして、彼――幼馴染の真琴と共に帰路についた。
これは幼馴染としての習慣だ。幼馴染という枠を超えた今も、それは変わらない。
俺達は通学班やらなんやらも合わせると、特別な用事が無い限り小学校の頃から登下校を共にしている。実際彼と知り合ったのは幼稚園の頃だった。これはもはや腐れ縁とでもいうか、親同士も仲がいいものだから、家族といってもいいかもしれない。それくらい近い位置に俺達はいた。
でも、俺はそれだけじゃ物足りなかった。
俺は、長く一緒にいるうち、幼馴染で同性の真琴に恋愛感情を抱いてしまっていた。自然と芽生えていた友情とは一味も二味も違ったこの感情を恋愛と認めるのは容易かった。しかし、イレギュラーなものであることに違いはない。俺は嫌われたくない一心で感情を隠した。
5年、経った。
俺達は高校2年生になった。一緒にいる事が当たり前だった俺達は同じ高校を志望した。
クラスは別々になってしまったものの、その分登下校の際の時間が俺は待ち遠しかった。
俺の容姿はどうやら女子にはよく映るようで、呼び出されたりするものしばしばだったが、あいにく俺は真琴以外眼中にはなかった。どんなに定評のある子でも片っ端から断るものだから、真琴には不信がられた。お前が好きだから、なんて言えるはずもなく、今のままでいいと返したのを覚えている。彼はその時嬉しそうに笑って俺を茶化した。「俺はいたって平凡だから持てる奴の気持ちは分からねぇな」真琴はそう言ったが、俺からしてみれば真琴の方がよっぽど魅力的に映っている。俺がこんなことを考えていると、いつになったら鈍感なこいつは気づくのだろう。
そんな折、真琴が告白されているのを目撃した。相手は、男だった。
真琴は驚いていたようだが、俺は対して驚くことはしなかった。なんせ、性格がよすぎる。誰とでもわけ隔てなく接するなんて、話すのがあまり好きではない俺には絶対に無理だ。それに天性の天然だ。何回それで俺の理性が飛びかけたか。
男はいきなり真琴を押し倒そうとしていた。この俺が見ている前で、そんなことは許さない。俺は男を押しのけて真琴を攫った。真琴は驚いた顔をしていたが、俺はそれどころじゃなかった。このままこいつを連れて言ったら何を言ってしまうかわからない。全てぶちまけてしまいそうだった。でも、止める事は出来なかった。
案の定、俺はそこで隠してきたすべてを白状してしまった。
目を瞠り、固まる真琴に俺は自嘲を漏らした。あぁ、もう終わりだ。俺はもう真琴と一緒に入られない。そう痛感した。そして彼から離れようとした。
彼から離れての生活は、実際は一週間足らずだったが、俺にとっては果てしなく長く感じた。結局、俺は彼から離れるなんて出来っこ無かったんだ。分かり切っていたことだ。でもそうするしかなかった。
しかし、真琴は俺なんかよりずっと強かった。
逃げる事しか思いつかなかった俺と違い、真琴は真剣に考えて、俺に答えをくれた。
答えは、YES。現実を疑ったのは言うまでもない。
俺の初恋は5年の辛抱の末に叶ったのだ。
俺達は恋人になった。偏見のある人もいるだろうが、俺達はこれでいいと思えた。「好きになってしまったら、もう性別なんて関係なんだな」俺が中学生の時に吹っ切れたことを真琴が笑いながら言った。
二人並んで歩く帰り道。最近は人通りが無くなるとこっそり手をつないで帰っている。まだ春というには寒い時期。お互いの熱が、より暖かく感じる。横目に見下ろした真琴は少し頬を赤くして、白い息を吐き出していた。
「照れてる?」
「はぁ!?」
一寸からかってやるつもりで、態と顔を近づけて囁くと、面白いほどに真っ赤になった。
「……可愛い」
「なっ!可愛いて言うな!」
無意識に漏れた独白に、律儀にも反応を示してくれる。まぁ、真琴が最も言われるのを嫌う言葉だからなんだろうが、それでも俺にとっちゃ得した気分だ。真琴は不貞腐れてぷいと反対側を向いてしまった。そんな仕草も“可愛い”に入ってしまうと、こいつは理解しているだろうか。
「だって可愛いし」
「うるさいうるさい!男に可愛いっていう奴があるか!」
余計に不貞腐れて、じろりと睨まれる。真っ赤になった顔で睨まれても、俺を煽るだけ。どうしても、こいつは俺を捉えて離さないらしい。勝手に捕まったのは俺か。
「じゃぁ、――愛しい」
「!!」
な、な、とどもりながら、まだ集まる血があったのかと思えるほどに顔を真っ赤にする。ほら、やっぱり真琴はこんなにも可愛い。俺が耐えきれずに笑いだすと、ようやく気付いたのかわなわなと口唇を震わせた。
「か、からかったな!」
真っ赤になって突っかかってくる様でさえ、俺には愛おしく映る。本当に俺はもう駄目だな。きっと病気なんだ。一生治らない。治らなくていい。
「ははっ、悪い悪い。……でも嘘は言ってない」
「えっ、あ……」
一寸真剣に言ってやると、真琴は耳まで真っ赤にして俯いた。俺はいつも真剣に言ってるつもりだけど、真琴にはあまり伝わっていないようだから。俺がお前をどんなに思ってるか、お前は知らないだろう。キスだけなんて、俺よく我慢してると思うんだ。
既に日は西に傾いている。薄暗さを増す閑散とした住宅街に、街灯がちかちか点滅して、ぽうっと灯る。俺は繋いでいた手を引いて、街灯も届かない路地へと真琴を連れ込んだ。
狼狽する真琴に態と顔を近づけて、じっと目を見据えて、どちらからともなく口づけた。啄ばむようにはんだ後、緩んだ隙に口内へと侵入する。甘く、蕩ける様に味わうと、真琴は鼻にかかったように甘い声を漏らした。
何度か深い口づけを交わして、唇を離す。真琴は既に俺が押さえていないと立っていられないようだった。目がとろんとして、俺を誘っているかのような錯覚に陥る。俺自身だって、我慢するのは相当に辛かった。でも、俺を受け入れてくれたことだけで嬉しいのに、すぐにそんな行為を求めるのはどうかと思うのだ。キスは真琴だって初めてではないと知っていた。幼稚園の頃に俺が奪っている。だが、それ以外はこいつは全くの未経験者なのだ。
俺は何とか理性をつなぎとめて、抱いていた腰を離して真琴を座らせた。一寸の罪悪感。
「……立てるようになったら言え」
そう言って真琴の横に座ろうとすると、腕を掴まれた。僅かに驚いて真琴の方を見る。
「俺の家、今日誰も、居ないんだけ、ど……来る?」
真琴は俺の目を見て、すぐに横に外した。徐々に小さくなってしまった声も、俺は聞き逃すことはなかった。そして耳を疑った。それは、効き様によっては、そういうことに繋がらないか?
「まじで?」
「ぅ、ん……む、無理ならいいんだからな!」
「いや行く」
「ぇ、う、うん」
俺が即答すると、少し驚いてから嬉しそうに目を細めた。愛しいと、抱きしめたい衝動に駆られる。でも、しっかりと確認しないといけないことがあった。
「本当にいいのか?俺は何もしない自信ないぞ?」
そう、俺は誰もいない部屋で、真琴と二人きりで事を起こさない自信がなかった。恋人になる前は嫌われるかもしれないという恐れがそれを可能にしたが、今となってはそれは通用しない。
俺は真琴を見つめ、答えを待つ。真琴は目を泳がせた後、俺へと焦点を合わせた。そして普段のこいつからは想像できないようなか細い声で、
「……ぃ、いいよ」
うるんだ瞳で俺を見上げた。それはあまりに扇情的で。
俺は真琴の手をひっつかんで、彼の家へと歩き出した。
……それは反則だろ。
Fin
読んで下さりありがとうございます。
若干キャラが途中崩壊した気が……
いや、気のせいだ←
今回は設定をだいぶ書きこんだのでここで書くことは特にありません。
本文にかきこみすぎた感はあります(汗
過去語りのところなくっとも通じなくは無いんですがね。
誤字脱字等ありましたらお知らせください。結構頻繁です←
最後に僭越ながらリクエストなどありましたらメッセか感想にてお願いします。また評価など頂けると嬉しいです。