ド底辺ホームレス中年男の俺がJK姪っ子に告られる!?【番外編】 花音の回想録
**国立競技場 事件 後日談**
「花音様……本当に宜しいのですか?」
侍従の老執事が震える声で問いかける。
窓の外では救急車のサイレンが鳴り響いている。
「構わないわ」
私は鏡に映る自分を見つめた。
かつて「伯爵令嬢」と呼ばれ崇拝された面影はもうない。
「私は……もう役割を終えたのよ」
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**一週間前 国立競技場**
あの狂乱の夜のことは鮮明に憶えている。
紗月の暗器が肌を掠める感触、真実の冷笑、柚希の恐怖に満ちた瞳……
「あなたなんか……」
紗月の絶叫が今も耳朶にこびりついている。
「どうせ今回の事もゲームとしか思ってないんでしょ!?」
違う。
と否定したかった。
でも言葉は喉でつかえて出てこなかった。
あの日を境に伯爵家は崩壊への道を辿った。
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**現在 パリ郊外 メゾン・ド・パッション**
「花音さんお茶が入りましたよ」
隣室から老婦人がワゴンを押して来る。
私の新しい養母―フィリップ氏の奥方だ。
「ありがとうございます」
紅茶カップを手に取り窓外を見遣る。
四季を通して咲き乱れる薔薇園は祖国で見た景色によく似ていた。
(今頃ヨシオさんはどうしているかな?)
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**回想 五ヶ月前 逃亡先の東南アジア**
「これ以上逃げても無駄ですよ」
当時匿ってくれた外交官が溜息混じりに言った。
「日本から国際刑事警察機構に通報済みです」
「どうしてそこまで……」
「知らないと思いますが」
彼が机上のディスクを差し出した。
「あなたの母上が政界工作で莫大な利益を得ていた事実があるんですよ」
画面に映し出されたのは母親が逮捕されている映像だった。その後ろで嘲笑う紗月の父親……。
私の胸に黒い炎が灯った瞬間である。
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**現在 パリ市内美術学校**
「あなたの色彩感覚は独特ね」
講師の評価に小さく頷く。
ここで学び始めたのは逃避行の延長だったがいつしか情熱へと変わりつつあった。
「花音さんあなたの作品は本当にすばらしいわ。ところで来月に展示会があるのだけれど出品しない?」
「……少し、考えさせてください」
筆を休め天井を見上げる。
ルーブル美術館にも劣らぬ天井画の数々は荘厳だ。
(私の絵を見てヨシオさんなら何て言うかな)
### 花音の回想録 第二章
**東南アジア某国 スラム街の廃墟**
雨音だけが響く薄闇の中、私は泥水に浸かる靴を見つめていた。
「申し訳ございません……花音お嬢様」
泥水に執事の岩倉が膝をつき詫びる姿に胸が痛んだ。
「私にはもう花音さまをお守りできません」
---**数日前 潜伏アパート**
「岩倉さんだけは信用できる」
そう思ったのが間違いだった。
電話口で父の声を聞いた瞬間彼の顔色が変わったのだ。
「旦那様からのご命令です。お嬢様を身代金取引の材料にせよと……」
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**現在 パリ市内アパートメント**
ソファに寝そべりながら古いスマホを開く。
ロック画面に残る執事の最後の画像。
「あの時の出来事がもう遠い昔みたい……」
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**回想 東南アジア 深夜の露店**
ホームレス状態になって三日目。
飢餓と疲れで思考停止状態だった。
(このまま野垂れ死ぬくらいなら……)
客引きの男に手招きされ付いていこうとふらふらと歩みを始めた時だった。
「やめなさいお嬢様さん」
フィリピン訛りの英語で叱責する声。
振り返ると初老の男性が立っていた。
「なぜです……?」
「そこから先は危険だよ」
そう言いながらも彼がジャケットを私にかけてくれた。
「行こう」
手を引かれるままホテルまで連れて行かれるとベッドに押し倒された。
### 花音の回想録 第三章
**東南アジア某国 スーパーマーケット裏**
「ご飯食べるかい?」
昨夜私を「救った」はずの男が食事に誘ってくる。
湯気の立つスープに腹が鳴った。
「お金も住む場所もあげられないけど……」
彼の目が一瞬光る。
「女の子が必要なところなら知ってるよ」
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**回想 スラム街のホテル**
朝起きて愕然とした。
見知らぬ中年の男が枕元に立っていた。
「お嬢ちゃんは綺麗だから高く売れるよ」
ベッドから飛び退くが足首を掴まれた。
「抵抗しても無駄さ」
その時だった。
**バキッ!**
木製ドアが蹴破られる音と共に黒服の男女が雪崩れ込んだ。
「国際人権保護NGOです!」
(真実さん……?)一瞬そう思ったのは錯覚だった。全員外国人だ。
「早く!」リーダー格の女性が手を伸ばす。
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**現在 パリ市内レストラン**
「あの方には今でも感謝しています」
食後のコーヒーを啜りながら養母に話す。
「でもどうしてあの場所が分かったんでしょうね?」
「インターネット時代よ」彼女がウィンクした。
「衛星画像とSOSアプリで位置特定されたんでしょう」
---
**回想 数年後 日本大使館前**
緊急帰国の許可を得て記者会見場に向かう途中だった。
報道陣の隙間から見慣れた顔が見えた。
「紗月……!」
彼女はナイフを持ったまま硬直していた。
「おかえり花音」乾いた声。
「あなたの罪は決して赦されない」
次の瞬間SPたちが飛び掛かっていった。
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**現在 パリ郊外美術館**
展示会のプレオープン日。
幼馴染の画家志願者が駆け寄ってきた。
「あの噂聞いた?」
「何の?」
「ルナ財閥のCEO一族が再起不能になったらしいよ」
思わず振り向いた彼の表情に陰りが差す。
「やっぱり……」
「何かあった?」
「いや別に」苦笑いの影が一瞬だけ暗くなった。
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**エピローグ:運命の交差点**
花音は今日もキャンバスに向かう。
過去の傷は完全に癒えたわけじゃない。
けれども色鉛筆を走らせるたび確かな希望が芽生える―――
**逃亡生活60日目 東南アジア某国 スラム街の学校**
「ミス・ハナコは今日から英語の先生です」
校長の紹介に子どもたちが好奇の目を向け
る。
「日本から来たお姫様?」
少年の問いに思わず苦笑した。
(もう貴族ではないわ)
ボランティアの英語教師として赴任した埃っぽい教室の隅に座りながら考える。
「日本語が通用する世界は狭すぎたわね」
子供たちの笑い声が教室に響く。
「さぁ皆んな、休憩時間はもう終わり。授業を再会するわよ」
(そういえば、もう1週間もお風呂に入っていないな。日本にいた頃の私じゃ考えられないや)
「ちょっと臭うかな……」
---
**現在 パリ市内カフェ**
「あの頃は辛かったですね」
隣席の美術学生に昔話を語る。
「でも給料が少ないから毎日同じ服を洗濯して着て……」
「でも充実していたんですよね?」
「ええ」
コーヒーカップを回す指先が思い出に震える。
「初めて自分の力で何かを成し遂げた気がしたわ」
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**回想 逃亡生活生活90日目 スラム街にて**
「ご飯食べて!」
市場で配られる残飯を断る日々。
(伯爵令嬢だった誇りが邪魔する)
しかしある朝、子どもたちが焼いたパンを差し出してきた。
「先生これあげるよ、食べてね」
その瞬間涙がこぼれた。
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**現在 パリ市内アパート**
クローゼットにしまい込んだTシャツを広げる。
襟口が擦り切れ、シミだらけの黄ばんだTシャツ。
それは、南国特有のトロピカルな香りのする洗濯洗剤と汗の匂いが混ざり合い花音を懐かしさに駆りたてる。
汚く薄汚れたただのTシャツだが大切な思い出の品。
洗いがえのシャツすら買えなかったあの頃を思い出す。
「大切な事を教えてくれたこの匂いが忘れられない」
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**回想 ボランティア支部長との会話**
「君の貢献は大きい」老人が微笑む。
「でも日本に戻ればもっと良い仕事があるんじゃないか?」
「戻れませんよ」即答した自分に驚く。
「ここに私の居場所がありますから」
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**エピローグ:真実の価値**
ある晩子どもたちが歌を聴かせてくれた。
「日本の歌も教えてほしいと」言う。
無言でピアノに向かう指が震える。
母国の童謡が自然と溢れ出た。
(これが本当の富なんだ)
それ以来、音楽指導も担当することになった。
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**数年後 現地大学卒業式**
「今日は特別な日だわ」
卒業生代表スピーチではこう述べた。
「皆さんに伝えたい。真の貴族とは品格ではなく人格を持つものです」
その夜初めて自分で稼いだお金で祝杯を上げた。
(自由ってこんな味なんだ)
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**パリの現在**
窓外を眺めながら思う。
「人生は何が起こるか分からない」
スマホが震える。
紗月からのメッセージ。
《いつかまた会いましょう》
画面に映る自分の微笑みはかつての伯爵令嬢よりもずっと柔らかい。
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了
ここまでお読みいただきありがとうございました。
【番外編】 花音の回想録 いかがでしたか?
次は番外編『紗月の司法取引』を掲載予定です。乞うご期待下さい!
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