Ep.7
「たのもー!」
サクラがいつもの調子でレクリエーションルームの扉を開ける。直ぐ側にはアズキも控えている。
アズキは驚いているが、ヒナタからすればもう慣れっこだ。
部屋からは返答がない。どうやらケイやヒビキは席を外しているようだ。
「……」
だがケイやヒビキの代わりに、そこには狩谷ユイがいた。
「ユイちゃん……だよね?」
「……そうだけど?」
少し無愛想に返事をする。
緑と黒が入り混じる髪は、どこか人を寄せ付けないようなオーラを醸し出している。
「ほえー、ユイさんってそういうことが好きなんですか!?」
サクラが反応した、ユイがプレイしていたものはパズルだ。
それもかなりの大きさがある。
「ユイちゃんすごーい!」
「……っ! ボクの事はおいておいて、あんたたちは何しに来たの」
パズルを自然に隠しながら、ユイは問う。
「ああ、そうでした! たしかこの部屋に剣があったんでしたよね?」
「うん、そのはずだよ」
サクラとヒナタはそこから部屋内の散策をする。すると、案外すぐにその剣らしきモノが見つかった。
「おお、これですか」
戸棚の中に入っていたものは、六本の剣だった。
一見すべて同じように見えるが、鞘から抜けばその剣の刃に数字が刻まれている。残っていた数字は、『XIII』、『XV』、『XVI』、『XIX』、『XX』、そしてウミの言っていた通り、何も刻まれていないものが一本であった。
「13、15、16、19そして20番目に加えて何も書かれていないもの、つまりはちょうどここにいる全員とヒカリさんにキヨさんの分ですね!」
そういいながらサクラは何も書かれていない剣を手に取り、16番目が刻まれた剣をヒナタに、19番目が刻まれた剣をアズキに投げ渡す。
「……!」
「ちょっちょ、あぶないあぶない!」
「あはは! ごめんなさい!」
なんとか受け取ったヒナタとアズキは、その剣の重さに驚愕した。
正直自分でも持てるか不安だったレベルのその剣は、驚くほど軽かったのだ。
少しだけ鞘から抜けば、鏡のように美しい刀身が目に入る。そしてそこにはっきりと刻み込まれた『XVI』の文字。その文字はまるで、自身の魂に焼き付いた刻印のようであった。
「……それ、持っておいたほうがいい。ボクはまだだけどウミたちは化け物と遭遇したらしいからな。ボクもそれを手に入れにここに来た」
そして、ユイからとんでもない情報が落とされる。
「化け物? とは一体何でしょう!?」
早速食いついたのはサクラだ。
「ちょっと前に食堂で聞いた話だと、なんか黒いスライムみたいなのが地面から湧き出てきたんだと。幸いすぐにまた地面に潜っていったらしいが、何があるかわかったもんじゃないな」
そう言いながらユイは完成したパズルを飾り、20番目が刻まれた剣をとる。
「ボクのカードは『審判』。つまりボクが持つべきは20番目だね」
ユイは剣をまじまじと見つめ、どこかうっとりとした表情を浮かべている。
「そうだ、キヨちゃんやヒカリちゃんにも一応持っていってあげようよ」
「たしかにそうですね! ここにあっても仕方がないですし!」
そういって二人は残った13番目と15番目の剣を持とうとする。
しかし、その剣は動かなかった。いや、動かなかったと言うより、果てしなく重かったせいで動かせなかったと言ったほうが正しいかもしれない。
「重っ……い、ですね、これ」
「う、動かせない」
二人がどう頑張っても、その剣はピクリとも動かなかった。
「おかしいな、自分の剣はこんなにも軽いのに。これじゃヒカリちゃんはともかくキヨちゃんじゃあっても意味無いよね」
「ふーむ、重さの違い、刻まれた数字……つまりこれは、持ち主以外は持つことができないんじゃないですか!?」
サクラが独自の結論を出した。
「え、でもさっきサクラちゃん、私とアズキちゃんに投げ渡してたよね?」
「……たしかにそうですね! わっかりません!」
しかしその推理はついさっきの己の行動によって否定された。
「あの……えっと、つまりこれは誰かの能力、なんじゃないかな」
そこで声をあげたのは、意外にもアズキだった。
「え、アズキちゃん能力のことわかるの?」
「えっと、その……盗み見したみたいで申し訳ないですが、見ていたので……」
見ていた、というのは食堂でマコトの能力による騒動のことであった。その場にこそいなかったが、扉の外から見ていたらしい。
「タ、タロットには詳しくないですが、そういうものもあるのではないかな……と……」
そう言い終わってそそくさとサクラの後ろへと隠れてしまう。
「んー、ボクの知ってる知識だとそんな意味を持ったカードなんてなかった気がするんだけどな」
「私も同感ですね!」
この場でタロットの知識を持つ二人だが、どうやらわからないようであった。
「まぁ、一旦気にしなくていいんじゃないでしょうか!」
結局、結論は出ずに迷宮入りすることになってしまった。
ヒナタとしてはどこか引っかかるところもあるが、いくら考えてもわからないものはわからない。
「そんなことよりもこれやりましょう! せっかくレクリエーションルームに来たので!」
そういってサクラが全員の注意を引き付ける。そこにあったのは、大きなビリヤード台だった。
「ふーん、ビリヤードでボクと勝負する気? 残念だけど、ビリヤードはボクの得意分野なんだ!」
すでにユイは乗り気である。
「アズキちゃん、せっかくなら私たちもやろ!」
「は、はい!」
超人見知りの彼女も、すこしは場の空気に慣れてきたようだ。少しずつだが、緊張もほぐれてきていた。
そうして四人は日が沈むまで遊んだ。
途中からケイとヒビキもレクリエーションルームにやってきて、一緒に混ざって遊んだ。
それはヒナタにとって、とても心躍る出来事として記憶に焼き付いた。




