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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
18/19

Ep.16

 ウミ主催で始まった『激戦! 大富豪最強決定戦!』は、ついに決勝トーナメントまで進んだ。

 決勝まで残ったのは、ユイ、ヒビキ、サクラ、そしてキヨである。


「前のビリヤードのリベンジ、させてもらうよ!」

「私も、将棋で負けたあの時の雪辱……晴らさせてもらうわ!」


 特に、ユイとヒビキがサクラに対しライバル心を燃やしている。


「ふふふー、望むところです!」


 サクラもやる気いっぱいだ。


「……私も、負けない」


 キヨもはじめは乗り気ではなかったものの、今はすでに空気に馴染んでいる。


「それじゃあ、行くよ!」


 ユイの一手とともに、決勝トーナメントが始まった。



 †



「ぐぬぬぅ」


 苦しそうな声を出しているのはサクラである。

 すでに、戦いから三十分が経過していた。

 始まりはサクラが優勢であり、だれも手が出せなかったが、中盤からユイとヒビキが追いつく。キヨもなんとか食らいつくが、最もカードの枚数が多い。


「あ、これ……」


 ふと、キヨがそう呟いた。

 皆の視線がキヨに集まる。


「こうして、こうして……」


 キヨは連続でカードを出していく。8や、A,2などの高カードもだしていく。

 そして……


「これで……あがり!」


 そしてそのまま最後の一枚もキヨが出す。この瞬間、キヨの勝利が確定した。


「勝者、キヨ選手!!」


 ウミが高らかと宣言する。

 同時に、周りで固唾をのんで見守っていた少女たちも沸き立つ。


「勝った……の……?」


 キヨは、自分が勝ったという実感がなかった。勝利へのルートが見えた時、失敗しないように考えることばかり考えていた。

 しかし、少しずつ実感が湧いてくる。

 自分が、勝ったのだと。


「いやー、負けちゃいましたね!」

「くやしー……」

「……思わぬ伏兵」


 サクラとユイ、ヒビキも思い思いの感想を抱く。


「それではキヨ選手に、優勝インタビューしていきたいと思います! キヨ選手、今の気持ちを率直に言えば……?」

「え……っと、その、……うれしい、です」

「ありがとうございます!」


 キヨの率直な感想に、ウミがその場を盛り上げる。


「おめでとう! キヨちゃん!」


 ヒナタも、キヨに駆け寄る。


「ヒナタちゃん、あのね、私、とっても楽しかった!」


 キヨはにこっと笑う。紺色がかった長い髪が、大きく揺れる。それは、いままで医務室で倒れていた時には想像もつかない、可愛らしい笑顔だった。


「それはよかった! 感謝は、ウミちゃんとサクラちゃんに伝えてあげてね!」


 実際、主催はウミであり、キヨを強引にでも誘ったのはサクラだ。ヒナタは何もしていない。


「うん、わかっ……た……」

「っ! キヨちゃん!」


 突然、キヨが倒れた。


「どうしたんだい!?」


 異変に気づいたウミが駆け寄る。


「キヨちゃんが、キヨちゃんが……!」


 ヒナタは突然の状況に目に涙を浮かべている。

 ウミは、すぐにキヨの額へ手を当てる


「……すぐに医務室へ運ぼう。あと解熱剤も。すこし熱があるようだ」


 キヨは、レクリエーションルームの熱気に当てられて少し熱を出していた。


「サクラちゃん、手伝って!」

「はいはーい! 私の出番ですね!」


 ヒナタはすぐさまサクラを呼ぶ。しかし、すでにその必要はないレベルで状況は整っていた。


「よいしょ!」


 ウミがリーダーシップを取る中、ヒナタとサクラがキヨを抱え、アズキとルゥが道の確保をしている。ケイとヒビキはすでにレクリエーションルームを後にしている。ユイとノノミ、マコトは部屋の後片付けをしていた。


「これ! とりあえず清潔な水とタオル!」


 医務室についた頃、ちょうどケイとヒビキが水とタオルを持ってきていた。

 濡れたタオルを固く絞り、横になったキヨの額へと乗せる


「これで、大丈夫だろう」


 素早い処置のおかげで、キヨの呼吸は安定している。


「キヨ君はあまりああいう場に慣れていなさそうだったね……」

「私も、無理に連れ出して申し訳ないです……」


 珍しく、サクラが気を落としていた。


「サクラちゃん、元気だして。キヨちゃんは楽しんでたんだよ? それに、キヨちゃんが起きた時にサクラちゃんの元気がなかったら、キヨちゃんまで元気なくしちゃう」


 ヒナタは、そんなサクラへ声を掛ける。その言葉は、サクラを元気づけるには十分であった。


「たしかにそうですね!」


 サクラの元気も回復した。キヨの状態も安定した。少女たちの奮闘により、アクシデントは無事に突破できたのだ。


「私とサクラちゃんは一緒にキヨちゃんのことを見守ります」


 ヒナタがそう宣言する。サクラもその言葉に頷いていた。


「私も残ります」

「ボクも!」


 そこに、アズキとユイも賛成した。


「ふふ、それなら私は必要ないかな? それでは諸君。楽しんでくれたかな? またいつか第二回を執り行うから、楽しみにしておいてくれ!」


 ウミがそう締めくくる。

 かくして、少女たちによる『激戦! 大富豪最強決定戦!』は幕を閉じた。



 †



(あれ、眠っちゃってた?)


 ヒナタが目を覚ますと、すでにまわりには誰もいなかった。

 サクラもアズキも、ユイもキヨも。

 あたりを見渡すと、窓の外はすでに夜であることを示している。


(みんな牢屋に帰っちゃったのかな。キヨちゃんも、大丈夫かな……)


 寝起きの、薄らぼんやりとした思考でそんな事を考える。


(今日はここで寝ちゃおうかな……)


 牢屋の布団はすばらしい肌触りで、快眠を届けてくれるが、医務室のベッドも負けてはいないだろう。


(クモに怒られても……まぁいいや)


 そうして、ヒナタは医務室のベッドで意識を手放した。

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