Ep.15
「今日は皆でゲームをしないか!?」
偶然、食堂で全員が同じタイミングで食事をしていた中、ウミが声をあげる。
「ゲームですか!? 楽しそうですね!」
相変わらず、サクラがまっさきに反応した。
ヒカリが殺され、リリィが処刑されてからすでに数日が経っていた。
サクラの明るい様子や、ウミの献身的なメンタルケアもあり、皆ある程度回復してきていた。
「私は……医務室で……」
「今日だけはダメです!」
キヨが逃げようとするが、サクラが捕まえる。
「私にはわかりますよ! キヨさんいま実はめちゃめちゃ体調いいですよね!」
「ギク」
サクラの言う通り、キヨの体調は過去一番と言っていいほどであった。
「キヨ君、それは本当かい!?」
ウミが嬉しそうな声でキヨに駆け寄る。
その様子に、キヨは嫌そうな顔をしながらも答える。
「私は……人と遊んだことなんて……ないから……迷惑に……」
「迷惑だなんて……ありえない」
「そうですよ!」
キヨの言葉を遮ったのは、ヒビキとノノミだった。
「そうだぜー。こういうのは一緒に遊んだほうが楽しいんだよー!」
続けて言葉を重ねるのは、ケイである。
皆、あまりキヨと積極的に関わったことはない。だが、皆がキヨを心配し、気にかけていることだけは事実として存在するのだ。
「一緒に遊ぼう! キヨちゃん!」
ヒナタも、その気持は同じだった。
「そ、そこまで言うなら……」
そうして、皆はキヨを遊びに誘い出すことに成功したのだ。
†
場所はレクリエーションルーム。
そこでは、一つのトーナメント表が描かれていた。
『激戦! 大富豪最強決定戦!』
十一人の少女が、3人,3人,3人,2人,に分かれ、トーナメントに張り出されていた。
まずはAブロックの最初の三人……柊ヒナタ、狩谷ユイ、白石マコトだ。
ローカルルールは八切り、革命のみの少なめの構成だ。
そしてまもなく、戦いの火蓋が切られる。
ヒナタの初手のカードは強かった。
3,4,4,7,7,8,8,9,9,9,10,10,Q,A,A,A,A,2,2,
ヒナタはじゃんけんに負けたため一枚多いが、代わりに先行である。
「この勝負! もらったよ!」
そうしてヒナタは3を出し、ヒナタ、ユイ、マコトによる三人の白熱したバトルの始まりを告げた。
二十分は過ぎただろうか、もう少女たちのカードの残りも少なくなってきていた。
「やった! あーがり!」
そしてついに、決着がついた。
勝者は、ユイである。
「ま、まけたぁぁぁぁ……」
ヒナタによる革命のあと、ユイによる革命返しがあった。
そこで、ヒナタの戦略はすべて瓦解してしまった。
ヒナタは自身の革命がまさか返されると思っておらず、高いカードを序盤に使いすぎていた。
「ヒナタさぁ、あんな高カードをポンポン出してたらそりゃ革命警戒するっての」
ユイからのアドバイスが入る。
ユイにとっては、ヒナタのカードの使い方から、おおよその予測がついていたようだ。
「Aブロックはユイ君が勝って……次はBブロック!私、アズキ君、そしてヒビキ君だね、お手柔らかにお願いするよ」
つづけて、Bブロックの対戦が始まる。対戦カードは山田ウミ、鳴神アズキ、そして桑原ヒビキだ。
ヒナタは負けてしまったが、アズキのことをさも自分かのように応援している。
ルールは変わらず、八切りと革命のみだ。
「それでは……始めよう!」
ウミの一言と出された4のカードにより、試合が始まった。
アズキ、ヒビキも順調にカードを出していく。
先程のAブロックでの長丁場とは違い、今回は十分程で各プレイヤーのカードの枚数は五枚を切っていた。
「この勝負、私の……勝ち」
ヒビキがそう呟く。皆が疑問に思う直後、その結果は現れた。
8,8,2,A,そして3。
連続の八切りと、最後まで残していた高カードによって、ウミとアズキのパスを誘い、そのままフィニッシュした。
「まさか、ヒビキ君は強いね!」
「負けた……」
ウミは感嘆し、アズキはショックを受けている。
アズキの手札をみれば、Q,Q,K,そしてAが残っていた。
少しでも流れが違えば、アズキが勝利していたかもしれない。だが、すでに出されていたカードをすべて把握していたヒビキは、その上を行ったのだ。
ちなみにウミの手札は3,6,10,Qである。絶望だ。
「ふむ、ではBブロックの勝者はヒビキ君ということで、次はCブロック!」
つづけて、Cブロックの面々が立ち上がる。楠サクラ、佐々乃ノノミ、雪宮ルゥの三人だ。
「よろしくおねがいしまーす!」
元気なサクラと気弱なノノミ、そしてどちらかといえば寡黙なルゥ。
全く属性の違う三人だが、結果はどうなるのか。
そう少女たちが予想していたが、結果は思ったよりも早くに現れる。
「サクラちゃん……」
ヒナタが思わず呟く。開始してからおよそ五分。あまりにも早い。それなのにサクラの手札は、すでに残り二枚となっていた。
「これで終わりです!」
サクラが8を出し八切り。そしてそのまま2を出してフィニッシュした。
「早いよぉ……」
「……」
ノノミが泣き言をいい、ルゥが恨めしげにサクラを見つめる。
「あはは、運が良かっただけですよ!」
そういって視線を受け流し、ウインクまでしかえす。
「圧倒的、だったね……」
サクラの動きには一切の無駄がなかった。素人目からそう見えてもおかしくないほどに、サクラが圧倒的であった。
「そ、それじゃあ最後にDブロック! ケイ君とキヨ君だ!」
人数の関係で、最後はタイマンだ。
ケイとキヨがそれぞれカードを受け取る。
「よろしく~」
そのケイの声と同時に、試合は始まる。二人なので、先程よりもそれぞれの持つカードの量が多い。
ふたりは苦戦しつつも、順調にカードを減らしていく。
そして激闘すること二十分。ついに終わりの時が来た。
「こ、これで終わりです!」
キヨが最後の一枚を出す。これにより、キヨの手札がなくなり、勝者が決まった。
「勝者、キヨ君!」
先程の圧倒的な試合とは違い、接戦というにふさわしかったその試合は、観戦者の心も掴んでいた。
「ぐえ~負けたー!」
負けてしまったケイも、どこか清々しいような、気持ちよさそうな表情を浮かべていた。
「よし、ブロック戦もすべて終わったことだし、決勝トーナメントだ!」
ウミが、いつのまにやら何処かで見つけた短い棒を、マイクのように握っている。完全にノリノリだ。
「Aブロック勝者、狩谷ユイ選手! Bブロック勝者、桑原ヒビキ選手! Cブロック勝者、楠サクラ選手! Dブロック勝者、清水キヨ選手! いざ、決戦の舞台へ……」
呼ばれた四人が、戦いの舞台へと進む。
ある少女は堂々と、ある少女はゆったりと、ある少女は元気に、ある少女はおどおどと。
全員が揃い、そして……戦いの火蓋が切られた。




