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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
13/22

Ep.11

 裁判が始まった。

 まず初めに言葉を発したのは、ウミであった。


「さて諸君、まずは状況の整理から始めよう」


 どこか芝居めいた手振りで話す。彼女なりの自己防衛なのかもしれない。


「はいはーい! それなら私に任せてください!」


 そしてそれに反応したのはサクラだった。


「まず、死体発見場所はリビング、しかし、異変自体が最初に発見されたのはヒカリさんの部屋に残されていた血溜まりですよね! 第一発見者はどなたでしょう?」

「……ワタシよ」


 手を上げたのは、佐々乃ノノミだ。


「今日は気持ちよく寝てたんだけど、気づいたら十時になってしまってて、いそいで支度して外に出たんだけど、そこにはすでに血溜まりが……という感じで……」

「なるほどなるほど、ありがとうございます!」


 サクラがスマホを操作している。おそらくメモを取っているのだろう。


「そして、その悲鳴を聞きつけた私がノノミ君のもとへ向かい、皆を集め、そしてリビングに行った……という流れさ」


 そこにウミが補足する。


「なるほどなるほど、そこでヒカリさんの死体を発見したわけですね!」


 そこで一旦サクラは結論づける。


「そういえば私も今日寝坊したんだよね……ノノミちゃんの悲鳴で起きたけど……」

「そういえば私も寝坊したんでした!」


 ヒナタの寝坊報告に、サクラも合わせる。

 すると、ボクも私もと、そこにいた全員が寝坊していたことが判明した。


「ありゃりゃ、全員寝坊してたんですね!」


 また一つ、不思議な事実が増えた。


「流石にこれは不自然……だね」


 ウミもその言葉に賛成する。


「てかさー、もうこんな議論意味なくない? 犯人なんてわかってるじゃん」


 そこに、リリィが話す。


「ほう、その犯人とは?」

「ほらそこのキヨって人でしょ? ここにきてからずっとヒカリと一緒だったじゃん」

「……違います……昨日私は体調が良かったから……早めに牢に戻ったんです。その時ヒカリさんは医務室に……残っていました」


 リリィの疑いをかけられたキヨは、すぐさま反論する。


「でもさー、それを見てる人はいないわけじゃん? 証明とかできなくない? 結局一番近くにいた人間が怪しいっていう結論には変わりはないと思うんだけど」

「……!」


 リリィの鋭い反論に、キヨは言葉をつまらせる。

 実際、昨日のキヨの動きを保証してくれる人はいなかった。だが、それに違和感を持った少女がいた。


「ちょっとまってよ、そもそもキヨちゃんには動機がないよ」


 ヒナタである。


「ええ? いま動機とか関係ある?」

「確かに、動機がなくても衝動的にやってしまった、なんて可能性も考えられますよね!」


 ただし、その反論はリリィとサクラによって一蹴されてしまった。

 サクラの言う可能性を排除できない限り、この推論は間違っているだろう。


「んー、ちょっとまってよ。ボクにも違和感があるんだ」


 そこで今度はユイが反論に出た。


「ここにきてからずっと、キヨが医務室か牢屋にしかいなかったことは、ボクだけじゃなくて皆が見てるよね? 今回の死体の状況を見てほしいんだけど、明らかに例の剣が凶器だ。それはウミが証明してくれるんじゃないかな?」

「あ、ああ、確かに凶器は剣だろう。傷がかなり深い上、切れ味の良いものでなければああはならない」


 ユイの言葉に、ウミが賛同する。

 ウミの調べによれば、死体は明らかに鋭い刃物によって傷つけられており、殴打などではあの状況はありえないらしい。

 ウミの信頼は厚いらしく、その証言をすんなり皆は信じた。


「そこで、キヨちゃんはまだ二階に行ったことがないよね。ずっと医務室か牢屋にいたんだ。例の剣を使えるはずがないんだよ」


 ユイの言うとおりであった。

 実際、例の剣は二階のレクリエーションルームにあり、ずっと一階の医務室か地下の牢屋にこもっていたキヨに手に入れる術はないのだ。


「……だれかが代わりにキヨって人に届けたっていう線は?」

「いやー、それはないですね!」


 リリィの言葉に反論したのはサクラだった。


「あれ、どういう理屈かわからないですけど、めちゃめちゃ重かったんですよ! 一回、ヒナタさんと持ち上げようとしたんですけど無理でした!」


 そう言われてヒナタは思い出す。

 キヨたちに剣を届けようとしたが、あまりの重さに断念したことを。


「……たしかにそうだね。ごめんなさい。早とちりしてしまったみたい」


 リリィは疑いをかけてしまったことに素直に謝る。


「うーむ、そうなってくると、やはり疑問となるのは全員の寝坊、そして入れ替わったカーテン、ですね」

「寝坊したのか……なんか気持ちよく寝てたと思ったんですけどね」


 サクラの発言にノノミが反応する。


「あ、ノノミさんも気持ちよく寝てたんですか? じつは私も、気持ちよ~く寝ていたんですよ! しかし起きた時、気づけば十時になってしまって、ちょっとびっくりしちゃいましたね!」

「そういえば私も気持ちよく寝てたな……」


 ノノミとサクラの言葉に反応して、思わずと行った感じでヒナタは思ったことを声に出す。

 その言葉を皮切りに、まさかの全員が同じ状況で寝ていたことが判明した。


「全員が気持ちよく寝ていて寝坊……その間におそらく犯人は今日の朝、牢屋でヒカリさんを殺し、リビングへ運んだか、もしくは刺されたヒカリさんが最後の力を振り絞ってリビングへ向かったか、という感じですかね!」


 一旦サクラが話をまとめる。

 しかし、それに物申すものがいた。

 ヒビキだ。


「ちょっと……まった。貴方はヒカリを運んだか、ヒカリが自分で移動したと言ってるけど……それはおかしい」

「ありゃ、そうですかね」

「まず、私たちの中でヒカリを運べる人がいない……そんな筋肉はない……自分で移動したと言っても、行くならリビングじゃなく……医務室へ行くんじゃないか?」

「……たしかにそうですね!」


 ヒビキの言ったとおりだった。それが示す結論は……


「……ヒカリちゃんはリビングで殺された?」


 ヒナタの思い至った結論に、誰も反論できなかった。


「その可能性が高そうですね! ヒカリさんはリビングで殺されて、犯人は偽装のために血をわざとヒカリさんの部屋へと繋いだ……という感じでしょうか!」


 サクラが推測をまとめる。そしてその推測にも、誰も反論することができなかった。


「……ならば、犯人の私物に、血で染まったなにかがあるんじゃないか?」


 ウミが自身の推測を話す。


「さすがに、血を手ですくい上げ、牢屋やその道へとたらす……という可能性は考えにくいだろう。それよりも、スポンジのように一気に染み込ませ、それで血をたらしたと考えるほうが自然だろう。サクラ君、君の写真になにか怪しい道具は写っていないかい?」


 ウミは、自身の推論に自身を持ったようにサクラへ問う。


「うーん、特に何もありませんね。皆さん部屋をきれいにしていますし、もとからあった道具は皆同じ物、ヒカリさんの部屋だけは色々違う、ってことくらいしかわからないです! どうせ凶器の剣に付着している血は洗い流されているでしょうね!」

「……プライバシーの侵害だ」


 ルゥがサクラの全個室を写真に収めた行動にドン引きするが、サクラは何も気にしていないようだった。


「そう、か、すまないね」

「いや、ウミちゃんの言葉、合ってるかもしれません!」


 しかし、ヒナタはその状況からとある方法を思いついた。


「たしか、死体の近くにはカーテンがあったんですよね? 犯人はヒカリちゃんをリビングで殺した後、ヒカリちゃんの部屋のカーテンを取って血を染み込ませて、あの血の道を作ったんじゃないですか?」


 サクラの写真を見てみると、ヒカリの部屋のカーテンはなく、そして死体のそばにカーテンが落ちている。

 しかもそのカーテンは血で染まっている。

 この状況なら、ヒナタの推測に間違いはなかった。


「あ、カーテンといえば……」


 ふと、ユイが思い出したかのように口を開く。

 その言葉は、この裁判の議論を発展させるのに十分すぎるものだった。

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