5話 背けて
方向性がおかしくなるよ!
国に戻ってきた。
「おかえりなさいませ。」
「わっっ!?」
メイドをじーっと見る。
「…?なんでしょう?」
やっぱり信じられない。
あいつの言ってたこと、本当なら、
このメイドも、この世界のお母さんも…
「コーヒー持ってきますね。」
「あ…よろしく頼む。」
おかしいところはない。
でも、確かに都合が良すぎる。
異世界なのに世界の言語が日本語なのも、
王子様として転生したのも、
誘拐されて意識がなくなった後、
何もなくこの世界に生まれたのも、
全部、辻褄が合う。
その時
パリーンっ!!
「ど、どうした!?」
「すみません、急に腕に、腕ニ力が入らなくなって…。」
おかしい。
メイドの顔が歪んで見える。
「い、いやだっ!」
寝室に逃げ込む。
今日はもうもう寝よう。
意識が朦朧とした中、私は寝た。
…!?
大きなノイズ音で起きた。
窓を覗くと、町中のみんなの顔が、
暗く塗りつぶされている。
ゾッとした。
ドンドンっ!!!
ノックが鳴る。
「アケテクダサイ」
気持ち悪い機械音が鳴る
嫌だ…
冷たい汗が首の筋を通る。
心臓がうるさく、自分も壊れてしまいそうだ。
「やめて…こんなはず…」
目を瞑った。
もう私は死んでしまうだろう。
涙が目に染みるのがわかる。
くだらないよね。転生なんて。
ただ現実から目を背けているだけなのに。
現実から目を背けたって、何も変わらないのに。
「…おい。」
聞いたことあるような声が聞こえた。
何か忘れているような、そんな気がして。
都合のいい世界の甘さだけを吸って、
本当に大切な何かを忘れちゃった。
そんな走馬灯だろう。
「おい!覚めろ!!」
あれ…この声って…
…思い出した。
素直になれず、感謝も言えない。
そんな私に、唯一構ってくれたあいつ。
こんなとこまで来るなんて。
私のこと好きだろ絶対。
もしかしたら、私の目を背けてばっかりな所を、
心配してたのかな。
…でも、もう私は目を背けないから。
現実だって受け止めてやる。
目を開けてみよう。
そう言って、瞼を開けた。
どうだったでしょうか。




