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事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?  作者: サクラ近衛将監


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16/16

1ー16 錬金術師ギルドと薬師ギルドでの試験

 翌日、指定された時間に錬金術師ギルドへ行った。

 受付からすぐに二階に案内され、すぐに試験が始まることになりましたが、チョット予想外だったのは課題だね。

 

 伯爵邸では、自由に魔道具を作っても良かったのですけれど、錬金術師ギルドからは課題を与えられました。

 それが、何と時を測る魔道具を作れと言うのです。


 ウーン、確かにこれまでこの世界で時計を見ていないのですけれど、確か教会では水流を用いた時計(水時計)と日時計を組み合わせて、時の鐘を鳴らしていた筈なんです。

 カルヴィアに来てから、たまたま教会の神父さんに教えてもらった話なんですよ。


 ですから両方とも魔道具じゃありませんよね。

 そもそも魔道具の時計があるのかどうかも知りません。


 仮に造るとしても、ロンドンのビッグ・ベンみたいなものをイメージすればよいのか、それともストップウォッチ的なものをイメージすればよいのかがわかりません。

 仕方がないので質問をしました。


「時を測る魔道具とは、どのような時に用いる魔道具と考えれば宜しいでしょうか?」


「特段の指定は無いが、一日のうちで今が何時(いつ)頃かと言うのが分かる魔道具で有れば良い。」


「それは大きなもの、小さきもの、いずれがよろしいでしょうか?」


「大きくても小さくてもどちらでも構わないが、誰が見てもすぐにわかるような魔道具が良い。」


「失礼ながら、その様な魔道具がこれまでにございますか?」


「いや、様々に考えられているものはあるが、これまで魔道具として流通できるような品は無い。」


 何だか、トンでもない課題だよね。

 時間は限られては居ないけれど、これまでできていないからお前が考案しろなんてのは難題だよね。


 少なくとも試験で出すような課題じゃないでしょう。

 でも、まぁ、取り敢えずこの場では、試験官は神様に近いからね。


 無理難題でもやるしかないか。

 もしかして、伯爵様からの口添えは返って逆効果だったのかな?


 少し考えて、魔石を使った懐中時計を作ることにしたよ。

 試験管の説明を信ずるならば、おそらくストップウォッチや懐中時計なんて影も形もないはずだ。


 問題は、一日の長さなんだよねぇ。

 1月1日は、春分点だから昼と夜の長さが一緒なんだ。


 で、その時に俺がメトロノームのような道具を使って計ったら、一回の往復を仮の1秒(俺の心拍数を基準にしたよ)として、日の出から日の入りまでが、4万5232秒だったんだ。

 そのメトロノームの振幅を基準にすれば、2万2616秒がこの世界の6時間となる。


 つまりは一時間が約3770秒になる勘定だな。

 この世界で24時間制を取ってよいのかどうかはわからんのだが、少なくとも教会の鐘は夜明けに一つ、二時間(?)ごとに二つ、三つと増やして、夕刻の六つで打ち終わりなんだ。


 季節により多少の違いはあっても概ね6時から18時までを六つに分けているという事のようだから、二時間を一つの単位と考えて、約7538秒を一つの鐘分として置き換えれば良いだろう。

 その時間を目途に、一日12時間計を作ればよいのじゃないかな?


 てな、訳で、俺の亜空間から自作のメトロノームを取り出して、それに合わせながら秒針のシンクロ率を調整したよ。

 動力は魔石の魔力で、電気時計よろしく左右に振れる振り子が歯車を動かし秒針を動かすんだ。


 構造は極薄の金属板と歯車を組み合わせた機械なんだけれど、電池の代わりに魔石を薄く切ったものを使っているのがミソだな。

 一番面倒だったのは、シンクロだった。


 メトロノームに合わせたものを作らないと、時計が大幅に狂ってしまうからな。

 まぁ、リューズのところで時刻調整ができるようにしてはいるから、大幅に狂ったなら調整してもらうしかない。


 どうしても正確な物を作るなら、より正確な自転周期を割り出してそれに合わせるしかないんだが、そいつはこの試験時間内では絶対無理だ。

 だから、簡易的に時間が分かる懐中時計を作ったというわけだ。


 こいつはかなり細かい作業が連続したけれど、それでもトータルで一刻(約2時間)足らずで完成させたよ。

 試験員から色々質問が出たけれど、彼らにはそもそも基本がわかっていないからね。


 とっても簡単な説明でお茶を濁しておいた。

 試験結果?


 無茶とも思える魔道具をその場で生み出したんだからもちろん合格だよ。

 これで不合格なら、伯爵に言いつけてやるところだよな。


 一応、一つは終わったんだが、明日もまたあるよね。

 ひょっとして、またもや難題かな?


 別に期待しているわけじゃないんだけれど、錬金術ギルドと違って、薬師ギルドはちゃんとまともな頭を持っているのだろうかと心配になるよ。


 ◇◇◇◇


 翌日も指定された時間に薬師ギルドに出向きました。

 錬金術師ギルドは二階でしたけれど、薬師ギルドは別棟の一階部分に案内されました。


 で、課題が、病気の薬を作れと言うんですよ。

 そりゃぁまぁ、薬師だから薬を作るのがお仕事ですよね。


 で、どんな病気のお薬を作れと言うのか質問したら、何だかとっても要領を得ないんですよ。

 じゃぁ、何でも良いので薬を作れと言う事かと質問したら、違うんですよね。


 試験員のおっさんの頭には具体的な病気が浮かんでいるみたいです。

 で、その病気はなんてぇのって聞いたんだけど、名前が無いらしいんです。


 症状は?って聞くと、これもよくわからないみたいです。

 薬師って、こんな調子なのかねぇ。


 まぁ、医者じゃないんだから自分で診断は下せないんだろうけれど、少なくとも症状に合わせた薬を調合しなけりゃならないはずなのに、そもそも正解を知らないでこの課題を出しているみたいな気がするよ。

 もうしょうがないから、このおっさんを患者に診立てて、症状を詳しく聞いたよ。


 そうしたら、このおっさんが最後に言ったのが、領都のスラム街近くで流行っている病だそうで、薬師連中が色々薬を作って試しているんだけれど、良い薬が無いんだそうだ。

 それを課題にするというんだから、薬師もやっぱり鳥頭に違いないね。


 俺が作ったものを試してみるぐらいの話なのかもしれない。

 その結果、良くても悪くても伯爵お声がかりだから合格にはするということなのかもしれないな。


 まったく、俺も何と言っていいのかわからんよ。

 但し、このままじゃ(らち)が明かないから、試験員に言って現地に連れて行ってもらうことにした。


 感染症が予想されるから、マスクと手袋を用意したよ。

 ついでに俺が作ったゴーグルもね。


 感染症は、体液で感染することが多い。

 くしゃみをしたら霧状の液体が人まで飛んで行って感染することもある。


 それを防ぐには、できるだけ直接飛沫を受けない様防護するしかないんだ。

 で、試験員の分までゴーグルは用意していなかったけれど、マスクと手袋はしてもらったよ。


 で、問題の場所まで案内してもらったけれど、スラム街の両脇にある町で病が流行っているようだ。

 俺の鑑定と生体スキャナーで見る限り、こいつはインフルエンザの類だな。


 飛沫感染で拡大しているから領都全体に及んでいてもおかしくない状況だ。

 面白いことに、スラム街の住人には患者がほとんどいないんだ。


 これはもしかして抗体がスラム街の住人にはあるのか?

 スラム街の住人にとっては、何でもない菌であっても、抗体の無い人間にはすぐ感染するような類なのかもしれない。


 因みに健司の世界では、大航海時代に南北アメリカ大陸に進出した欧州人が、自国から天然痘等の病原菌を持ち込んだために、抗体の持たないネィティブ・アメリカンが感染して大量に死亡したという史実がある。

 これも似たようなものかもしれんが、さて、どうすべぇか。


 流石に抗体を探して、ワクチンを作るなんてことは俺では無理だ。

 それに代わるものが何かできないかを考えた。


 症状は風と同じく、発熱、咳がメインで、人により吐き気、食欲不振更に下痢何度の症状もあるようだ。

 おそらくは体力を失った倦怠感から来る合併症状のようなものだろう。


 取り敢えずは、対処療法で咳止めと発熱のお薬を処方するけれど、こいつは、薬師ギルドに任せよう。

 俺の方は、スラム街の住人三人ほどを選んで精密鑑定と生体スキャンをかけて精査し、その血液サンプルを内緒で貰ったよ。


 できるかどうかわからないが、血液中に抗体があるかどうかを確認する。

 比較の為に健康と思われる者のサンプルと、罹患(りかん)している者のサンプルも内緒で貰っている。


 俺は試験員に言って、患者がいる区域の隔離を徹底するようにお願いするとともに、伯爵の元にも現状の報告が行くようにした。

 このまま放置すれば、領都が感染症の患者でいっぱいになるから、俺の名前でデルエスさん宛に手紙を書いたんだ。


 取り敢えず、薬師試験の方は放置、感染症の拡大を知っていて、このまま俺が領都を去るわけにもいかんだろうから、その日から徹夜をすることになった。

 手持ちの材料で、簡易な光学顕微鏡を作成、ウイルス病原体の特定と、これに対抗できるワクチン素材の選定を行ったんだ。


 光学顕微鏡でウィルスが見えるかって?

 そのままじゃぁ、見えないよ。


 俺の鑑定能力と視覚の強化という能力の複合で初めてなしえる驚異のミクロ顕視だよ。

 結構無理をしたけれど、二徹後の三日目の朝には、抗体となるワクチンを見出した。


 多分、この世界では初めてとなるワクチンだろうな。

 元になったのは、スラム街の住人の体液にあった抗体だ。


 そいつを特定の上で、抽出、さらに培養させて、飲み薬様の経口ワクチンを生み出した。

 本当は注射が一番良いような気がしたが、患者数が千単位と多いのでそもそも注射器の数が足りないんだ。


 そもそも注射が普及していない世界で、取り扱いを知らない者に注射を任せると事故が起きるかもしれない。

 そうして、注射針の使いまわしをしたりすれば、別の病気が蔓延する恐れもあるからね。


 とりあえずは流行しているインフルエンザと思われる病気の治癒に限定して対処しなければならなかったんだ。

 このワクチンは、経口で口に含んでいる間に口腔内の粘膜から吸収できるように工夫しているんだ。


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