可能視民
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※読む前の注意事項※
*作中の個人名・団体名・その他はすべて架空のものです。実在するすべてのものと関係ありません。あったらびっくりします。
*当小説は全編付け焼刃の知識と多大な妄想補完で構成されています。真面目なホラー小説or警察小説を期待されている方は、申し訳ありませんが確実に期待外れになると思われます。
*当小説には姉妹商品というかシリーズ的な立場の小説が存在しますが、それぞれ設定やジャンルが微妙に異なります。一種のパラレルだと考えていただければ幸いです。
ご了承いただけた方はごゆっくりどうぞ。
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彼女はそこでふっと微笑んで──それともずっとしかめ面だったかもわからない、私にはよく見えなかったので──そうして囁いた。
あなた。ね、そう、あなたよ。どうしてそこから動かないの? そんな床の上じゃあ冷たいでしょう。それにとっても硬いじゃない。ずうっとそこにいるけれど、あちこち身体が痛くはないのかしら。
しいんと静まり返った部屋の中で、彼女は静かに溶け込むように椅子の上、本を一冊とても大事そうに両腕でしっかりと抱えている。とてもとても、愛おしそうに。彼女のか細い声は部屋のなかでふわふわと反響し、雨垂れのようにぽたぽた落ちた。それには色がなかった。
椅子が小さく軋んだ。彼女が動いたらしかった。
そうして僕は、黙り込んだまま。
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