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六英雄キ -異世界編-  作者: 上野鄭
第一章 邂逅
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0話 終幕と……

初めまして、上野鄭です。

拙作をお手にとっていただきありがとうございます。


本日は12話まで連続更新します。

翌日からは0時更新目指して頑張ります。

よろしくお願いします。

 「これで()()()。あと二回か――。

 世界のためとはいえ、きみには申し訳なく思っているよ」


 誰にも聞かれることのない独白。

 懺悔にも似たそれは孤独な世界に揺蕩(たゆた)う。

 誰にも知られず、誰にも巡り合わず。

 ただ終わりの瞬間(とき)を心待ちにして――。



 ◆◆◆



 聖法歴1022年7月30日



 ”――世界大戦が終結した”


 聖法教会から正式発表がされると、世界中から歓喜の声が上がった。


 八年にも及ぶ世界大戦の終結は、各国の英傑(えいけつ)や軍人が協力し、元凶である犯罪組織を壊滅させたことで迎えることが出来た。


 決戦から一か月後の今日。

 発表と合わせた終戦記念セレモニーが教会の総本山がある大聖堂の前で催され、セレモニーの様子は大陸中に中継されていた。

「皆さんもよく知る聖法教会主導により、夢の世界連合軍を組織することが出来た」、「聖法教会の尽力の甲斐あって無事終戦を迎えられた」、と中立組織である聖法教会を褒め称えるような報道が多くなされた。


 セレモニーでは、決戦に参加し、活躍した数多くの英傑や軍人たちも大きく報道され、多くの人々はモニター越しでも感謝の声を送っていた。

 特に、「十傑(じっけつ)」――賢人会と呼ばれる世界異能評議会が十年に一度定める、世界でも指折りの実力を持つ十人の英傑――が紹介されると、人々の歓声がひと際大きくなった。


 聖法教会の枢機卿であり、賢人会の一員でもある「使徒(しと)」。

 共和国の騎士で、人徳に優れた「守護(しゅご)」。

 帝国の軍人で、若干十五歳という若さで選出された期待の新人「超人(ちょうじん)」。

 貿易都市の魔道具技師で、数多くの魔道具を操る「要塞(ようさい)」。


 セレモニーに参加した十傑は四人だったが、他にも「剛腕(ごうわん)」や「碧靂(へきれき)」、「双璧(そうへき)」といった有名な二つ名を持つ英傑たちの姿もあった。



 ◆◆◆



「――やっぱり()は不参加か」

「しかたないさ。自国の行事にも一度も参加しないぐらいだから、どうしようもない」


 セレモニーの最中、民衆に手を振りながら零した「守護」の言葉を、同じく隣で手を振っていた「使徒」が拾う。


「彼が一番の功労者なのに、参加者一覧に載るだけというのは、どうにもやるせなくて、ね」

「あなたの気持ちも分からなくもないが、それが彼の要望でもある。総指揮官としても、一聖職者としても約束を違えることはできないよ」


 笑顔のまま嘆息するという器用な真似をした「使徒」に、「守護」が振り返らず小声で尋ねた。


「差し支えなければ、彼が――『悪鬼(あっき)』が何を求めたのか尋ねても?」

「彼が求めたのは――」



 ◆◆◆



 世界大戦の終結で人々にも笑顔や活気が戻ってきた。

 街は賑わいを見せ、中心部に行くほど多くの人で溢れかえっている。

 そんな街中を、一人の少年が流れに逆らうように移動していた。


 その少年は周りの様子とは打って変わり、感情が抜け落ちたような表情のまま、ゆっくりと街の外へ向けて歩みを進めていた。

 異様な雰囲気を漂わせ、周囲から浮いているはずなのに、なぜだか誰も彼のことを気に留めない。

 その光景は、あたかも少年が存在していないのでは? と錯覚するほどだった。


 結局、誰一人その少年に気づくことなく目的地にたどり着いた。

 その場所は街から少し離れた小高い山の上で、山頂には崩壊した建物や朽ちた家屋が立ち並んでいた。

 周囲の惨状には目もくれず、一本だけそびえ立つ大きな木の下まで歩いていく。そこには一抱えはある大きな石が置かれていた。


 少年は近くの孤児院から持ってきた花を石の上に置くと、木を背にして座り込み、そのまま穏やかな表情で眠りについた――。

1話目は続けて投稿します。

2話目からは1時間後に投稿します。


また、よろしければ合わせて「六英雄キ -過去編-」もよろしくお願いします。

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