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出会い

 ───三ヶ月前。


 会社をクビになってからというもの、行くあてもなく、ただ新宿駅周辺を歩き、疲れ果てて公園のベンチに座っていた。


 奥さんには会社をクビになったことを言えず、毎日出勤する振りをしていた。


 会社を辞めて七日目の朝。その日も歩き疲れて新宿公園のベンチに座わっていた。地面を見ながら、噴水の音に耳を澄ませていると、急に辺りが騒がしくなってきた。


 新宿公園の片隅で何かを箱ごと配っている人達がいた。列には三十名程並んでおり、並んでいる人達は、ホームレスのみたいな格好をしていた。


 衣類か何かが入っている箱を渡しているのだろう。私は驚きつつも、あんな風になりたくないなと思ってしまった。それと同時に、自分もたいして変わらない立場にいることに気づかされた。


 ため息をつくと、いつの間にか、目の前に誰かが立っていることに、気がついた。考え事をしていて、全く気がつかなかった。


 その人は、シルクハットを目深に被り、マントの様な黒色のポンチョを着ていた。全身を黒ずくめに包むその人は、何かを話したそうにこちらを見つめていた。


「隣に座っても?」


 よく見れば、犬の散歩や早めのランチを食べる人で、他のベンチは埋まっていた。


「ええ、どうぞ」


 今の私に、用のある人なんていない。そう思ったら急に気が抜けてきて、ため息をついた。


「ため息をつくと、幸せが逃げますぞ」


 隣に座った彼が再びまた話かけてきたので、驚いた私は、思わず振り向いた。


「いや、失敬。何かお困りごとでも?」


「いえ……」


「実は私、こういう者でして」


 こちらを見て微笑んだ彼は、いきなり名刺を差し出してきた。


『便利屋 代表 今西さとし』


 不審に思いつつも、藁にもすがる思いだった私は、初対面の彼に向かって言った。


「あの、私を雇ってくれませんか?」




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