第15話 神の呼び声
村の勝利の余韻が残る中、サブロウは信頼できる商人から、さらなる情報を得ていた。商人は、武田家と上杉家との戦いの現状を語り、実は今回の戦いにおいて、武田軍がこの方面に援軍を送ることができなかった理由を明かした。そして驚くべきことに、その商人の正体は、武田家に仕える忍者、いわば**「乱破」**のような存在であったことが判明したのだ。
「旦那様、実は…今回の戦の温床には、少々ばかりではございますが、拙者が差しいれた食料と金がございました」
忍者は、サブロウの眼前に深々と頭を下げた。サブロウは驚きつつも、彼が自分を助けるために動いていたことに気づいた。そして、忍者は続けた。
「そして、小山田隊から、旦那様への誘いがございます。今回のスリングショットの活躍、その知略、そして何よりも、たった二つの村をまとめ上げたその手腕…小山田信茂様が、旦那様を侍大将として迎え入れたいと仰せにございます」
サブロウは、その言葉に目を見開いた。「侍大将」! 神の試練の一つが、こんなにも早く、しかも思いがけない形で訪れるとは。小山田隊は、武田二十四将にも数えられる小山田信茂が率いる部隊だ。武田陣営の一角であることに間違いはない。
その知らせがあった直後だった。サブロウの意識が、突然、強烈な光に包まれた。
「合格だ、サブロウよ」
あの神の声が、再び頭の中に響き渡る。
「よくやった。小山田隊は一応、武田陣営なのでOKだ。次の試練に行くのだ。それまでは待機しろ」
次の瞬間、サブロウの視界は真っ白になり、気が付けば、あの森の中に戻っていた。
サブロウは、自分が異世界へと戻されたことを悟った。
「…これでしばらくは、休憩できる、のか」
サブロウは、ほっと息を吐いた。戦国時代の激戦と、緊張の日々から解放された安堵感が、全身を包み込む。武田の侍大将という、大きな目標への第一歩を踏み出し、彼は次の試練に向けて、しばしの休息を得ることになった。
サブロウは、異世界でどのような「次の試練」に直面するのでしょうか?