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第113話 海の見回り


 目の前にはエメラルドグリーンの海が広がり、波が静かに寄せて返すたびに透明な水が砂浜の白さを際立たせる。空には白い雲が浮かび、こちらも青い空の色をより一層際立たせている。川にはない潮の香りが鼻をくすぐり、波の音が心地よいリズムで耳に響く。


 前世でも大人になったら海には行かなかったし、こちらの世界でも数回見たことがあるくらいだ。子供の頃は海を泳いで純粋に楽しめていたのだが、大人になると海水がベタつくのが嫌だったり、濁っている海で泳いでもという気持ちが勝り、素直に楽しめなかったものだ。


「ふむ。久しぶりに見る海も悪くないものだな」


 しかし、こちらの世界の海は元の世界の海とは異なり、ゴミなどもなくとても澄んでいる。前世でも沖縄や外国の海はこれくらい綺麗だったのかもしれない。


「ギーク先生!」


「最高に気持ちいいですよ!」


「ああ。大丈夫だとは思うが、気を付けて遊ぶんだぞ」


 すでに生徒たちは海に入って楽しそうに泳いでいる。貴族である彼らの大半は家族と一緒にこの街の海へきたことがあるのかもしれないが、同級生たちと過ごす海はそれとは違って楽しいのだろう。


 こちらの世界にはサメなんかよりもよっぽど危険な魔物が存在するが、そこはこの立派な施設ということもあって、海の先に魔物を通さない巨大な魔道具の柵がある。貴族のお客が多いこの場所でお客様に何かあったら信用問題になってしまうからな。


 海はそこまで深くないし、柵のおかげで沖まで出ることはできず、離岸流などの心配も必要ないので、保護者や監督する側としてはだいぶ安心できる。とはいえ海や川などの水場では何が起きるか分からないから、気を抜かないようにしなければならない。


「よし、誰が一番早く柵まで辿り着けるか競争だぞ!」


「はい、ゲイル様!」


「負けませんよ!」


 ゲイルたちも目を輝かせながら海を満喫しているようだ。普段からあんなふうに年相応にはしゃぎながら遊んでいるのなら可愛いらしいものなのだがな。


「クネル、ハザン、ゲイル。海で泳ぐ前に準備運動はしっかりとしておけよ」


 海では波や流れによる抵抗や冷水による筋肉の硬直が起こりやすい。準備運動で筋肉や関節を温めつつ柔軟性を高めることで、捻挫や筋肉がつることの予防となる。


 生徒たちには事前に伝えてあったのだが、3人はそのまま海へ入ろうとしていたのでしっかりと伝えておく。海を前にしてはしゃいでしまう気持ちは十分にわかるが、準備運動は大事なのである。


「……ちぇっ、わかったよ」


「まったく面倒だぜ」


 そう言いながらもちゃんと身体を伸ばしたりして準備運動を始める3人。ここで俺に反発して時間をかけるよりも、言う通りにして早く海に入りたいのだろう。


「というか、先公はここでもその白衣なんだな……」


「ああ。日焼け除けにもなるし、岩場なんかで擦り傷などから身を守れるしな。ちゃんと海用で水に濡れてもそれほど重くならないようにできているぞ」


「そんな時用の物まであるのか……」


 こちらの世界でも水着はあるので、3人もトランクス型の水着を着ていた。俺もその水着を着用しており、その上には白衣を着ている。もちろん店には海用の白衣なんて販売していなかったので、オーダーメイドで作ってもらったものだ。


 ふ~む、街で白衣が流行らないのなら、こういった海や観光地などから流行らすという作戦もありか。




「へえ~魔術学園の教師なんて本当にエリートなんですね!」


「今度そちらの街へ遊びに行ってもいいですか?」


「ええ、もちろん。おふたりのような綺麗な女性なら大歓迎です。その際はおいしい料理店などへお連れしますよ」


「うわあ~嬉しい!」


「………………」


 ノクスはというと、海に来ていた2人組の女性に声をかけていた。


 相変わらず紳士的な行動をしている時のあいつは非の打ち所がないな。バウンス学園に正式採用された教師ということで信用もバッチリだ。


 普段からああやって多くの人から情報収集をしているのだろう。……決してただのナンパではないと思いたい。


「ギーク教諭、こちらにいたのですか」


 海を見回っていると、エリーザやシリルたちもこっちに来たみたいだ。


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