産まれる塊
私は何も考えられずぼーっとしていた
学級委員「一番仲が良い〇〇さんでいいんじゃない?」
皆の目線がこちらを向く
ああ、お別れ会の話か…
遡ること数週間、Aちゃんといつも通り遊んでいた
少し寒かったのを覚えている
コンビニで買った肉まんを公園で自転車に乗りながら食べていた
楽しかった
こういうのが平和なんだと思う
Aちゃんと話しているとあっという間に時間が過ぎていた
学校でもよく一緒にいると、仲良いね!とかなんかお似合いなど皆がそう言ってくれていた
でも楽しい時間は続かなかった
「私ね、今度転校するの」
言葉を理解できず、いや、理解したくなくて「え?」と聞いた
「言わなきゃって思ってたんだけど、なかなか言えなくて…ごめんね」
胸が苦しくなった
コンビニの明かりがいつもより眩しく見えた
お別れ会の日
私は泣きながら花束を渡した
人前で泣きたくなかった
恥ずかしさと悲しさで気持ちがめちゃくちゃだった
―――私は1人になった―――
ここはどこだろう
よく見ると見覚えのある校庭がそこにある
1人の女の子が走っている
校庭を一周している
私は彼女に駆け寄り、隣に並んで一緒に走り始めた
女の子は泣きながら走っていた
私は無意識に「もう大丈夫だよ」と口走っていた
その言葉は女の子に届いたかはわからない
そこで映像が途切れた
また目に映る景色が変わった
今度はどこだろう
急に痛みを感じた
「いたっ」
「やめて!」
三つ編みを引っ張られた
引っ張ってきた手を払いのけた
手は当たらなかったがその目の前の人のようなモノ
の驚きのような大きな黒い眼
見覚えのある眼
私は色々な感情が湧き上がってきた
その獣だか人のようなモノが走り去っていった
私は音楽室を後にし、吸い込まれるかのように自分の教室に向かった
教室に入るとみんなが掃除をしている
私は手に箒を持ち埃を掃いていた
何かの目線が私に向かっているのに気付いた
あの黒い眼だ
教室の端から窓際にいる私を見ている
ニヤニヤと笑いながらコソコソとクラスメイトに何かを話している
目線はずっと私に向いている
数人に話しかけ終わるとチャイムが鳴った
キーンコーンカーンコーン
気がつくと廊下に立っていた
教室に入らなきゃ
ドアをガラッと開けた
今でもあの光景は忘れない
あの眼が、黒い眼が、たくさんの黒い眼が私を一斉に見た
なんともいえないあの目線…
そして時が止まったかのような空間
何事かと思いながらも教室に入っていく
少し経つと私への目線は外れていった
ある1人を除いては…
外にいるカラスが鳴いていた
いつも通りの学校
いつも通りの授業
いつも通りの教室
のはずだった
おかしいと気づいたのは校庭の掃除に行った時だった
同じグループの1人が私に聞こえるように
「校庭まで走っていこー!」
「よーい、どん!」
私を入れて5人だろうか
すごいスピードで廊下を走っていく4人
私も慌てて走りついていこうとする
4人は足が速く、私は走るのが苦手で遅かった
追いつくわけもなく、置いて行かれる形になった
校庭の指定の場所に着くと、4人は掃除を始めていた
すでに話しかけられない空間を作り出していた
なんで急に走り出したのか?
着いても誰も私に声をかけてこない
掃除の時間が終わりまた走っていく4人
必死で追いかけていく私
認めたくなかった
私がのけ者にされているなんて
楽しそうにきゃっきゃと笑いながら階段を駆け上がっていく4人
嫌な気持ちを抱えながらでも必死に追いかけている私
―――プツン―――
ここはどこ…
気づいたら音楽室にいた
横に整列して歌の練習をしている
ああ、そろそろ合唱コンクールだ
歌の練習をしなくては
何かの気配を感じた
いや、正しくは横にいるはずの気配が消えた
見渡すと、私を置いて皆が後ろに一歩下がっていた
私も一歩下がる
すると今度は皆が一歩前に出た
私はまた一歩踏み出した
クスクス クスクス
小さい声で笑い声が聴こえた
そうか、そういうことか
私はやっと理解した
いや、ほんとは前からわかっていた
私はクラスメイト全員から無視をされていることに
話しかけてくる子は誰一人いない
学級委員も名前だけ、何もしてくれない
むしろ皆と同じように無視を貫いている
担任の先生は音楽教師だった
私がのけ者にされていたことに気づいていなかったのだろうか
見ていた可能性は高い
ピアノを弾きながら生徒を見ることもできるはず
でも子供は先生にバレないようにしてくる
―――――――教室―――――――
相変わらず私がドアを開けると、嫌な注目を浴びる
席に座ると私の少し離れた席で女2人がぺちゃくちゃしゃべっていた
聞きたいくないけれど、わざと聞こえるように私の悪口を話している
私はトイレには特に今は行きたくないし、座席でストレスを感じながら
悪口を聞いていた
その時も誰も助けてはくれなかった
クラスメイト全員が敵だった。
美術館のようなところに学年で行くことになった
特に各グループで移動などはなく好きな人同士で気軽に周るようだ
私の中では気軽ではなかったが…
クラスメイトが色んな子たちと、見学してる中広い場所で
細かい物がたくさん置いてあったが、見ても楽しくもないし何もわからない
とてもつまらない見学だった。
私はここに存在しているのか?
話しかけれもしない地獄の見学が終わった時は心底安堵した