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稀人  作者: うち
19/95

稀人

稀人。。。


「言っとくが、丈瑠は人間だ。魔に属するものではない」


稀人という存在は建国期にまで遡るそうだった。その建国伝にある抜粋だが


「”栄華繁栄と暗黒消滅を併せ持つものなり”」

「世に稀人が現れ、大地を平定し種族をまとめ繁栄をもたらしめる」

「全てを混乱せしめ消滅を司り無とする」


この言葉通り今の5か国の建国には稀人が関わっているらしく、大陸に平和と繁栄を築き上げ、6つに分け分割統治をおこなったそうだ。

数百年の平和な統治が続いたが迷宮出現で様相が反転してしまったらしい。

別れた6か国での侵略戦争が横行してしまた。

その頃には稀人の姿は確認されていないとのことで、寿命を迎えたのだろうと考える国と稀人の意思に背き、私利私欲に走った愚か者を見捨て帰るべき場所に帰ったと解釈した国があったそうだが、その辺の歴史書物は戦禍でほとんど焼失したようで、王族所縁の口伝みたいなものを後の王族が書き記したのが現存の最古の秘蔵書となっているそうだ。

刀剣の生みの親という説もあるという。


次に現れた稀人は女性であったと記録されているとのことで、それが300年位前だという。情報が不確かな原因は国が滅んでから稀人が関与していたと判明したからだそうだ。

その女性は自ら女帝を名乗り贅の限りを尽くしたとされ、迷宮を探索させるのは若い女性ばかりで処刑場として利用していたと他国の書物にあると聞いた。そんな血まみれな迷宮は他国も望まず、国交もない状態で亡命者が溢れ出ていたと他国の官吏の日記から判明したという。その後、迷宮から魔獣や魔物があふれ出し隣国に多大な被害を出しながら、その国は地上から消滅したという結末だ。

現在その消滅都市は半分がガトゥーゾ公国の領地で半分はエルダール武国に分割されている。


そして、全く存在が不明な稀人が100年前くらいにいたかもしれないということだった。

当時のその領地の国王は最後まで秘匿したが、次代の国王に謝罪と共に全てを暴露したされている

しかし、何をしていたのかは判明しなかったという。


話をまとめて考えると稀人ってかなり迷惑な存在であるように思えた。

陛下たちが身構えるのもよく分かった。なまじスペック高いから扱いづらいんじゃないだろうか?追い出されたら彩花ついてきてくれるかな?とか考えてる時点でどうするか悩む。


「各国が迷宮探索に力を入れるのが理解できたか?」

「稀人がどうというより迷宮が魔獣や魔物を排出するのは避けねばならん」


国が滅びの憂き目に遭わないようにということが理解できた。でも僕が滅ぼす可能性も

あるわけで、さっきの暗転した感覚に身震いを覚えるが彩花の手の温かさがある限り

正気でいられると思いなおした。


陛下から再び問いかけられた。


「丈瑠は稀人だな」


深呼吸してはいと短く応えた僕に対し、陛下は続けた。


「丈瑠よ、稀人とは貴人とも言わるし、鬼神とも言われることもある」

「お前の心持ち次第なのだと我は考えておる。わかるな。」


僕が照れくさそうに笑うと、陛下の幼いころの夢がいつか稀人と出会い、世界をもっと良いものするということだったのを教えてくれた。更に、言うこと気かなかったらぶっ飛ばすっと言ってましたなというのは宰相閣下の言である。


「頃合いであるな」


陛下はそういうと席を立ち僕の傍に来られ、我もお前の味方じゃぞといい頭を軽くなで

退出された。


部屋にいるのが官吏長と僕たちになって、官吏長深く息を吐きこう言った。


「はあ~どうなるかと思ったよ。」

「まさか丈瑠くんがとは思ったが、やはりという気もしてね」

「出会ったころから君は優秀すぎたから」と椅子に深く身を預けて肩の力を抜いた。

「26年の人生で一番疲れた。」


え!と驚いた僕をジロりと睨み、身体を起こし僕に尋ねかけた。


「体調はどうだい?」


特に問題を感じなかった僕は問題ない旨とつたえると、


「眼の色、青いけど見えてるのかい?」

え!?別に普通に見えますが青いのですか?と尋ね返すと


「ああ、空色だね」


彩花の方に向かってそう言うので、彩花の方に体の向きを変えると


「素敵な色ですよ」


と褒められた?のか。


とりあえずこのまま王城に居座るわけにもいかず、部屋をでた。

宰相閣下もおらず、官吏長を先頭に王城を出て、官吏長私室にむかうこととなった。


官吏長は秘書官を呼び、お茶を頼みソファーに浅く腰掛け、僕達にも対面して座るように

促されたので二人並んで腰かけた。

そして、先ほどの出来事を順を追って説明することになったのだった。


僕がこの世界の住人ではないことは最初から理解していたこと。しかし街の人の優しさに触れ、鍛冶屋のオヤジさんの世話になり刀剣士として生計を立てることが可能となった。

そして旦那様と彩花と出会い、今の暮らしが何物にも代えられない大事なものになていて

この世界で生きていると思っていた。

陛下に“この世界の住人じゃない”と言われ、真っ暗になった。何もかも失うどころか、最初からこの世界で何かを得る資格がなかったのではと思ってしまった。

その瞬間、何もかも自分で捨ててしまったのだと思う。

そんな僕を救ってくれたのがたぶん刀剣で僕が僕で在っていいんだと思い出させてくれたのが彩花です。と掻い摘んで官吏長に説明した。


彩花はあれからずっと僕の手を握ったままだ。今は俯きながらモジモジしてる。


説明を終え、官吏長を見るとまた表情が険しくなっていた。


「刀剣が君を救う?」


「その刀剣は鍛冶屋で打ったものだろう?何か特殊な加護を焼き入れているのかい?」


そう言えば、と思い出したことを改めて官吏長に話しはじめた。

確か、きっかけは暗闇に名前が青く浮き出たことか?いや、何か聞こえたような。。。

“たすけて”だったと思う。その声が大きくなるにつれ、名前の青さが増したような気がした。いや、“声”を認識した時に名前が見えたんだ。そして、触れて抱きしめた。

暗闇を名前の青さが照らし出した時から彩花の言葉が聞こえだしたのを思い出した。

彩花に向き、助けてって言った?と聞くと首を横に振られる。

でも、女の人の様な声だった気がするというと彩花の手に力らがはいる。


「丈瑠さん、どこの女性のですか?」


普段の彩花はおらず、横には般若が座ってるように思えた。


声の主は不明ですが、僕はこの刀剣に救われたと思っていると、最終的に官吏長に伝えこの話は終わった。まだ、問題は残っている。


「眼の事は迷宮で傷を負い、いろが変わってしまった」


そう言えと官吏長から指示を受け了承した。そして。。。


「お前、どうするんだ?」


と聞かれ何がですかと真顔で聞き返してしまった。


「彩花、お前ほんとにこんなのでいいのか?」「先は分からんが朴念仁だぞ」


へ?

「お前、彩花から壮大なプロポーズされてんだぞ。理解してんのか?」

「ずっと彩花が返事を待ってるだろうが!」


で、でも僕たちは婚約してるわけで。。。。


「なら、お前プロポーズしたのか?」


してないです。。。小声で言うと官吏長からカミナリが落ちる。


「馬鹿か?お前は 呼びかけが聞こえていたってことは聞こえただろうが」

「こっちが赤面するくらいのそうだいなのが!」

彩花を見ると茹で上がっている。しかし、僕の手は離さない。

ああそうか、待ってくれてたんだ。

僕のことだけを見て、僕を追いかけて、僕の手を引いてくれる大切な人。


あ、あの後で彩花にちゃんと伝えます。


「ならいい、ほんとはこんな事はしたくないんだが、彩花は私にとっても姪っ子みたいなものなんだ。不幸にしたら許さんぞ」


恫喝の様な念押しをされた。


「もろもろのことは陛下に私から伝えるようにしておこう」


そして漸く家路につけた。。


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