表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
稀人  作者: うち
14/95

依頼の達成

10歳ってのもあるのだろうか?恥ずかしくて直視できない。自分の行動や態度が理解しがたくどうしたらいいか分からない。とりあえず平然を装うことにして散歩に出かけた。

日差しが暖かく気持ちいい。あてもなく歩いていると香菜さんから注意を受けた。

「丈瑠さん、このような時は女性に合わせるのが普通ですよ。全く」

人によって違うのであろうが、確かに不調な彩花さんについてこさせるのもなんか違うと感じるのも確かだが隣は恥ずかしい。彩花さんは香菜さんに手を引かれて半歩後ろを歩いていた。僕は謝罪し、彩花さんの半歩後ろへ下がる。香菜さんから舌打ちのような音がもれるがきにしない。少し歩いた所で彩花さんに体調を聞いてみたが問題はなさそうだった。

やはりちょっと気まずい。そこでポロっと今日の出で立ちを褒めてしまい、見惚れてしまったことを白状することになり、気が付いた時には僕も彩花さんも真っ赤になっていた。

「あ、ありがとうございます。嬉しいです。」

またも無言はつづくが散歩はつづき、庭園の途中で香菜さんから部屋に戻ることを勧められ、来た道を戻ることになったが嫌な感じはなくお互い目を合わせ戻ることを了承した。


それからこれといった異変は起きずに3日が過ぎたが、彩花さんは随分と復調したみたいだった。夜、眠ることができるせいか顔色も良くなっている。食欲はまだ戻らないみたいだが復調しているのは確かなようで笑顔も随分と増えてきた。


4日目の晩である。


羊刻ぐらいだろうか、突然、彩花さんから襖越しに話しかけられた。

「丈瑠さん、いらっしゃいますか?」

「お願いがあるのですがよろしいでしょうか?

軽く要件を聞いてみようと思い、了承の意を告げると彩花さんは恥ずかしそうに

「寝付くまでで良いので手を握っていてくださいませんか」

どうやらまだ怖いらしい。普段は香菜さんがその役割をになっているはずだか今日から暫く暇乞いされ、ご実家にもどられたようである。そんなことを彩花さんに言われ動揺は隠せなかったが、旦那様の許可を条件に引き受けることになった。


信用されているのか歳のせいなのか、許可はおり彩花さんの枕もとで正座し、手を握って差し上げた。小さな手はか細くはあるが暖かく女の子の手で無性に愛おしさが湧いてくる。

1刻程すると安心したのか安らかな寝息が聞こえて来たので、手を掛け布団の中に戻し、僕は自室に戻った。襖はどうしようかと迷ったが開けておくことにした。

そして更に3日ほど過ぎた。

未だ戻らない香菜さんの代わりは続いており、顔色は勿論食欲も随分ともどられ、完全に持ち直したように見えるほどになった。距離も随分近づけた気がする。言葉も二人で散歩するときにはかなり砕けたものになっていた。

「丈瑠さん、待って。もうちょっとゆっくり歩いてください」

木陰での休憩を提案し、手を引いてゆっくり歩く。彩花さんの息が整う間、僕はまた思案していた。体調は大丈夫そうであるが、原因はわからない。僕が来てからは“大きな目玉”は見ていないそうだ。そもそも今では存在しているかも怪しいと思い始めている。嘘をつく子じゃないだろうと思う。とするとやはり可能性が高いのは精神的な問題だろうか?

この世界では医療科学は発展していないと思うし、精神的な病気は判断できないのではないかと推察した。“大きな目玉”を見たと思えば見たのだろう。結果はそういうことである。

そこから心身を崩してしまったというのが僕の結論だった。


住込みを始めてから7日間以上過ぎているので、旦那様に時間を割いてもらい彩花さん同席の上で僕の結論を報告した。お二人とも理解はできていない様子だったが、念を押しておくことにした。彩花さんは“大きな目玉”を見ているのだと。そこを否定はしないで欲しいと告げ、沈黙がつづく。不意に旦那様から質問を受けた。

「大体は分かった、彩花の様子をみれば復調もしたのだろう」

「二度とその病の様なものに罹らないようにすることはできないのか」

僕は首を横に振り説明をつづけた。正直、完治しているかもしれないが、心の病気はそれほど安易なものではないことを僕は知っている。心の拠り所があり続ければ、いずれ完治もすると思う。周囲の人が耐えられればである。旦那様は腕を組み苦々しい面持ちで思案していた。彩花さんも自分が病だと知らされ落ち込んでいるようにみえる。


「丈瑠くん、今回の依頼はこれで終了なのだな」


旦那様は突然の確認を行う。僕は首肯し応じたが話は終わりではなかった。


「丈瑠くんは今後、刀剣士として生計をたてていくんだったな」

「君の身の上は最初に聞いたが、活動拠点は決まっていなかったな」

「そして最後にまだ当家の依頼を引き受けることは可能か」


と、厳しい目で問いかけられ怯みそうになったが、僕の意志を伝えた。

今回の依頼終了結果が満足いくものだったものなのか評価をお願いしたいことや、拠点は宿住まいも念頭におき刀剣を鍛えることに注力し、何があっても困らない程度の刀剣士にはなりたいこと、そして旦那様や彩花さんに恩を感じているので可能であれば今後ともお付き合いを継続したいとの思いを正直にぶつけてみた。

すると旦那様から、依頼に対する評価を伺えた。

そして次の依頼を口頭で告げられるのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ