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お城  作者: みぃ
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マンションの話5

「ねぇ、ケン君」

床に広げたコートの上で、腕枕をしてあげながら、私は潔癖な恋人の耳に囁きました。

「なんでコンドーム付けてするの?」

「妊娠しないように。当たり前でしょう?男として当然の義務じゃない?」

「いつも持ち歩いてるの?」

「今日だけだよ。無くなってきたなぁと思って帰りにドンキに寄って、ゴム買ったときに、閃いたんだ。今日は玄関で、ドアを開けた瞬間にキミを押し倒して犯してやるんだッ!!、って。手も洗わずに!うがいもすっ飛ばして!」

「情熱的だったよ」

「ちょっとビックリしてたワカちゃん、可愛かったよ。」

「ケンくん、マスクして帽子も取らずだったし、雰囲気も暗くて何より勢いが凄かったから、間違った人に玄関開けちゃったのかと、一瞬、ゾッとして怖かった・・・」

「目を見開いてたね。最初本気で爪を立ててきたね」

「ごめん・・・」

 私は二人の体に布団のようにかけているケンくんの上着の下で、彼の手を取り、胸の谷間に引き寄せて、さっき猫のように爪を出して本気で引っ掻いてしまった彼の手の甲を両手でソッと包みました。

「本気で怖いと声が喉の奥に引っ込んで出て来ないんだなぁ」

「今度からは覗き穴でちゃんと僕だって確認してからドアを開けるんだよ。いい?」

「足音で分かるから」

「足音?そんなのみんな一緒でしょ?」

「違うよ。階段の上り方とか、鍵をポケットから出す音とか、歩き方のリズムとかみんな違うよ」

「今度こそ本物の強盗の変質者だったらどうするの?僕の足音に似てるだけの。足音の空似なんていくらでも居るよ。危ないから、ちゃんと今度からは玄関開ける前に覗き穴で確認するって約束して」

「心配してくれてるんだね、ありがとう」

ケイイチ君は私の頭をヨシヨシ、と撫でてくれました。髪に指を差し入れて、地肌を指の腹で掻くようにして。シャンプーするみたいな頭の撫で方です。彼が頭を撫でてくれるそのやり方は。

 ケンイチ君は欠伸を一つして、このまま眠ってしまいそうです。撫で続けてくれる腕の動きが次第次第にゆっくり、もったり緩慢になってきました。頭もコクン、と力が抜けて、ハッとなってジュルッと涎を啜り上げ、自分で決めたルールに厳しいケン君には珍しく、上着を二人の肩まで引っ張り上げて、ベッドまで起き上がって歩く気はなさそうです。玄関の床に敷いたコートの上に突っ伏したまま、眠たそうな声でムニャムニャと続けます。

「でもまたやろうね。強盗強姦ごっこ。不同意性交ごっこか。ちょっと興奮しちゃった・・・暴れられるとまず口を塞ぎたくなる、その次は手足の自由を奪いたくなる、・・・性犯罪者の気持ち、疑似体験してみるとよく分かって勉強にもなったよ・・・」

「本当に怖かったんだよ、最初のうちは。『ケン君、ケン君、ケン君でしょ?』って何度聞いても、そうだよって言ってくれないし。でもコンドーム用意し出したら、嗚呼、やっぱりケン君だなぁ、そこはしっかり絶対ちゃんとするんだぁ、って、微笑ましくなっちゃった」

私はクスクス笑います。

「するでしょ、普通。ゴムの準備は男の礼儀だから・・・ね・・・」

私はなんとも答えず、閉じた愛しい人の瞼を最後に見詰めてから、自分も潮のようにヒタヒタと満ちてくる眠気に身を委ね、目を閉じて、体を温かい彼の体にもっとくっつけ、(ケン君がこのままここで眠るのなら、私もこのまま玄関の床で眠ってみるのも一興だなぁ、)・・・と眠りかけ始めました。

(ケン君、昨日は頑張って睡眠時間削ってまた根詰めて勉強してたもんなぁ・・・この人寝ないで大丈夫かしら・・・と心配だったけど、今日眠れるって言ってたから、その通りになって良かった良かった・・・)

 ところが、ケン君は今度は逆に、何か飲み下せない物が喉元に引っかかって釣り上げられる魚みたいに、意識が覚醒の方へと浮上して眠気が覚めて来たらしいのが分かりました。私の腕枕の腕に伝わってくる彼の肩や首や、体の強張りから。

「え・・・」ケン君の固い声。

「ああ、そうか、もしかして、彼氏さんは避妊しないのか?」

「・・・」私は目を閉じたまま、頭を巡らし、質問返しします。「ケン君は、私が妊娠しない方が良いの?」

「え?・・・」

二人とも、答えは分かっています。今は無理。ケンイチ君はあと少なくとも四年近くは大学に通わなくてはならない苦学生です。今でさえ生活はカツカツなのに、この上、妊婦や赤ちゃんを抱えて学業を全うする事など、とても出来ません。

 しかし、1303号室のヒロキには今すぐからでも、それが出来てしまうのです。現に一年前からずっとヒロキは私と子作りしています。


 ケンイチ君はジッとしばらく神経を張り詰めて何事か真剣に頭の中で考えているようでしたが、ガバッといきなり起き上がり、跳ね飛ばされた彼の上着が私の頭に落ちてきました。強姦ごっこの時よりも張り詰めた緊張感を感じて、私は大急ぎでコートを頭から剥がし、視界を取り戻しました。

「どうしたの?!」

「子供が出来たらどうするつもりなの?生むつもり?結婚するの?あんな未来がない男と?」

「未来がない・・・?」

「若菜さんを大切にしもしない、飲んだくれの、ふらふらの千鳥足で毎朝帰ってくる、酒臭いか女の香水臭いかのいつもどっちかな人だって言うじゃないですか!しょうもない!どうせろくな未来なんか待って無いですよ!!そんな野郎には!!」

「一応、あの人も野心家だから、将来設計はあるみたいだけど・・・」

「どうせ夢物語ですよ、そんなもん!なんて言ってるんですか?どうせ自分の店を持ちたいだとか、それを足がかりに駆け上ってゆくゆくは全国チェーンの大社長に俺はなるッ!、だとか、そんな大きなこと吹いてるんでしょ?馬鹿みたい。絵空事ですよ!!若菜さん、そんな妄想劇場に付き合って妊娠でもしたらとんでもないですよ!」

「・・・なんで?」

「妊娠は現実だからです。一緒にボヤボヤ見てる夢とは違う。

あんな酒臭ふらふら千鳥足男に、赤ちゃんを抱えた貴女の面倒は見きれませんよ!きっと捨てられます!妊娠したら!!もっと言うと、将来もしあいつの(ケンイチ君は1303号室に面した壁をビッと指さし、)夢が万が一にも叶ったとしよう、そしたらその時、貴女はきっとお払い箱なんだ!!古いお荷物は一掃して、もっと若くて美人でピチピチの新地の売れっ子キャバ嬢とか、モデルの卵とか、連れて歩いたら自慢になるその時最高の女を口説こうとする!!おばさんになった貴女は別れを告げられる!!ああいう奴らのやり口はそんななんですよ!!相場が決まってる!!」

「・・・そうと決まったわけじゃないでしょ・・・」私はムッとして胸が悪くなり、普段よりもグッと低い声が出ました。常にケンイチ君の前でヒロキの話はしないように、悪口も言わないように、気を付けていたのですが、ベロベロに酒に酔って帰ってきて介抱している時に身体に女の口紅や爪の痕などを見付けたり、別の女の名前で呼んできたり、後でこちらの献身をケロッと記憶せずに起きてきて、酷く軽い扱いを受けたりすると、ついポロリポロリとケンイチ君の腕の中で涙や愚痴を零してしまっていたのです。

「あんな風な後先も何も考えてない糞頭の悪い男達が無責任に精子を撒き散らして、それでますますこの世の中、馬鹿の比率ばっかり増えていくんだ!!どうしようもない!!貴女も、そんな安い女なんですか?!若菜さん!!あんな阿呆な男にやすやすと未来や子宮をホイホイ差し出さないで下さい!!捨てられなかったらもっと悪い、泥船ですよ!貴女が子育てもあいつの面倒も身体を張ってでもさせられることになるかも知れない!!先が読めますよ!!真っ暗なお先が!!」

私はムカムカッときて、黙って立ち上がりました。言い返したい、ヒロキを擁護する言葉はグッと堪えて。個人情報だからです。そうで無くたって、この二人、いやこの三人の関係のことはヒロキは全然知らないのです。ケンイチ君との関係が始まった瞬間から、私とヒロキの関係を知っているケン君と何も知らないヒロキとは不公平だからです。

 それに、仮にも一年間身も心も捧げ、今だって憎しみや嫉妬に駆られながらも、未だ別れず付き合い続け、一日の半分はその腕に抱かれて寝ている男の事です。例え同じくらい愛しているかも知れない別の男の口からであっても、愛する人の悪口ばかり聞かされてウンウンと頷き続けてなどいられません。ヒロキの害を一身に受けているのはこの私だけです。悪口を言って良いのもこの私だけなのです。太陽が眩しければ夜もそれだけ闇が深いと言うように、ヒロキへの私の愛情は、憎しみや意地や怨念が深く、その分、愛の根も深いのです。

あんな男、誰も芯から愛すことはできない、この私にしかできない。誰もが、ヒロキの表面の取り繕った薄い美しい皮を好きになります。見た目が良いし、短い時間、客として接する分には、おべんちゃらも上手い。仕事ですから。しかし、中身は身勝手で、傲慢で、無茶苦茶で、それであの人なりに一途なのです。これは私にしか理解できないヒロキの奥の奥の心の核なのです。私たちは既に同じ一つの船に乗りこの世界という広い海に漕ぎ出した運命共同体。互いの皮膚を突き破って根を伸ばし、相手の脳髄に根を絡め自分への愛を養分に吸い取って育つ二株の寄生植物。互いの面倒を見合う親であり子でもある。

(それに、時々ヒロキの部屋から、作りすぎて余った食べ物やヒロキが羨望者達から貰って帰ってくる贈り物の高級なデパ地下スイーツなどを、チビチビと持ち出して、ケンイチ君に食べて貰ってもいるのです。ケンイチ君もその事を本当は知っていて、賢いから口には出さず、男のプライドをそっと棚に上げて、食べるときは『美味しい美味しい』と言って食べるのです。)

(ケン君にヒロキの何が分かる?分かるわけ無い。あの人は一見、そういう絵に描いたような酷い人に見えるかも知れない。けど、私には分かる。私にしか分からない。割とあいつは筋を通す男だよ・・・だからこそ、『他の女とやるときはどんなに酔っててもゴム付けてる。』という言葉だけは信じて疑ってない。あの人は、嘘がつけない。情に厚くて、自分よりも弱い生き物をほうっておけない。意外に涙脆い。懐が深い。ケチになることが出来ない。実家の小さい兄弟姉妹達の面倒も見てる。・・・あの人だって努力もしてるし、苦労もしてる。甘えられる環境で育ってきていない。私しか知らない、ケン君に言うことはできない事、私にだからヒロキも教えてくれた二人の間だけの情報は数々ある。あの人は、ただ、多少、手に入れたいと思った物や金額の金を手するために、手段を選ばな過ぎるきらい、自ら敵を作り過ぎるところ等はあるけれど・・・でも、それもこれも全部、自分のために使うお金ではないんだ・・・)

「帰る」

「言い過ぎました」

ドアノブにかけた私の手を、ケン君はすかさず握ります。

 もう一方の手も捕まれ、引っ張って、彼の方でも身体を私とドアの間に踏み込んできて、正面から向き合う体勢にさせられました。

「まだここに居て下さい。貴女はまだここに居るべきだ。まだ僕の時間です。二股を掛けたら良いんです。どうぞ僕に保険を掛けて下さい。僕の方が間夫で構いませんから。悔しいけど、今はまだ、確かに、僕の方が浮気相手です。貴女を今すぐには養えないし・・・赤ちゃんも作ってあげられない・・・自分自身が実家からの仕送りで生きてる今は。だから僕はコンドームを付けます。それが僕の、今できる若菜さんへの誠心誠意の嘘偽り無い愛の形です!!今は!でも、でも・・・いつか・・・必ず・・・」

ケン君は唇をギュッと真一文字に引き結び、私の両手を包む両手に力を込めて、神社の鈴をカランカランと鳴らすあの縄を振るみたいに、力強く、二、三度、二人の胸の間で重々しく振りました。

「長い目で見て下さったら、きっと僕の方が貴女を幸せに出来ます。僕は堅実です。アルバイトだって、堅気の仕事しかやって来なかったし、これからも絶対にやらない。『楽な道はかえって回り道』、ってお爺ちゃんも言ってました。今すぐにどうしようもないとなれば、僕だって若菜さんのためになら手を汚す覚悟もできます。だけど、今は・・・

・・・だけど僕は、この先、浮気も酒も煙草もしません。もう少し、あと三年、待っていて下さい。後悔はさせないから。だから、彼氏さんに頼んで貰えませんか・・・?」

「・・・避妊してって?」今更?

私は、絶対無理過ぎて、笑ってしまいそうになるのを堪え、俯いて誤魔化しました。

これはケン君に相談すべき事ではありません。が、本当に今こそ誰かに相談したい気分です。大概の悩み事なら、人に聞くより先に自分で行動を起こしてしまう派の私ですが、こればかりはどうにもならない。自分一人の事では無いからです。

ヒロキに嘘や誤魔化しなど通用しません。絶対に、今更、急に「避妊して」なんて言い出せば、こいつ何があったんだと、しっかり納得のいくところまで追求してくるに決まっています。そして、ヒロキ同様、私もまた、嘘を吐くのが嫌いなのでございます。問い詰められれば、必ずや、これまでの恨み辛みを吐き出しつつ、お隣の1304号室のケンイチ君との間柄、今までにあった事柄を、洗いざらい全部ぶちまけて告白してしまうに違いないのです。

「これまでずっと生でやって来てたから・・・二人とも子供が欲しかったし・・・急に避妊しようなんて言ったら、この関係のことも話さなくちゃいけなくなる・・・」

「そこをなんとかうまいこと出来ないんですか!?若菜さん!僕のため、僕達の将来のために・・・!!」

うーん・・・私はケンイチ君の目を見詰めました。ケンイチ君も私の目を見詰め、

「お腹の調子が悪い、とかなんとか、言ってみたらどうですか?・・・

・・・そうだッ!ちょっと日和見感染症に罹って、婦人科に見て貰わないといけない、とか、治療中の間、ゴム付けて清潔にしてしないといけない、・・・とか・・・性行為事態をやっちゃいけないって医者に言われた、って言っても良いですし・・・」

「保険証使ってないってバレちゃうじゃん」

「あぁ・・・もう彼氏さんの扶養に入っちゃってるんですか・・・」

「結婚すると思ってたから・・・ケン君が現れるまでは、あの人しかいなかったから・・・」

「なるほど、・・・なるほど、・・・」

私を見詰めるケンイチ君の目に膜がかかったようになり、目の光りが奥へ引っ込んで、何やら頭の奥で一生懸命考えている暗い、真剣で怖い顔になりました。そして、

「大丈夫です。」ケンイチ君が再び目にさっきの激情とはまた色合いの異なる、落ち着いた光りを宿して、私を見詰めました。

「まだ間に合います。例えワカちゃんが妊娠しようが、あの人の子を産もうが、それでも僕はその子ごと貴女の面倒を見きれます!!だって今の自分にはそれが叶わなくても、将来はワカちゃんの子供なら10人だって面倒見られるようになるつもりだから!!そのくらい僕は若菜さんの事が好きなんです!」

(なんだか大袈裟になってきたな・・・)(子供10人って・・・)と私は密かに思いました。

「この時代、結婚の賞味期限は短い。人類が洞窟に住んでいた野生の時代、子供が大体二足歩行で歩けるようになる2歳頃には親同士は別れて、また新たな別の組み合わせで遺伝子を世に残して来たらしい。女性の社会進出が進む現代も、もうほとんどその時代とかわりません。僕の父と母も再婚同士なんです。

例えもし今このお腹の中に(ケン君は私のお腹に自分の温かい手のひらを押し当てました)あの人の子供が宿っていようと、僕はそんな貴女も愛せます。そんな若菜ちゃんだからこそ、不器用で優柔不断で頑張り屋さんで打算的な若菜ちゃんを僕は愛しているんです!!

今、貴女を支える度胸と甲斐性が現時点で無い分、僕は将来、貴女が困った時は支えになってみせます。だから、今は、あの人が居ない時間は、僕の部屋に居て下さい!!今は何もしてあげられない空っぽな僕の心と身体の支えになって下さい!!毎日これからもお弁当やご飯を作って下さい、そして抱かせて下さい!!!きっと三年後には恩返ししますから!!!!貴女を娶りたい!僕が一本立ちした暁には!」

(なるほどなぁ)と私は賢いケンイチ君の鋭い眼差しに射貫かれながら、感心していました。

(この人、一瞬で今の自分にできることとできないこと、それに今私にして貰いたいことと、して欲しくはないけれどそこは今の自分ではどうにも影響を与えようが無いこと等等を素早く見抜き、優先順列をパパッと見直し、うまいこと言いよったな)と思いました。

押しに弱く、押されてみて言いなりになってふわふわ動いてみて、さて、どう転ぶか、転んだ後の事態を眺めてみるのが常の、自分の頭で先読みする事ができない私は、出たとこ勝負、すぐ甘い言葉に心動かされました。旨い言葉には裏があるもの、…かも知れなくても、例え裏があったとしても、その裏をも、全部飲み込み、毒を食らわば皿まで、腹の中でひっくり返して表にしてやりましょう!!三年後のことなんて、三年後に悩めば良いのよ!!あたしって、そう言う女!!溺れたい時に溺れずして、いつ溺れろというの?!今でしょ!!??

「・・・そう?・・・」私はキス待ちのミニーマウスのように可愛らしくパタパタパタッと瞬きしながら、ケンイチ君を睫の下から、上目に見上げました。

ケンイチ君は胸を張り、

「今は2番目に甘んじても、いずれは一番に僕を愛して下さい!三年後の僕と一緒になろうッ!?僕もその時の若菜さんのありのままを愛します!!子供は任せて下さい、その時何人居てもみんな貴女の子だ!だから・・・」

「分かった。これからもこの部屋に来させて。あの人がいない間は・・・」

(ケン君に騙されても構わない、ヒロキにこの危険な火遊びだか保険だかがバレて、二人から同時に捨てられようと、もうどうなっても構わないわっ、今のあたし、ズブズブに二人の愛に溺れていたいのッ、どっちか片方なんて選べないわぁッ)と、その時の私は思ったのです。

「嗚呼ッ、若菜さん!!大学とアルバイト先とこの部屋とのトライアングルの往復しか無かった僕の心と体の支えは今、貴女しかいないんです!!女神様のような心の広い、優しい人ですね、若菜さんは!!」

(きみこそ都合の良いようにホラを吹くのがうまいだけなんじゃないのかな?ケン君・・・?)と、まだ付き合いたてで人柄が掴みきれていない若い恋人の剃り痕が傷だらけの顎を見上げながら、内心で私は思いました。

(言葉なんて羽より軽い。口約束なんてシャボン玉より希薄。)女神様だなんて、そんな持ち上げて人を翼の生えた力のある架空の聖人みたいに例えるけど、私は生身の女よ、遊ばれたら傷つくし、突き飛ばされたら羽ばたいて倒れずに起き上がることなんかできない。年も取る。騙されたら、それなりに恨むかも知れないわよ。何でも許せる、大勢を救済できる女神様とは違って。

「お風呂に入って、ベッドでもう一度、改めて仲直りの儀式しようよ!」

私は手を引かれるまま、彼に押したり引いたりして貰いながら、短く狭い廊下を進み、浴室に入りました。

 シャワーと賛辞を浴びながら、微笑みを顔には浮かべ、内心は物思いに耽ります。

「滑らかな小麦肌、引き締まった下腹、スラリとした手足、全てが綺麗です・・・可愛いです・・・若菜さん・・・」

子供ができたら?それでもまだそんなこと言ってくれる?赤ちゃんができたらお腹は膨らんで出っ張ってくるし、栄養をそっちに吸い取られて凄く禿げ上がってしまった友達もいた。出産した友達達はもう一緒に日帰り温泉にも行きたがらない。普段はお洒落な和装でツンと澄ました綺麗な従姉も、服の下に妊娠線でひび割れだらけのたるんでもう元に戻らない皮膚を隠している・・・


 私は兄と兄嫁の新婚夫婦に思いを馳せました。兄嫁には三人の連れ子がいます。結婚前、それをただ情報として兄の口から聞いた時には、家族全員がビックリし、優しい言葉やキツい態度やらで何とか思い直させよう、別の恋人を作らせよう、と、みんな必死になって説得したり作戦を立てたりを試みました。が、兄は、

「まぁ、会ってみてくれ。それからだ、話は」

と笑って受け流していました。

「会わない」「絶対、会わない」「お前は初婚なんだぞ、そんな年増の大層な女性や子供達の面倒見てやれるほど甲斐性も無いくせに・・・!」と言い張っていた両親は、兄が連れてきたフィアンセを見て、開いた口が塞がりませんでした。お父さんの好きな日曜午後の討論番組で、出てくると

「この子は偉い、若いのに世界情勢をよく分かってて、無知な人にも解説するのが上手い、それに艶っぽい、タイプだ!母さんの若い頃そっくりだ!」と言ってよく褒めている、名門有名大学の美人教授だったのです。

「むしろ逆玉だッ!お前、早く、あの子の気が変わらんうちに、早く結婚しろッ!!」

と、ミチさん(兄のフィアンセの名前)が家に居る間はソワソワ、照れ照れして一言も声が出せなかったくせして、ミチさんがほんのりと上質なかぐわしいシクラメンのラストノートを漂わせて玄関から出て行った瞬間、父は180度意見を転換。普段大好きな格言『男に二言無し』だとか、『儂はサムライの国の日本男児』だとか、父親の威厳などそっちのけ、兄に「早く籍入れとけ、何はともあれ!!」とせっついて回っています。母も、「まぁ、あんな立派な人なら、自分の子供達や自分の事は全部自分だけで面倒見れる上、あんたの事も可愛がってくれるでしょう」と豹変し、上から目線だったのが突如下から目線に変わりました。

 子供を抱えた女性であっても、それなりの地位や経済力を持っていて充分に自活できている人であるなら、再婚相手の両親にもすぐに受け入れられ祝福されると言うことです。

 しかし、私には学歴も特別な才能も、なーんにもありません。むしろ、どっちかと言えば、普通の人にできる色々な事ができません。何かしら突出した才能があるわけでも、学があるわけでも無い。コミュ力も無ければ、テキパキ動ける能力も無い。我慢も苦手。体力も記憶力も無い。握力は8くらいしか無いのです・・・

学生時代、握力測定器を背の順で並んで前の人から握り締めていき、私の順番が来たとき、私は全力で機械を握り、肩を震わせて測定結果を計測係の人に見せたのですが、

「え?故障かな?」と言われ、「もういっぺん計ってみて?」と言われて、再度8を出したからよく覚えています。

御曹司とかお嬢ちゃま育ちの人のことをからかって、箸より重たい物持ち上げたことが無いんじゃ無いの?とか言うけれど、確かに、私は致命的なほどペットボトルの蓋が開けられない。可愛い子ぶりっこでは無く、本当に開けられないのです。今ではケイイチ君かヒロキかのどちらかが常に一緒に居て何か蓋を開けたいようなときは頼めば良いのですが、ヒロキと付き合い出す前の夏、喉がカラカラだったから購入したペットボトルの蓋がどう頑張っても、ハンカチを噛ませても、一人で開けることが叶わず、弱り果てて、(ダメだ、これでは脱水症状で死んでしまう、)と思い、恥ずかしくて小さな小さな声で、レジのバイトの男の子の元にコソコソ戻り、

「今さっきこれを買った者ですが、蓋が開かなくて・・・開けて貰えませんか・・・?」と頼んでレジ打ちのミャンマー人のお兄さんに開けて貰ったほどなのです。

 力の無さの自慢をしているわけではありません。自分には自信が無い、と言っているのです。兄嫁と私とでは月とスッポン、雲泥の差があります。

例えケイイチ君が口約束の婚約をしてくれたと言っても、私が三年後に子供を三人産み抱えていて、もしも二人の恋人の二人共が責任を取りたくない、と言って私を子供達共々放り出した場合、私には三人の子供達と自分を養える自信が甚だ無いのです。

ついさっきは、自信だけならある、何でもやって生き延びてやる、と燃える情熱で本気でそう思われたのに、考えや自信とかいうものはフラフラ安定しないものなのですね。


 私はいつものようにケイイチ君に抱かれながら、どこか距離を置いた冷めた心で本心を探るように彼の目の奥を観察してしまい、疑いが隙間風のように愛を深めるはずの行為の最中に介入し、私の気をそぞろにさせて、いつものようには陶酔できません。

ケイイチ君もすぐにそれを察知します。気付かないはずはありません。彼も私の目を探るように見詰めています。ピストン運動のリズムに合わせ,互いに相手の瞳に映る自分がぶつかりそうなほど近付いては離れ、近付いては離れる。ケイイチ君の目に映っている私の陰は、私自身にもよく見えない。覗き込んで見定めようとはするけれど,その前に動いて、遠ざかってしまうから…

 小休止。

「若菜さん。」ケイイチ君は私の両腕を押さえつけ、深爪の指をグイグイ食い込ませながら、

「貴女は優柔不断だから・・・最後には必ず、どちらか選んで下さいよ?そうしないと僕にも彼氏さんにも失礼だ。今の僕に言えた立場じゃ無いかも知れないけど・・・最後はどちらか、絶対に片方ですよ!」

と念を押してきました。

嗚呼、裏切りとは・・・約束するときには自分がまさか裏切者になるなどとは考えていないのです。裏切りとは、相手を裏切ること以上に、約束した当時の自分を自分で裏切る事なのです。私はこのままではケンイチ君もヒロキもが私を捨てなかった場合には、どうしても裏切り者になってしまうのです!!

 この時だと思います、小悪魔が私に降臨したのは。

私は意地悪に、押さえつけられていながら起き上がれる限界まで身を起こし、ケイイチ君の耳の中へ、甘い声で囁きかけました。

「ケイイチ君、ナマで嵌めて。中に出して。私の奥に。その方が何倍も気持ち良いよ。私、今からすぐにあなただけのものになりたい!私はケン君の赤ちゃんを今すぐに孕みたいの!」

ケイイチ君が求めている通りではないものを望んでる作戦でした。しかし、口に出して言った途端、その考えが引き金となってジンと下腹部を緩い蜜のように蕩かせ、彼の肉棒を私の肉筒がギュッと捉えて、離そうとしなくなりました。ケイイチ君の赤ちゃんを今すぐに身ごもりたい・・・!!かも知れない・・・!!それをこそ今の自分は望んでいるのかも知れない・・・本当に!!私は自分でもそう信じ始めました。

 ケンイチ君は怯み、私の本心を探るため、表情をよく見ようと、顔を一旦離そうとしました。私は彼の腰に両脚を巻き付け、抜けかけた彼の肉の剣を深く自分の鞘に戻しました。

「本気じゃないよね?若菜さん・・・今の僕は・・・

・・・あれでしょう、僕が問い詰めたから、ちょっと意地悪を言ってみたくなっただけでしょう?本当はワカちゃんだって人並みに狡くて、賢い人なんだから。ね?待てる子ですよね?ワカちゃんは?僕がちゃんと大人になって、彼氏さんよりちゃんとした地に足着けたやり方で、しっかりいっぱい稼げるようになったら、それからでしょう?正式に向こうさんとはオサラバして、僕の赤ちゃんを欲しがって下さい。」

「今じゃダメなの?」

「ダメなんです」

「どうして?」

「言ったでしょ、分かってるくせに!今の僕じゃあ、あなたも子供も養いきれないからです!」

「何故私が良い子にして待ってなきゃいけないの?」

「僕が就職するまで待って下さい!三年。たったの三年ですよ!」

「長いわ」

「すぐです」

「ケン君、貴方はそれまで私が他の人に抱かれても良いの?」

「・・・」ケンイチ君はムッと一瞬黙り込み、強い目力で私を睨みつけましたが、すぐ目を逸らし、

「仕方ないですもん。今は。我慢します。ワカちゃんじゃ無くても僕にだってここへ料理とかしに来たがってる女の子もいるんだけど、でも貴女が誰より良いんですもん。例え、今は、他の人の彼女だったとしても・・・

三年間、僕だって自分の男としてのプライドが傷付くだろう事は分かっています。でも、三年後に念願叶って試験に合格し、就職して、貴女も手に入れることができるという約束さえあれば、今は何だって我慢できる!

だから、どうしても約束して欲しいんです!!今も若菜さんの愛は必要だけれど。三年後の僕には、盗んでコソコソ人のものを借りさせるような真似はさせないで下さい!僕がちゃんと幸せにしますから!!三年後には、僕だけを選んで下さい!!」

「私は今、選びたい。この瞬間に。もうあっちの部屋こっちの部屋、一つ壁を挟んで右と左の男の腕の中で寝て起きて、ウロウロするのはウンザリ!吐きそう!自分の事が気持ち悪くなる!!三年間もこんなこと続けさせないで!今すぐに決めさせて!!貴方の腕の中にいる今なら、私は完全に貴方のオンナよ!!今、決めろと言って!今、すぐに孕ませて!!それか一生二度と会わない、サヨナラバイバイ、三年後もお別れしたままか、どっちかよ!」

「若菜さん、若菜さん、ヤケクソにならないでよ。おっとりして優しいのが取り柄でしょう、貴女らしくもない・・・」

ケイイチ君は猫撫で声。爪を立てていた指も、今は優しく、私の鎖骨の線をなぞって撫でてくれます。

 私らしいとか,私らしくないとかを、何故、私じゃない人が決められるのか、不思議ですが、こう言う事なのでしょう、ケイイチ君から見た私と言う人間には,こうであって欲しい、と彼は言い、私もケイイチ君が好きだから,ではそうあろう、と自分自身心がける事により、より私と言う人間はおっとりして優しい女になっていくのです。

 私は優しい口調ではあれど言っておかなければならない事は全て言ってしまおう、と、手を伸ばして彼の髪を撫でながら囁きました。

「ケイイチ君は?今さっき、夢と私を天秤にかけて、まず夢を、その後に私を迎えてくれると約束したでしょう?私にもそれは理解できる。長い目で見れば、そしてあなたを信じ続けるなら、それが私自身の将来のためでもあるかもしれない。貴方は法律家になる人よ!!どんなに難しくても、狭き門でも、倍率が高くても、誰かがなれるなら、貴方になれないはずが無い!!ケン君がどんなに努力家か、私は自分のこの目で見て、知っているから。

だけどね、こうも考えられるのね・・・ケン君、今、現時点で、貴方は私をハッキリと、二の次にしたのよ!!それは誤魔化せない。仕事か私か。どちらかを天秤に掛けるとき、例えヒロキなど居なくったって、(今度は私が1303号室に面した壁をビッと指さしました、)貴方は人生の全ての段階で、私を仕事より後回しにするわ!!『僕は君のために働いてるんだ』と言ってね。

それはそうよ!みーんな、この時代、働かなくちゃいけないの!だけど、自分や誰かのために働くのは確かでも、その仕事に私は拘ってないのよ!!絶対に裁判官にならなくちゃいけない、なりたい、と思ってるのは貴方。その夢を私も応援したい!でも、私は別に貴方がなりたがってるものが大泥棒でも、ミュージシャンでも、サーカスのライオン使いでも、別になんだって良いの!!パートナーを養うのに、絶対裁判官にならなくちゃ養えないってワケじゃないんだよ!私はただただ、貴方がなりたがってるのが裁判官だから、それに向けて凄い努力してるケン君が痛々しくて、美しくて、応援したくなっちゃって、愛してるから、だから応援してるの!!例え裁判官になれなくったって、貴方ならきっとなれるけどね、例え違うものを目指してる人だったとしても、私が好きになったのはケンイチという、まだ何者でも無い、浪人生なのよ!!

私が三年間赤ちゃんを産まず、ヒロキと別れ、貴方と一緒になったとて、貴方は私と貴方の赤ちゃんが生まれてくるその日にさえも、自分のキャリアの命運が別れるような大事な仕事が同じ日に入ってしまった場合、必ず仕事の方を取る!今からだって目に見えるわ!寂しい思いをする自分の姿が!!いいえ、いいえっ!!」

私は何か言い出そうとするケンイチ君の唇を人差し指で塞いで、一気に早口に、更に言い募りました。

「貴方はそれでいいの!ケンイチ君!!私は、今すぐ、仕事よりも私を選びなさいよ、とか、ヒロキから私を無理矢理にでも奪い取る情熱を今、見せてみなさいよって言ってるわけじゃ無いの!!貴方を困らせようとしてるわけじゃ無い!

貴方は、今、一番大事なものが夢なの。追い続けて欲しい!むしろ、それならそれで、一生貫いて欲しいわ!私は仕事の次で良い。でもそのかわり、死ぬまで一番が仕事、2番目には私を選び続けてね!例え、若くてピチピチの可愛い秘書や派遣の事務の大学生や貴方を崇拝する後輩裁判官の卵ややらがあの手この手で貴方を誘惑してきても、お遊びはお遊び。3番目にして頂戴ね?ちょっとお小遣いを渡してあげて、年に2、3回ちょっと良い贈り物してあげるくらいにして、絶対に順番を入れ替える事はしないでね。」

ケイイチ君は無言で頷きました。私は彼の逃げ道をいくつも思い付けます。自分が若くて一番美味しい時期を良いように彼に使われてその後放り出させる可能性もあることをちゃんと見抜いています。今、彼のその逃げ道を断つ事ができ、その方法を知っていたとしても、私はそれをしない。何故でしょう?

私の方がケイイチ君を愛しているからに他なりません。負けるは勝ち。やはり、惚れた方が弱い!!私は自分の方がより彼への愛が深いところを見せてしまったのです。

ケイイチ君は何事かを言葉には出さずに胸の中の木霊の声に応えているかのように、誰も何ももう喋ってなどいないのに、あと何度か、間を置いて頷きました。

縦長の顎の細いケイイチ君の顔ですが、鏡に映して比べてみると、私よりは顔そのものも、鼻も口も眉も、全て大きい。髭は濃いのに、まだこれから大人になっていく途上の不完全さも顔のあちこちに見えます。歳を重ねて行くにつれこの顔がどんな風に皺を刻み、どんなかっこいいお爺さんになっていくのか・・・私にそれを見届けることができるのか・・・分かりません。

 私はそんな彼のつるりとした血色の良い色白の頬を、下から見上げ、手を伸ばして触れ、撫でました。

「3年後なんてクソどうでも良い。今、私は貴方を愛してる。」

誰が見ても美しいと言うに決まっている整った顔のヒロキとは違う。けれど、この人はこの人で美しい。ケイイチ君はケイイチ君にしか似ていない。誰に似てるとよく言われるかと聞いてみると、芸能人ではなく「モアイ」と言ってましたが。惚れている私の目にはケイイチ君が男前にしか見えません。その厚くもなく薄くもない柔らかい唇の中の、熱いピンクの尖った舌が、どんなに不器用に私を愛撫してくれる事か!知っているのはまだこの世で私だけなのです。細すぎる目はフサフサとした密度の高い、色素の薄い茶色い睫に縁取られ、感情や考えが表に出やすい。ケン君もまた、嘘や隠し事ができないタイプです。

男根は根元に毛が生えていて、毛並みがこちらを向いているため、コンドームを被せきる事ができない。行為の最中にゴムが巻き上がってきて私の入り口が擦れて痛くなります。かと言って、剃って貰ったら、多分余計にチクチクして痛いことでしょう。『お金ができたら脱毛しようか』『その方が良いかな』「その方が良いよね』と話し合いました。私は彼のそう言う一つ一つの特徴と共に歩んできた道のり、これからの約束、全てを愛おしく思っています。

 今からでも分かるのです。例え彼に裏切られることになったとて、まだ私は完全に完璧にこの人を嫌いになれはせず、きっと許してしまうだろう、と。


「じゃあ、続けても良いですか?」

私は何度も頷きながら、目を閉じました。自分の愛の深さに感動して流れ出してしまいそうな涙を堰き止めるため。

ケイイチ君は正常位の上から私の反応を見詰めながら、ゆっくりと腰を動かし始めます。次第に激しさを増し、最後には歯の隙間から喉の奥の唸り声が漏れ聞こえてくるくらいまで、激しく奥まで突き上げ、私のお腹に手のひらを押し付けて自分のモノが中で暴れ回る感触を確かめながら、フィニッシュしました。

「痛かったですか?」

私は濡れた睫の間からケンイチ君を見上げました。

「んーん、愛してる」

「愛してます。僕も」

貴方の愛と私の愛は、意味が違う、重みが違う、…と思いながらも、私は自分の頬が笑むのを止められませんでした。良いのです。どんな結果になろうと、私が許すから。




続く

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