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説明不要ってこと?

 朝、私はいつもより早く起きた。

出勤前にどうしてもしたいことがあったからだ。

昨日買った雑誌で一目惚れしたスカーフで髪を後ろにまとめたモデルさんのページを探しながら鏡の前へと向かった。


そして、そのモデルの写真をジーッと見つめながら見様見真似でスカーフの代わりに髪を止めるシュシュで代用して自分の髪を後ろに束ねた。


『うーん……なんか違う』


私はシュシュを外し鏡の中の自分の黒い少しペタッとした猫っ毛の髪を撫でた。


写真のモデルさんののような茶色い綺麗な髪色ではない事はわかってはいるけれど

それ以前になんというか髪質が違う感じがする。

私は雑誌のその写真の隣に書いてある説明文に見入ったが

着ている服や髪のスカーフのブランドや値段の記載はあるが髪型についての説明が全くない。


私はため息を吐いて本を閉じて、いつものように髪を一本にまとめてリビングの方へと戻った。


髪型の説明がどうしてないんだろう。

いや、説明不要って事だろうか……

世の女性はこの写真を見れば誰もがその手順が手にとるようにわかるような。

私が会社でパソコンを起動して何も考えずにエクセルを開いてしまう程に知っていて当然の知識なのだろうか。


……本当に。


本当にこういったお洒落なことの知識が無さ過ぎて不甲斐ない。

こんな事を他の人に今さら聞いたらとても恥ずかしいことかもしれない。


けれど、入社したての頃岡田先輩がよくいってた言葉を思い出す。


『わからない事を聞かずに、そのままにしておくのはもっと恥ずかしい事だよ』


……そうだ。わからない事をわからないままにしておくことの方がもっと恥ずかしい。


私は慌てて会社に行く準備を済ませて家を出た。


そして、家の前のバス停ではなく近くのコンビニのバス停へと走った。





『——ハァハァ、千佳ちゃんおはよう!』


突然私に話しかけられて彼女は驚いて振り返った。


『びっくりしたー…… あっ、美咲さんおはようございます』

そう言いながら彼女は耳につけているイヤホンを外した。


『実はね、千佳ちゃんに聞きたい事が——』


『——えっ、可愛い! 美咲さんネイルしたんですか!?』


彼女は目を輝かせて私の手を見つめた。


『うん、昨日ね人生で初めてしてみたんだ。 あとね、千佳ちゃんにどうしても聞きたいことがあって』

そう言って私はバックの中からファッション雑誌を取り出した。

彼女は私の隣で雑誌を眺めた。


『あー、スカーフでアレンジするヤツですかー』


『今朝ね、ちょっと試してみたんだけど全然出来なくって』


『美咲さん、髪真っ直ぐだからこんな感じにするなら少しコテで巻いてからの方がいいかもしれないですね』と彼女は私の髪の毛先の方を触りながらそう言った。


『コテ持ってないなぁ……』と私は雑誌を見ながら呟いた。


『アイロンとコテは必須ですね』と彼女は真面目な顔をして頷く。


私は彼女の顔を見て『そうなんだ』と頷いた。


『コテとかアイロンとかってすごく安く売っていたりするんですけど、その分使い勝手が良くなかったり……割と奥が深いんですよね』


『へぇー……なんか難しいそうだなぁ』と私は眉をしかめた。


『もし空いてる日があれば一緒に見に行ってみます?』

と彼女は少し首を傾げて私を見つめた。


『えっ? いいの?』と私は嬉しさのあまり少し大きい声でそう言った。


『もちろんです』と彼女は顔をクシャッと緩ませて微笑んだ。


それから私たちはバスへと乗り込んだ後にお互いの連絡先を交換して、早速いつ二人で買い物に行こうかという話になった。


『美咲さん、今日の夕方とかって空いてます?』


私は目線をズラして何か予定がなかったかどうか少し考えた。


『うん、夕方の6時には仕事終わるからそれからなら大丈夫だよ』


『じゃあ、6時過ぎに駅前に集合で!』


そして彼女は私の一本に縛った後ろ髪を見て

『ちょっと後ろ向いてもらっても良いですか?』と言った。


私は彼女に背を向けるように後ろを向くと彼女は私の髪のシュシュをはずして慣れた手つきで後ろ髪を何束かに分けて、その束をを根元の方で何度かねじってシュシュを付け直した。


『スマホで今見せますね』と言って彼女はスマホで私の後ろ髪を撮り、スマホの画面を私の方へと向けた。


『えっ、何これすごい……』


『美咲さんリアクションがいいなぁー』と笑って彼女は続ける。

『髪をねじって後頭部の方にボリュームを出したんです。 というか美咲さんの髪すごく綺麗な黒髪ですね』


『うーん、私の髪細くてすぐペタッとしちゃうし…… どうなんだろうね』と私は少し照れて笑った。


『いいと思います黒髪。 白いウェディングドレスにキレイな黒髪はとっても映えます!』


『千佳ちゃんって本当にドレスとか好きなんだね』と私は笑った。


『はい、大好きです。 私、誰かと話していたりする時もこの人はどんなドレスが似合うかなぁとかいつも勝手に考えちゃったりするんです。

この人は少しふっくらとしたお姫様みたいなドレスかなぁだとか……

美咲さんは初めて会った時からマーメイドラインのドレスが絶対に合うだろうなぁって思ってました』


『マーメイドライン?』と私は首を傾げる。


『すごく着る人を選ぶドレスなんです。 体にフィットするような細身のシルエットに裾が人魚の尾ひれのように伸びてるんですよ』


『へぇ、だからマーメイドラインっていうんだね』と私は頷いた。


『はい、私が一番好きなドレスです。 私がこの人は似合うだろうなーって感じる体型の人もそんなにいないんです。 だから尚更、美咲さんには是非着てほしいなぁって思ってるんです。 で、その時は出来れば私がスタイリストで付きたいです!』


そんな事を話しているうちにバスは駅前へと到着した。

バスが停車すると私は『じゃあ、またあとでね』と彼女に手を振ってバスを降りた。

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