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魔術師とは悔恨の至れり  作者: まるけん
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少数精鋭

基本的に知らない電話番号には出ない主義だが、志崎さんなら別だ。

「はい、もしもし。時恵です」

「おう、トキか?志崎だ」

 番号通り、電話を掛けてきた相手は志崎だった。

「どうしたんですか、いきなり?」

「トキって確か目黒の私立高校だったよな?」

「そうですよ」

「それは、ちょうどいい」

 スマートフォンを耳に当てながら靴を履き替えて玄関を出る。

「何がちょうどよいいんですか?」

 校門前まで歩くとそこには見慣れた四人が立っていた。

「おーいたいた。おーい」

電話の声と身振り手振りが連動している。

さらに他校の制服を着ている三人は、色葉に綾香、一樹だ。

「何やってるんですか?」

色葉が学校を見渡す。

「へー綺麗な校舎ね」

何かの嫌がらせだろうか。こんなところ、学校の知人なんかに見られたどうしてくれよう。

「とりあえず端に寄ってください」

 4人を端に寄せる。

「で?改めて何の御用ですか?」

 志崎は、カバンからファイルを取り出すと、私に見せつける。

「そりゃあ、もちろん仕事だよ。一樹、トキに説明よろ」

 一樹が前に出てくる。

「それでは説明しよう!拙者たちが、調査した失踪事件は全然解決に進んでおらず、志崎氏は、路頭に迷っておった。さすれば、そんな時!金曜日にまたもや似た事件が起きた!しかも現場はなんとトキ氏の学校!それを今朝気づいた志崎氏は、急いで上司に担当の変更してくれと頼み込み。そして暇そうな人を集められるだけ集めた結果、この4人になった訳でござる」

 脳裏に高橋百合の陰影が入り込む。

 いや、まさかそんな事はないだろう……。

 色葉が一樹にチョップを入れる。

「別に私は暇ではないんだけど」

「お嬢、間違えました。たまたま時間があった協力者です!」

「それ、あまり変わってないような気がするんだけど。トキ、今回は場所も場所だけに少数精鋭ってことよ。もちろんトキも含めてね」

 後ろで綾香が申し訳なそうに頭を下げる。

「わかってるよ、お嬢。だけどどうやって校舎内に入るつもりなんだ?志崎さんはともかく、多分、俺も入れてくれないと思いますし。ましてや他校の生徒が入るのは無理だと思うが」

 色葉は、スクールバックから後端に赤い宝石が付いた短い木製の棒と、薄茶色の石が入った指輪を取り出す。

「もちろん、そこはしっかり魔術師らしくね。トキって阻害系魔術は使える?」

「使えるけど……。一人にだけなら」

 色葉は、少し考え込む。

「じゃあ、私が一樹と綾香と自分にかけるから、トキは、自身にお願いね」

 さすが『神童』と呼ばれるだけある。

私とは、次元が違うことを改めて思い知らされた。

「すみませんお姉様。お願いします」

 色葉は、綾香に笑顔を送る。

「綾香、そんな事気にしなくていいのよ。じゃあ、始めるよ」

 色葉は指輪を着け、棒を持ち直す。

「ダス、マイネ、アウゲン、ゼーエン、ディッヒ」

 指輪から様々な模様と文字が書いてある円形がホログラムのように投射される。

「ウント、シュリースト」

 3人にまるで半透明な布が掛けられたように薄くなる。

「これで一般人には、視認できなくなったはずよ」

 見とれている場合ではない。俺もやらなくては。

 カバンから魔導書を取り出し、空気を吸って詠唱を始める。

「彼は往往(おうおう)にして即興(そっきょう)(うしな)い、彼女は往往(おうおう)にして洞察(どうさつ)を失う。顕在(けんざい)()よ」

 私は自分の手が半透明になったことを確認する。

「じゃあ、行きますか」

 志崎は、校門を抜け来賓用の受付に寄る。

 私たちはその後をついていく。

「どうもすみません。私、刑事の志崎信と言うものなんですが」

「身分を証明できるものはお持ちですか?」

 志崎は、警察手帳と運転免許所を見せる。

「ありがとうございます。これを首にかけてください」

 志崎は、関係者と書かれた吊り下げ名札を1枚受け取る。

「どうもありがとうございます」

 志崎は、吊り下げ名札を首にかけて受付を後にする。

 私は、本当に視認阻害ができているのか確認するために、志崎が行った後もしばらく受付に立ってみる。

「……」

事務員は何も気づかず窓口を閉める。

「どうだ?ちゃんと効いてるか?」

 と志崎が小さい声で確認をする。

「大丈夫です……」

 と私も同じように小さな声で返事をした。

「それと、トキ一つ聞いて起きたいことがあるんだが」

「はい?」

「職員室ってどこ?」

 なぜ事務員に聞かなかった。

「案内するのでついてきてください」

 階段を上り職員室に向かう。

「それにしても本当に綺麗だな。おじちゃんが高校生の頃なんて、廊下の床は木製で、良く軋む音がしていたんだよ。今の高校生は楽しそうでいいなぁー」

 志崎懐かしそうに独り言を呟く。

 そうこうしているうちに職員室にたどり着く。

「そこが職員室です」

「案内ご苦労。俺がドアを開けたら先に入ってくれ」

「了解です」

 志崎は職員室のドアをノックして開ける。

「どうも、お忙し所すみません。刑事の志崎信です」

 志崎が名乗っている間に職員室に侵入する。

「これは刑事さん。どうぞこちらに」

 出迎えたのは校長だった。

 志崎は、案内された席に座る。

 机には、来客用のコーヒーが湯気を出していた。

「さっそくですが、現場に案内してもらいたいのですが」

「それは構いませんが監視カメラの映像とかはご覧になりませんか?」

「大丈夫です。以前担当の者がデータのコピーを持っていたので、その際に拝見させてもらいました」

 志崎は、机の前に置いてあるコーヒーを一気に飲み干す。

「では私が案内させていただきます」

校長は、自ら席を立ち案内する。

私たちもそれに合わせて職員室から脱出する。

「2階の女子トイレになります。どうか生徒をお願いします」

「わかりました。全力を尽くします」

 校長は、職員室に帰っていった。

 2階の女子トイレ。1年生が使うトイレだ。そして被害者は生徒。1年生の女子トイレで生徒が消えた……。

 さらに嫌な予感がよぎる。

「トキ、お嬢。もう解いてもいいぞ」

 色葉と私は、視認阻害を解く。

 私は息を整える。

「志崎さん、もしかして被害者の名前って『高橋百合』とかって名前じゃないですよね?」

 志崎は、カバンからファイルを取り出し見る。

「よくわかったな。もしかして学校の有名人?」

 色葉は、顔に手を当てため息を付くと、志崎に注意をうながす。

「志崎さんデリカシー無さすぎですよ」

 まず担任にあんな事を聞かれた時点で心のどこかで気づいていたのかもしれない。

 もしかしたら高橋百合がこの失踪事件に関わっているのではないかと。

しかし、私は担任に『高橋さんに何があったんですか?』の一言も言えなかった。

 そうだ。逃げていたんだ。ただし言ってしまえば彼女は、高橋百合は、勝手に失踪したのだ。多分これは私のせいではない。多分これは私には、防げなかった。

 と考えると楽なのだが、罪悪感が残る。

「ここ最近知り合ったクラスメイトです。大丈夫です。行きましょう」

私達は、女子トイレ入る。

「いや~女子トイレとか、ほうほう」

一樹は、興味深々に入っていく。

「ちょっと一樹!変なことするんじゃないよ」

「分かってますよ~お嬢~」

 中は私立高校だけあって綺麗にされている。

「じゃ、それぞれよろしく」

 調査を開始する。

 一樹は、一番奥から扉を片っ端から開けて試験管に入った液体を垂らしていく。色葉は、何やら地面を触って霊道などを探っている。

「妖精さんいませんかー?」

 さすがにトイレにはいないだろうが綾香も妖精の類を探してくれている。

「ん~……」

 志崎は資料と、にらめっこ中。

 私は、何となく洗面台の前に立つ。

 白くて汚れ一つない洗面台。手を蛇口に近づけるとセンサーが反応して自動で水が出る。

 しゃがんで地面と洗面台の裏を見るが特に怪しい札や文字などはない。

 仮にあったとしても、清掃員が掃除してゴミ行きか。

 立ち上がり鏡を見る。

鏡は、綺麗で水垢ひとつない。

「ここも反応がないでござるな」

 一樹が最後のトイレ個室扉を開ける姿が鏡に反射して見える。

 なんとなく、鏡に反射した個室の中に視線が移動する。

女子トイレの中は、もちろん綺麗にされて男子の個室と違って鏡が備え付けられている。

「ん?」

よく分からないが、ちょうど見ていた個室あたりを反射してる鏡の部分が小さく曇ったようにみえる。

目にゴミでも入ったか?

目をこするがその曇りは、少しずつ大きくなっていく。

顔を近づけて観察してみる。

よく見るとその曇りは何かの形になっており、曇りが大きくなっていくのに比例して、形が鮮明になっていく。

どんどん、どんどんと曇りは大きくなり形が鮮明になっていく。自分の顔ぐらいに大きさになった所でなんの形がはっきりしてきた。

手だ、まだはっきりとは言えないが手がこちらに近づいてくるように見える。

やがてその手は鏡を超えてきそうだと思った刹那。

鏡から手が飛び出してきた。

「のわ!?」

私は、反射的に左腕を前に出す。

「つめっ!」

左腕が掴まれた。

 掴まれた左腕が凍るのではないかと思うぐらい、とても冷たく感じた。

「んっつ!」

 手を振りほどこうとするがビクともしない。それどころか鏡の中に引きずりこもうとする。

私は腰を下ろして体重をかけ、抵抗する。

「ちょっとトキ!?」

 色葉がいち早く気づいた。

 しかし、色葉が私の体に手を伸ばそうとした瞬間。鏡からもう一本の手が出現し私を引きずりこんだ。


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