予感
2015年4月17日 4日後の朝
学校に行く通学路にもそろそろ見慣れた朝。
しかし、学校に着くなりある異変に気付く。
あれ?なんだが足りない。
教室を見渡す。いつも同じように小さなグループで談笑している男子グループ。物静かに本やスマホをいじってる女子。
「おはよう、時恵」
「おはよう、スギ」
と高橋百合の経由で仲良くなったクラスメイト、スギこと杉林連太が挨拶をしてくる。
「あっ」
高橋百合がいないのだ。
「スギ、高橋さん知らない?」
「いや。確かにいつも早く来ているのにいないね。まぁ遅延でもしてんじゃね?」
自分のスマホを見るが特に通知は来てない。
さすがに自分から送るのは図々しいというか、馴れ馴れしいかなと思い躊躇した。
人には、色々な事情があるだろうし。
私はそっとポケットにスマートフォンをしまう。
結局スギの言う通りにはならずに、高橋百合は、学校に来なかった。
帰りのホームルームで私は空席になった椅子を眺めながら、やたらヤンキー風な担任の話を聞き流す。
「今日は、緊急の職員会議があるから部活動も中止になった。だから寄り道せずに帰るんだぞ。それじゃ帰りのホームルームを終わり。あと加々美、あとで職員室に来るように。以上」
「え?」
聞き流しながらも自分の名前と、職員室のワードはしっかりと聞き取った。
それぞれの生徒が下校していく中、スギが煽りにくる。
「時恵~お前どんな悪さしたんだ?」
「何もしてないよ」
「本当か?お前も隅に置けないなぁ」
「うるさいな。ほら友達待ってるぞ」
「お、本当だ。じゃな時恵。幸運を祈る!」
スギは、敬礼すると教室から出て行った。
「はぁ、職員室行くか」
私は、一階にある職員室に向かう。
職員室前のドアで一度止まる。
なぜか、ここに来るといつも変に緊張する。
「ふぅー」
と小さく深呼吸をすると、ノックをしてドアを開ける。
「失礼します。1年C組の加々美時恵です。」
すぐに担任との目が合う。
「加々美、とりあえず面談室行こうか」
これは、本格的に怒られるパターンだな。
私は覚悟を決め面談室に入る。
「すまんな、わざわざ時間を取らせてしまって」
「いえいえ、全然大丈夫です」
担任は、メモ帳を開く。
「一つ聞きたいんだけど、土日休みで高橋と遊んだりしてないよな?」
ここで高橋百合の名前が出て来たことに、嫌な予感が脳裏によぎる。
「いえ、特に遊んだりしていませんが」
「そうかそうか」
担任は、頷きながらメモを取る。まるで事情聴取みたいに。
「最後にスマホでやり取りした履歴なんかせてくれるかな?」
スマホを取り出し高橋百合とのやり取りした履歴を見せる。
「一番新しいのは、金曜日に時間割を教えたときです」
担任がメモを取る。
「おし、わかった。ごめんな、わざわざ時間取らせて。気を付けて帰るんだぞ」
「はい、失礼しました」
私は、先生より先に面談室を出て、下駄箱に向かう。
既に校舎には、生徒の姿がなかった。
担任の意味深な行動は、どうみても高橋百合の身に何が起きたとしか考えられない。
私は、スマートフォンを取り出し、高橋百合に電話を掛けようとすると、良いタイミングで誰かから電話が掛かってくる。
この番号は……。志崎さんか。