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魔術師とは悔恨の至れり  作者: まるけん
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魔導書

「時恵様。お帰りなさい」

 玄関のドアを開けるとちょうどエリが掃除をしていた。

「ただいま、エリ」

「今日も地下室ですか?」

「そのつもり」

「分かりました。夕餉の用意ができましたら、お呼びに行きますね」

「ありがとう」

 私は、いつも通りにそのまま地下室に向かう。

 地下室は、古めかしい机や棚などが、所狭しに置いてある。

さらに机の上には試験管や宝石、色褪せた紙などの物が散乱していた。棚の中も同様に古めかしい本や実験器具などで埋まっている。

はっきり言って汚い。

 だが、私は、気にせずに進む。

 一番奥には、唯一綺麗で整理された小さな机が置かれている。

ここが私の所定位置だ。

 机の上には、デスクトップ型のパソコンとスタンドライトと、そして一冊の古くて少し厚みがある鍵付きの『魔導書』が置いてあった。

 私は、床にカバンを置きブレザーを椅子に掛け、スタンドライトとパソコンの電源を入れる。

 パソコンが起動中に古い本棚から次々と必要な物を抜き出していく。

「おもっ」

 怪しい足取りで小さな机に資料を運ぶ。

「ふぅ~」

 と本を置くなり息を吐く。

 椅子に座り、机の横にある引き出しからノートを取り出すと、床に置いたカバンから本と文房具も取り出す。

「さて、始めるか」

 まずは、鍵を解除する。

 カバンから取り出した本を手に取る。

この本も実は、魔導書だ。ただし安価なレプリカではある。

息を整えて詠唱を開始する。

「私は(だい)行者(こうしゃ)であり継承者(けいしょうしゃ)

 手に持っている魔導書が光り出す。

「それ(ゆえ)私は所有者(しょゆうしゃ)である」

 魔導書は光ながら風が吹いてるかのようにページが(めく)られていく。 

「銀の鍵が具現(ぐげん)槍玉(やりだま)()げる」

 鍵付きの魔導書が光始める。

未曾有(みぞう)の穴が変遷(へんせん)(かい)(じょう)する」

 鍵付きの魔導書の鍵穴が音を立て半回転し、包まれた皮のカバーと鍵穴が外れる。

「昨日の続きは、145ページと」

 私は魔導書をパソコンや古い書物を駆使して解読し始める。

 解読している魔導書は、今は亡き私の父が祖母からもらった物らしい。それが私に引き継がれ今に至る。

解読している理由は、もちろんどんな魔導書なのか気になるという点もある。

しかし私の本音は、レプリカの魔導書よりかは幾分マシだろうと思い、解読して使えるようにしたいからだ。

だが、原語も滅茶苦茶(めちゃくちゃ)。ホコリ臭いし、表紙はボロボロ。挿絵も何を描いてあるのか、わからない。そしてこの700近くあるページ数。なので趣味程度に思い立ったらしている感じだ。要は暇つぶし。

肝心な内容は、物語なのだが、所々に契約書のような文面もありさっぱりわからない。

 解読しては、ノートに書き。解読してはノートに書く。

そんな事を繰り返し続ける。

コンコンと奥のドアが鳴る。

「エリか?」

「はい、準備ができましたので」

私は、古い立て掛けの時計を見る。

時計の針は8を指している。

「もう二十時か。少し待ってくれ、すぐ行く」

「わかりました、私は上にいますので」

とエリが階段を上る音が聞こえ、消えた。

「ふぅ〜。片付けよう」

私は、パソコンの電源を切り、本を元の位置に戻す。

魔道書に皮のカバーと鍵穴をつける。

私が普段使っている魔道書のレプリカを手に持つ。

「私は所有者。銀の鍵と銀の穴が互いに交差し、全ての約束の守護になれ」

魔導書の解錠を行った時と同じ現状が起きると。カバーは、より魔導書に密着して鍵穴が逆半回転する。

「これで一ページかぁ……」

思わずため息を出しながら、地下室を後にした。


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