桃太郎無双
むかし、むかし、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。彼らは今日も元気に喧嘩をしていました。
「おいばあさん!お前が芝刈りと洗濯をやれ!」
「嫌じゃ嫌じゃ!わしは何もやりとうない!」
「はあ?そんぐらいやれよ!」
「無理じゃあ……せめて洗濯だけにさせておくれ」
「しょうがねえなあ……」
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川でをしていると大きな桃が流れてきました。おばあさんが両手で抱えないと持てないような大きな桃です。
どんぶらこ。どんぶらこ。
「ほう!この桃はなんだろうね。おやつ代わりにでも食べようかしら」
おばあさんは桃を手に取り、口に入れようとします。すると桃の中から突然声が聞こえてきました。
「食べるな!おばあさん、ここはパカッと割るところだろうが?!」
おばあさんは臆せずに言い返します。
「私にはわからないねえ。それよりも食べてもいいかい?このお喋りな桃さんを」
「だめだ!カニバリズムは趣味じゃねえ」
「意味が分からないねえ!そうだ!せっかくだしこの桃、おじいさんにも見せてあげるかねえ」
おばあさんは桃を家に持ち帰りました。そしておじいさんにこのお喋りで大きな桃を見せてあげました。
「ただいまじいさん、川で面白い桃を見つけたから見ておくれや」
おばあさんの言葉に桃はすかさず反論しました。
「面白くないやい!それより俺ををパカッと割ってくれよ!」
おじいさんは桃が喋っているのを見て気持ち悪がります。
「なんじゃこの薄気味悪い桃は!さっさと捨ててこい!」
「気味悪くねえよ!それよりこの桃を割ってくれ!俺を出せ!」
おじいさんは桃とやり取りをしているうちにふと気が付きます。もしかしたら桃自体が喋っているのではなく、桃の中に何者かが入っているのではないかと。
「おうおう。とりあえず開けてやるよ、おらっ!」
おじいさんは桃にナイフを振り落としました。するとナイフが桃に触れた直後、パカッと真っ二つに割れたのです。そして真っ二つに割れた桃から元気な男の子が飛び出してきたのです。
おじいさんは全て察したかのように呟きます。
「ふっ、やはりな」
「はえ?じいさんや。これはどういうことかえ?」
「おじいさん、感謝するぜ。俺をこの桃から出してくれてありがとうな」
「いいってことよ。ところで坊主、お前はなんで桃なんかに閉じ込められていたんだ?」
「俺は……そうだな、追放されたんだ。あの村から」
すると男の子は語りだしました。以前は村人を守るために戦っていました。しかし"強すぎる"が故に桃の中に封印され、川に流されてしまったのです。話を聞いておばあさんは思わず泣いてしまいます。
「かわいそうに……その強さだって村の人のために使ったはずなのにねえ。なんじゃ、住むところがないならわしたちの家に住むかえ?」
「いいのか?大変ありがたいが、本当にいいのか?俺なんかが住んでも」
「いいよいいよ、代わりに私たちの家事や仕事を手伝ってくれれば十分さね。じいさんもいいかい?」
「ふん、好きにしやがれ。俺たちの仕事は厳しいぞ。それと坊主、お前の名前はなんという?」
「俺はもう名前は捨てた。あの村にいた俺はもういない」
「そうか、それならばお前の名前は桃太郎だ。桃から出てきたんだしおあつらえ向きだろう?」
「ええ……」
桃太郎はおじいさんのネーミングセンスに飽きれるのでした。
そして三人は同じ家で暮らしました。おじいさんは山に芝刈り、おばあさんは川に洗濯、桃太郎は料理に皿洗い、洗濯物干し、採取、狩猟をしました。たまに休日をとり、村に買い物に行くなどして楽しく過ごしていました。
桃太郎もだんだん村人と親しくなり、こんな生活も悪くないと思うのでした。
しかしそんな平和は突然壊れてしまいました。ある日、村人の一人が大慌てで桃太郎たちの家に来るのでした。
「おい!じいさん!ばあさん!桃太郎!大丈夫か?!鬼はこっちにきていないか!」
「なんだって?鬼がきただって?村は大丈夫なのかえ?」
「ああ!襲われたけど衛兵たちが守ってくれた……。みんな命は無事だった」
桃太郎は皆の無事を聞いて安堵しました。
「それはよかった、なら大丈夫だったんだな?」
「しかし命こそ無事だったが、それ以外のすべてが奪われてしまった……。悔しいよ、俺は」
「そんなことが!許せない!鬼が略奪していったものってのは……」
桃太郎は火山のごとく憤怒しました。自分たちにしんせつにしてくれた村人が酷い目に合うのは理不尽だと思います。つづけて村人は被害について話しました。
「文字通り人以外すべてさ。建物は壊されて、作物は貯蓄は全て奪われ、田畑は焼かれた。金品も根こそぎ盗られてしまった」
「力が強いからってそんな横暴が許されてたまるか!村人さん!俺が鬼を叩きのめして全てを取り戻してきます!」
「いいのか……桃太郎は強いからもしかして鬼にも……」
「任せてください!じゃあ早速鬼のもとに向かいましょう!」
「待ちなさいや!桃太郎やあ」
おばあさんが鬼退治に向かう桃太郎を引き留めました。
「この黍団子をもっていくがいいかね、昼ごはんにでもしておくれ」
「ありがとう!おばあさん、じゃあ俺は今からいくよ。全てを取り戻しに」
「それとこれ、一家は秘伝のソースをつけて食べるんじゃよ」
こうして桃太郎は鬼退治に向かうのでした。
そしてしばらく歩いていると犬に出会いました。
犬は桃太郎に話しかけます。
「なんかいい匂いがするんだよな~、君、この美味しそうな匂いの出所を知らないかい?」
「もしかして、これのことか?」
そういいながら桃太郎は黍団子を取り出しました。
「いや、これもいい匂いだけどなんか違う気がするんだよなあ。もっと弾けるような濃厚な匂いの」
「そうするとこの秘伝のソースか?」
そういいながら桃太郎はマヨネーズを取り出しました。実は桃太郎はマヨネーズを自作していたのでした。
「おおお!これだワン!俺に少し舐めさせてくれないかい?何でも言うこと聞くからさ!」
「じゃあ鬼退治の手伝いしてくれ」
「わかったワン!」
さらに道を歩くとサルに出会いました。サルも桃太郎に話しかけます。
「おいら、君ほど良いにおいがする人を見たことがないよ!君、すごい料理人なんじゃない?」
「俺は料理人ではないぞ、匂いってこれのことか?」
桃太郎はマヨネーズを取り出します。サルはマヨネーズの匂いにひれ伏しました。
「やっぱり君はすごい!すばらしい料理人じゃないか!おいらを弟子にしてくれ!」
「鬼退治手伝ってくれたら考えるよ」
こうしてサルの弟子ができました。そしてマヨネーズつくりの師匠になりました。
さらに道を歩くと道端に雉を見つけました。
「ちゅんちゅん!私、マヨネーズを食べると覚醒できるちゅん!マヨネーズくださいちゅん!」
「じゃあ鬼退治手伝ってくれ」
「任せるちゅん!じゃあいただきますちゅん」
こうしてマヨネーズを食べて雉からフェニックスへと覚醒しました。
犬、サル、フェニックスを連れた桃太郎はやがて鬼が住む島、鬼ヶ島へとたどり着きました。
「ようやくついた……ここからが俺たちの戦いだ。」
こうして一人と三匹は鬼ヶ島へと突撃しました。そして鬼ヶ島の奥へと進んでいきます。やがて鬼たちと出会います。
「おい!我が名は桃太郎!お前らが奪ったものを取り返しに来た!行くぞ!」
しかし桃太郎の口上を聞いても鬼たちは歯牙にもかけません。
「たかが人間ごときに俺ら鬼族を倒せるわけないだろう、遊んでやるよ」
「それはどうかな」
桃太郎は刀を抜刀、居合切りをしました。桃太郎の居合切りは空間すらも切断します。勿論鬼たちもスパッと切られていきます。
「な!お前、ただの人間じゃないな?その刀の威力、おかしいだろ……」
鬼たちは動揺してしまいます。
「いいや、俺はただの桃太郎さ。まだまだ刀も未熟。俺の刀が弱すぎておかしいってのは俺が一番よくわかってる」
「「強すぎるって意味だよ!!!!」」
鬼も犬もサルもフェニックスもツッコミます。
「そうさ、知ってるよ。俺は強い。だからお前らをいつでも倒せる」
桃太郎のジョークは大変わかりづらかったのでした。そんな桃太郎は刀を空に振りました。
それだけで他の鬼たちも残らず斬られていきました。桃太郎は一振りで周囲に斬撃を飛ばしていたのでした。
犬とサルとフェニックスは思いました。
(俺たちいらなくね?)
しかし鬼を倒せたのは喜ばしいことです。平和を取り戻すことができたのですから。村人たちも大喜び。桃太郎もおじいさんやおばあさんと一緒に幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
読んでいただきありがとうございました!
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