モリシャス・イール・テンペルドの目撃
千文字制限悪役令嬢もの、番外編です。
拙作に頂いた感想から、新たなインスピレーションが降りてきたので、勢いで書いてみました。
これが初という方は、是非シリーズの方もご覧ください。おそらくより楽しめると思います(個人の感想です)。
女の子同士の仲睦まじい様子をお楽しみください。
「……なのですよ」
「そうなのね」
あら、聞きなれた声。
声の方に目をやると、アウグスとマインがテラスでお茶を……。
「!?」
その向かいに座ってる男生徒二人!
確か子爵家のキース・トール・アーエンと、男爵家のラクター・モーブ・キヤラだったわね。
どういう事? 恋? 恋なのかしら?
「その香りの紅茶なら、淡い口溶けの卵白菓子を合わせると良いのではないかしら?」
「そうですね! そうすればお菓子の甘さを味わいながら香りも楽しめます」
「その茶葉、少し分けてもらえる? 私も試してみたいわ」
「勿論です」
あら? あらら? 二人で話してるわ? キースとラクターは何をしているのよ!
「……ぁ、ぁの、その、紅茶……」
「お湯の温度を高くしたら、香りは強まるかも知れないわね」
「でも私、熱いのが苦手なので、飲む頃には香りが飛んでしまうかも知れません」
「確かにそうね。難しい問題だわ」
頑張りなさいよ! まぁこの柱の陰からじゃ唇の動きで読み取るしかない小声、話に夢中になっている二人の耳に届かせるには足りないか。
あら、鐘が鳴ったわ。もうこんな時間なのね。
「今日は楽しかったですわ。またお誘いくださいね」
アウグスがそう言って立ち上がる。
「あの、ありがとう、ございました」
マインも合わせて立ち上がる。
「あの、どうも……」
「こ、こちらこそ……」
真っ赤になって俯く男生徒二人。もう、ここでしっかりしないと、次に繋がらないじゃない!
「そうだ、アウグス様。紅茶にお砂糖の代わりにジャムを入れると、果物の香りが紅茶に移って美味しいというのを聞きました。今度試してみませんか?」
「良いですわね。それならば紅茶は、味や香りにあまり特徴が無い物を選びましょう」
仲良く話をしながら立ち去る二人。
ほら見なさい! 振り返りもしないじゃない!
残された男生徒は、さぞや落ち込んでいるでしょうね……。
「お二人の仲睦まじい会話を間近で聞く事が出来た……!」
「まるでビュティ・フールの絵画を見た時の様な感動が……!」
こ、志が低い! 二人をお茶に誘う時点では、あわよくば交際のきっかけを、とか考えていたんでしょうけど、話に入れないから眺めるだけで満足したって事かしら。
アウグスもマインも大切なお友達。二人にも幸せになってもらいたいものだけど、あの仲良し全開の空気を突破できる男の人、いるのかしら?
……心当たりはあるじゃない! そうと決まればまた八人でお茶会を開きましょう! 可愛いウィニーの為にも!
読了ありがとうございました。
この悪役令嬢ものは、キャラが実に動かしやすく、また千文字制限なので、ネタを思い付いたらさっと書けると言うのが有り難いですね。
書籍化からは一番遠いところにいる気もしますが(笑)。
お気に入りの話なので、今後もネタが降りて来次第また書けたらと思います。
その時はまたよろしくお願いいたします。