見えざる の地図Lv87
はっと気がつくと俺は冒険をしていた。
誰もが求めている勇者。誰も求めていない悪夢。
誰も止めていない現状。
俺は打開したくて仲間と世界の端から端まで歩いた。
地獄と平和の橋になるまであと一歩。
中間に位置する洞窟の前。
平和と地獄の時差ボケに眠気づいていると仲間が言った。
『本当に、倒せるのでしょうか』
『倒すの間違いだろ』
地図を握りしめた時間が無駄にならないように倒す。
それだけで良い。どんなに血生臭い願いか。
「そうだった、倒すのです」
四人も居れば倒せる、だって。
「四って相手からしたら不吉な数字だからな!」
「こちらとしても不吉ですけど」
「いや、俺は一人だと思ってるから」
「はっ?」
誤解を解くために言葉を足す。
「一人の奴が四人集まっただけ、全員がそう思えば相手にしか不吉は届かない」
「ちょっと何言ってるか分からないです」
「分かれよ」
気の持ちようで何か変われば世界も簡単に変わる。
「久々に、横に並んで息を整えよう」
初めて大きなことを成した時。
対等に拍手されるように俺達は並んでいた。
いつだって貰う感情は一緒だ。
「こわい」
「こっわ」
「ふるえる」
「恐ろしい」
俺は両手刀で仲間の意識を跳ね飛ばす。
パタリ崩れる二人。残った一人が気づく。
「な、なにしてるんです?」
「一人で行く」
俺は残りも寝かせて洞窟に足を踏み入れた。
諸悪の根源は思ったより深い。
道中を走り抜けるにも一苦労。一振り。独り言。
『まだいける』
俺が跳ねる度に鎧が浮く。着地と同時にカチンと落ちる。
剣を降ればそんな音も声に消され。
厚塗りの湿った熱をこじ開けて進んだ。
『来たか、勇者もどきの英雄譚』
辿り着いた世界は一抹と全て。
「英雄譚は繋がらない」
「分かっているではないか」
一抹の希望と全ての絶望。
結末と閉幕。
「英雄を語るには強敵が要る」
「その一つを消してくれよう!」
振られた闇の刃を血で振り返す。
散った光の欠片は剣の欠けらもない。
『――英雄は語らない』
剣に込めた魔力がバチバチと黄色紅葉に散る。
一点に収束した光の速さは残像を残す。
焼け付いた火種は仮初を擦って燃える。
『語る相手が居ないからだ』
剣先の落雷が反響する。
ビシャンと弾けた火花より先に白いハンドが強敵を包み潰す。
光が抜けた剣は右手から滑り落ち、垂直が下を触る度に塵へ。
膝も落ちた、力も落ちた。そして相手も落ちた。
『今のは痛かったぞ……』
はずだった白い光が千切れ解かれていく。
「なんだと」
「文字通り、消えると思っていたが、本当に消えるのはお前のようだ、英雄」
黒い先から抜けた漆黒が胸を突く。
『っ……』
「仲間を、つれてくるべきだったな? 犠牲は多い方が良かろう」
という夢を見たのだ。
『本当に、倒せるのでしょうか』
『俺達なら倒せる』