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「この話はフィクションってことで!」  作者: 成
1章 既に始まっていた。
9/24

「Fiction.6 選定」

「ここがヘンテイのばひょ」


──長い階段を上がってきて、ついた場所には。不思議な威圧感を感じる大きな扉。

 ……異世界の城の扉がそういえばこんな感じだったっけか。


「ミィミが案内できるのはここまで。

 ここから、はきは二人でふふんでほひいの」


 そういって、フゥコは腰に下げた虫とりカゴのようなものを開けると。気絶しているゲンさんとバイオリンが現れた。


「……フゥコは?」

「ミィミは行かなくちゃいけないところがあるから……」   


 ……そうなんだ。


「でも、できる限りのてだふけはひておいたから。きっとダイビョウブ」

「そっか……ありがとう」

「ううん。きにひないで」


 フゥコはそういうと謎のわっかを取り出して……フラフープを始めた。

 (……もうツッコまない)


 そんなことを考えている隙に。

 いつの間にかフゥコは消えていた。


 この不可思議な現実は。

 まだ異世界にいるんじゃないか……そう感じさせてくる。 


 不思議な気分だ。


 ……それはそれとして。気絶したゲンさんをどうしようか。

 

 

 起きるまで待つ──いや、ヤギ女がまた怒号を飛ばしてこっちに来る可能性が高いな……仕方ないか。


 俺は意を決して……扉を開ける。

 

──扉の先は真っ暗な空間が続いている。

 『行き着く先などない』……そう感じさせてくるくらいに。


 ……多少の不安はあるけど。

 ゲンさんとバイオリンを背負い、暗闇の中を進むことにした。


 (重い……けど、自業自得か……)


 自分の罪の重さを振り返りながら、苦しみつつ──先へ進む。


 

  ☘  ☘  ☘  ☘  ☘  ☘  ☘  ☘  ☘



 (はぁ……はぁ。大分進んだはずなのに……何も見えねぇ……)


 体感的には30分くらい進んだと思うんだけどな……。

 どんだけ広いんだよここ……。


 まあ、ずっと暗闇の中だし……本当はどれくらい進んだのかは分からねぇけど──って


「うわっ!」


 突然目の前が眩しくなって、思わず目をつぶる。

 ゲンさんとバイオリンを離しそうになったけど、しっかりささえ直す。


 うおぉう……。ずっと暗いところにいたからか……? 

 余計に眩しく感じる……ぅうぅ……。



 しばらく時間がたって……回りの明るさに目が慣れてきたことを感じると。

 俺はゆっっくりと。目を開けていく。


 そこにはなぜか机と。

 席をくるくる回しながら座っているヤギ女……とっ!?


──あれ、なんで涙がでてきて…?


 ……イヤ、ヤ、ババババババババババ……!?

 あ゛あ゛あ゛……足、アジが、勝手に震え……て……。


 呂律(ろれつ)と、頭がほぼ回らなくなるほどの。


──『デカい』『ヤバい』『コワい』の3拍子……。


 いや、コイツが感じさせてくるのは3拍子どころじゃないけど……とにかくヤバいやつがそこにいて……あっ、あはは……。


 ……ごめんなさいゲンさん。でも、無理です。

 ゲンさんを支える手が……勝手に。勝手に離れていきます。


「……あ、い、いや。大丈……夫。ありがと……」


 背中でゲンさんの声がする。

 いつの間にかゲンさんは起きていたみたいだ……。


 ……いや、良かった……けど……ぉ!


 フゥコの話を聞いて。『キカイ』がもし、安全だったとしても、脅威としてみるべきなんじゃないかとか思ったけど……っ!


 ……撤回(てっかい)する。

 いや、アレガダイジョウブナラダイジョウブダロ。ウン。


 ダメだ。ココロノコエマデ、フルエテキタ……。アハハハハハハ……。



 いや、俺が行った異世界ではコイツ……『ドラゴン』はいたよ……?


 いたけどさ……ここまで威圧感なかったよ……?


 俺がみたやつは……コイツに比べたらかわいいもん、だっ……た。


「ハ……ュ……だ……」


 たぶん、ヤギ女が何か言ってるんだろう。

 でも、何をいってるのか。ぜ、全然、ワカラナ……。 


 や、ヤバい、なんか目の焦点があわない。そ、それにアタマ……が、ナン……か。


 イ、イヤイヤイヤ……ヤ、ヤバ……い、威圧感だけで……倒れそ──


 ♪~


 (この、音は……っ)


 この聴き覚えのある……でも前とは違う感じの。

 優しく奏でられていた音楽は不思議と聞き取ることができた。


 不思議と落ち着く音色で……。

 ……あれ? すーっと痛みと、震えが消えていく……!?


 「ハァ……ハァ……な……。何……とかなったみたい……だ」


 気がつくと。ゲンさんはバイオリンを構えて、息切れしている。

 『せいしんちょうりつ』か……。

 ありがとうございます……ゲンさん……。


 俺は、心の声でゲンさんに感謝を伝えた。


 そして、ゲンさんはそれに応えるように。

 こちらを向いて……疲れを隠しきれていない笑顔を作った。


「──なるほど。これはなかなか……さすがはフゥコといったところかな~?」


 今ならはっきりとヤギ女の声が聞き取れる。


「……まあ、そっちはハズレっぽいけど」


 あまり聞き取りたくない言葉だったけど。


「……ふ む、こ れ な ら 期 待 で き そ う だ 」


 っ!? 声だけで押し潰されそうになる……。

 その姿も相まってか、威圧感が倍加して襲ってくる……。


 俺は(うおぉ……ぉぉおお!!)と心の中で。

 襲ってくる威圧感に負けないよう叫びながら……ソイツをみる。

 

 ゲンさんのお陰で、おぼろげだったその姿ははっきりと……。


 ダメだ、見えないな……。


 まず……デカすぎる。全体なんて一目見ただけじゃ分かりそうもない。

 さっきの暗闇よりドス黒い姿をしていて、あの犬型キカイなんて……目じゃないほどの恐怖を感じさせてくる……。


──というか、なんでこんなヤツここにいるんだ……!?

 マジで、ここ本当に異世界じゃないよな!?


『実は異世界でしたドッキリ』ってことの方が納得いく──


 ってか……。さっきからコイツの横で、椅子で遊んでるヤギ女。

 もしかして、ああみえて結構すごいやつなのか……?



「……もしかして。ハリュウにビビってんの? うわ、ダッサ~」


 ヤギ女は俺がそのドラゴン……『ハリュウ』にビビっていることを見透かして。

『ワタシはビビりませんけど~?』って感じの。


 それはそれは不快に感じさせる口調で俺をバカにするが……。

 悔しいけど。何も言い返せない。


「ハァ。まあ、いいけどさ~」


 ヤギ女はいつのまにかピンクの水筒を片手にして何かを注ぎ、飲み干した後。


「じゃ、とっとと選定始めるから。こっちきて」 


 早口で、まくしたててきた。


 え、センテイって……何をするつもりだよ。

 ……まさか、この『ハリュウ』と戦え……なんてことはねぇよな?

 いや、さすがに手加減はしてくれると思うけど。


 力のあった頃の俺ならともかく……今の俺が。

 『結構強い一般人』が……素手で戦っても……勝てるかどうか……。


 ……これフゥコ、大丈夫だったのか……?



「──チッ。……何ボーッと突っ立ってんの?早く来てって」


「……ハルさん。とりあえず行きましょう」

 ……っ。ゲンさん……。


「怖いのは一緒ですから……」


 ゲンさんは俺があれだけひどいことをしてしまったのにも関わらず……気遣ってくれていた。


 ……そして、ヤギ女はそんな俺たちをみて。


「……フゥコの報告通りとはね~。最初聞いたときはいつものハッタリだと思ってたけど。チッ」


 机に頬杖つきながら嫌な顔をしている。

 いやホント、ヤギの顔そっくりだな……。


 ……『報告』? ってのは何のことを言っているのかはさっぱりだけど。


 ゲンさんと一緒にヤギ女の前に行った。


「よ~やくか~。まあ、いいけどさー」


 ヤギ女はあくびをしながら、こっちをみる。

 態度悪いな……。


 その時、ヤギ女が急に俺たちに向かって手を振りかざすと。


 目の前に『2つのビー玉』……のようなものが現れ。

 それらをヤギ女はすかさず手にとる。


「──なるほど。……じゃ、まずそっちの男から」

「……はい」

「名前はゲン。職業は……とりあえずカウンセラーであってる?」


 ……!? 何も聞いてないのに……?

 まさか『記憶のデータ化』か……? このヤギ女の能力……。


 ゲンさんも驚いた表情をしつつ。


「……はい。あってます」

「そ。なら大丈夫かな……ハリュウ」

「あ あ 、こ や つ な ら ば 問 題 な い だ ろ う 」

「ということでご~かく~。……おめでとー」


 突然の採用通知にゲンさんは困惑している。


 ふぅ……良かった。センテイっつっても。

 さすがにあの『ハリュウ』と戦うわけじゃなかったか……。


 俺がセンテイの真実にホッとしていると……。

 即座にこっちを。さっきとは全然違う『失望の目』でこっちをみて。


「ハァ。問題はアンタなんだけど」

「お、おう……」


「……アタシがいうのもなんだけど返事ぐらいちゃんとしたら?」

「は、はい……」


「ハァ……。正直言ってさ。『無能』は必要ないんだよね」

 

──こんなこと言われて。

 いつもならキレてたかもしれないけど……正直、その通りだ。


 こっちに帰ってきてから。異世界で使えていた力は一切使えないまま俺は逃げることしかできなかった。


 それどころか。

 助けてくれたゲンさんにひどいことをしてしまった……。

 ……それも3度も。……今の俺は無能。その通りだ。


「……でもさ」

「は……はい!」


「正直なところ……こっちも人手が足りてないんだよね……だからさ。本当に不本意ではあるんだけど……アンタもごーかく」


「──え?」


 予想外の答えだった。

 『お前さ~。邪魔だから。とっとと出ていってくんない?』とか言われると思って──


「待 て。 こ こ に 無 能 は 必 要 な い。

 お 前 も よ く 分 か っ て い る は ず だ ろ う 」


 ヤギ女の数倍威圧感のある声が響く。

 『必要ない』……か。そりゃそうだろうな。


──実際、俺はなにもできなかったんだから。


「……それなんだけどさ。フゥコからの推薦があってね……」


 フゥコ……が俺を……?


「む……。 フ ゥ コ が…… か 」

「……捕獲班にいれてほしいってさ」


「む ぅ ぅ ぅ……。 だ、 だ が…… 」

「フゥコ泣くよ」

「……! ?」


 ……あれもしかして……この──

「ドラゴン……ハリュウ……だったかな」


 ふと、気がつくと。

 いつの間にかゲンさんがこっちに近づいてきていた。


「……見た目と裏腹にすっごく優しいみたい……あっちの女性はともかく。

 無能は必要ないって言ってたとき……『危険すぎるから。このことは忘れて幸せに暮らしてもらいたい』……ってさ」


 ……そっか。俺、見た目で判断するタイプだったんだな。

 今までも、あの『犬型キカイ』も……。


「分 か っ た。 だ が………」

「……泣くよ」


 ってか、ハリュウさん、たじたじじゃねぇか……。


「……い、 い や。 こ れ は 聞 い て お か な け れ ば な ら な い……。 


 ……ハ ル。 お 前 に は こ こ で 戦 う こ と を 選 ぶ か。

  そ れ と も 、 や め る か。 選 ん で も ら い た い 」


 ……!?


「……別 に ど ち ら を 選 ん で も 文 句 は い わ な い。 ……お 前 が 選 ぶ 道 だ。」


 ……俺の答えなら決まっている。

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