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「この話はフィクションってことで!」  作者: 成
1章 既に始まっていた。
8/24

「Fiction.5 【Busterminal】」

この話には、ほんの少し暴力的な発言、場面があります。 


また、見る人によっては不快と考えられる描写があります。


閲覧の際はご注意ください。


この話はフィクションです。

(あ゛……!!)  


 ……気づいた時には遅かった。

 また、やっ……ちまった。

 

 俺より先にフゥコが明らかに取り乱して、あわあわしながらゲンさんに近づく。

 俺もすぐに近づいて意識はあることを確認した。


 心の声を盗み聞きしてやがるのが悪い……んだけど。


 今回は俺があの方法を、また使ってたのが悪い……。

 心の声で何度もコンタクトをとろうとしたけど、反応がなかったからとはいえ。


 もう既に心の声は聞かれてるって分かってたんだから。

 俺が()めておけば、こんなことは起こらなかった。


 それに、心の声が聞かれていたとしても。

 ゲンさんは──(自主規制)なやつじゃないってのも……分かってたのに。

 何で俺は止まらなかったんだ。


 ……これでゲンさんに3度か。



 ゲンさんはとりあえず無事みたいで。

 フゥコはホッと。息をついた後……こっちをみて。


「なんでこんなことをふるのかは聞かない……」


 冷静な口調の後……。

 ものすごく小声で何か言ってるのがわかった。

 失望……させちまったな。


──フゥコとはゲンさんを蹴っとばして……気絶させちまった後に。


 フゥコと俺でゲンさんの治療を行っているとき、その合間に。

 行った異世界の話をしていくうちに……。 


 意気投合して。盛り上がって。


 ゲンさんの応急手当が終わった後に。

 いつの間にかそのまま話しこんでいた……。


 出会ったばかりなのに、すぐに打ち解けることができたのは……。

 りーすに似ている部分があったからかな……。


 だけど、ただ異世界の話で盛り上がってたわけじゃない。

 重要な話もちゃんと聞いている。


 ここはあの異物──通称『キカイ』

 意味は機械のようで、奇怪なやつだかららしい。


 そして、『キカイ』は俺たちが会ったヤツだけじゃないこと。


 ……小規模ではあるけど。

 実は既にキカイによる被害が出てたことを知った。


 あの犬型キカイは、悪いやつじゃないはずだけど……。

 その話をすると、フゥコが混乱しそうだから後回しにした。


 そして、ここはそんな、キカイへの対処のための組織。

 

──【バスターミナル(Busterminal)】


 ……正直、ネーミングセンスにつっこみそうになったけど。

 フゥコがあまりにも、真剣に話を進めていくから……。

 

 いや、この際、名前はどうでもいいか。


 重要なのは。

 ここがその『キカイ』の対処のためのところってことだ。


 そして、俺たちが捕まった理由。

 それは突如現れたキカイに対抗する手段として。


 『転生者』、もしくは『転移者』を集め。


 ……名前の由来は知らないけど。

 【ディバスター(Debaster)】として戦ってもらうためらしい。 


 フゥコもその一人で、俺と同じ異世界転移者だったんだけど……。 


 フゥコが行ったという異世界の話は……凄まじかった。


 ……喧嘩してる王様達をフゥコがくっつけて。

 仲直りさせて、平和になったとか……どういうことだよ。



 そして、そんな【ディバスター】で構成されたグループを。

 【ディバスション(Debastion)】と呼ぶらしい。


 フゥコは【ディバスション】の……『捕獲班』に所属しているらしい。

 『捕獲班』って聞くと……キカイを捕まえるためのように聞こえるけど……違う。   


 俺たちがここに連れてこられたように。

 『転移者』、『転生者』を捕獲……する班。


 その後はたぶん【ディバスター】になってもらうんだろうな……たぶん。


 フゥコはなぜか。この部分を正確には教えてくれなかった。

 というか、詳しくは知らないのかもな……。


 


──そんなことも踏まえて、俺はフゥコにキカイについて相談してみた。

 すると、フゥコは目を丸くして。

「え…?敵びゃないかもひれないってこと……?」


──そうか、フゥコはもう既に「良かったぁ……」

「え?」

「ワタヒたちはまだ、ほこまでの段階びゃないの!」


──そこまでの段階じゃない?


「どういうことだ? 被害が出てるんだよな?」

「うん。でもまだ戦ってはなくて……」


──戦ってない? てっきり、こんな組織があるならもうとっくに戦い始めてると思ってた……。


「被害が出たのは、はいわい誰もいないところで……」

「まだ、誰かに何かあった訳じゃないってのか?」


「うん。ほれでね……。ここからがフヒギなところなんだけどね……ほの被害にあったところが今は使われていないホウホウ局だったんだけど…。」


 ほーほー…放送か。


「ほこを使って、ほのキカイが──『ヘンヘンフコク』ひてきたの」


 へんへん──『宣戦布告』?


「あっ、動画あるからほれみた方が早いかも!」


 フゥコは大きな声でそういうと、スマートフォン……じゃないな。

 なんかよくわからない機械を操作して、その動画を「これ!これ!」といいながら見せてきた。


──そこには。

 俺が知っている犬?型のキカイではなく。どちらかというと人型のキカイがそこに映っていた。

 キカイに性別があるかは分からないがおそらく男。

 そして、カメラ目線で。


[オレタチガココニキタノハナァ…! フクシュウスルタ──]


あれ──

「動画はここまで。ほれでね、ここからが『ビュウヨウ』なところなんだけどね……」


 ビュ──重要か。被害が出たのは誰もいないところって言ってたけど……。


「このキカイは──『何もひてこなかったの』」

「え?」

 フゥコの衝撃の言葉に俺は目を丸くする。


「何も。このあと、どこか被害にあったってハナヒもないの。」

「──えっと。まさか小規模の被害って」

「これだけ」


 あー、うん。いや、まあ……。

 ……無事で良かったな──というか、ここ俺がいた世界だし。そんな大事件、起こってたら俺も知ってるはずだよな……。


「でも、脅威とひて、判断ふるにはビュウブンだったの。」

「……まあ。復讐なんていってるからな……」

「……ほれだけびゃないの。ほのホウホウ局は、なくなってたの」


 え……?


「まるで『インヘキ』が落ちたかのような穴ができてたの。」


 それ……って。


「今はなべか何もひてこないけど……。はふがに黙ってみてるわけにはいかないってことになって」


──そりゃそうだ。


 もし、あの犬型のキカイが実は安全なやつだったとしても……例えば、そこを通っただけでそうなってしまったのだとすれば──

いや知っていたはずだ……キカイのヤバさなら。


 さっきは幸い。人に危害が及ぶことはなかったけど…。 

 あの破壊力──脅威として判断するのは当然だ…てか、『あのキカイはどうなったんだ?』

──俺がそんな質問を投げ掛ける前にフゥコは言葉を続ける。


「……でも。ハルはんのはなひを聞いて良かった!」

「え?」


 良かったって……何が? 俺が聞く前にフゥコは言葉を続ける。


「戦わなくていいなら、ほれの方がべったいいいから!!」


 と満面の笑顔で俺を見てくる──と同時に俺は後悔した。

 『本当に心優しい子なんだな』と感じる。

 だからこそ。俺はそんな笑顔を見てられなかった。


 ……俺のせいだ。俺のせいでフゥコに『戦わなくていい』なんて希望を持たせてしまった。


「なぁ……フゥコ……」

「なにー?」


 と首をかしげて不思議そうな顔で見つめてくる……りーすを思い出すな。この感じ。

 ……だからなのか、余計に辛くなる。

 自分の軽はずみな発言を後悔しつつ、意を決して。


「悪い、俺──」

 そこまでいいかけたその時。

 全速力の足音が聞こえたと同時に勢い良く扉が開き。


「お゛っっっそーーーーーーーい!!!!」


 超絶うるせぇ声が響き渡る。耳がキーーーンとなっている。


 ……一方、フゥコはというと。


「申ひ訳ありまへん。ひかひ、一名のディバフター候補がこの場でフヒョウいたひまひて」


 さっきまでの雰囲気はどこへ行ったのか、何事もなかったかのように冷静に対応していた。


「…負傷~?」


 ため息をつきながら、だるそうにしている。

 こいつを例えるならキャリアウーマンの姿を姿をしたヤギだな間違いなく。

 言っちゃいけないんだろうが……あまりきれいな顔とはいえない。

 スタイルだけはいいからか? 余計目立っている。


「はい、ほこにあるタンフの角に思いっっきり小指をぶつけたようで。ほのヒョックでヒッヒンひていまふ」


 と、フゥコはなぜか部屋の隅にあるタンスを指差してそう言った。


──こんな状況だけど。冷静なそのごまかしとその言葉、そして今まで気づかなかったタンスの存在に笑いが込み上げてくる。

 ……いやまあ、俺が原因なんだけど……。


 一方、ヤギ女は笑うどころか舌打ちをしながら、こめかみをかいて。心底だるそうにしながら。


「ハァ。もういいから。そのまま連れてきて。来るときに起きるでしょ」

と早口でまくしたてる。


「了解でふ」

 そういうと、フゥコがゲンさんに虫とり網のようなものを振り下ろして。


 ゲンさんとバイオリンは消えていた──突然のことに驚いている俺にフゥコがこっそりとさっきまでとは違った柔らかな表情をみせて。


「これ。ミィミの力だからきにひないで」


と伝えてきた。

…なるほど、俺たちはこうやってここにきたわけか。


「じゃ、あたし先行っとくから」


 ヤギ女はそういうと、部屋から出ていった。

 フゥコは見事な敬礼をしている。

──今まで半信半疑だったけど……本当に組織なのか。


「びゃあ、ついてきて」


 フゥコが敬礼を終え、そういうと。手招きしながら部屋の外に出ていった。

 俺はフゥコを信じてついていくことにした。

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