「Fiction.4 連れてこられた場所は」
また、ゲンに視点が変わっています。
ご了承ください。
薄暗い部屋の中で目が覚める。
……少しカビ臭いな。
それにちょっと頭がズキズキする……。
──っ! セイカは!?
{大丈夫ですよ}
愛器が無事であることを確認し。
僕はホッとする。
いや、ホッとしてる場合じゃない。ここは……?
僕は何が起こったのか。
何があってこんなところにいるのかを思い出していく。
たしか──
(いきなりごめんね☆キラリッ!さくせーーーんFoooooooo!!!!)
という声が聞こえたと思ったらいつのまにか意識を失って、
──って!? どういうこと!?
今まで、聴いた言葉で意味不明さランク10には入るよ!?
こっちにきてからも、色々ありすぎて。
もう何がなんだかさっぱりだ……。
{正直、私にも分かりません……}
「だよね……」
そういえば──セイタロウ……いや、{ハルの方が良いでしょう}
うん、おそらくハルと呼ばないと。
名前しか分からないけど……セカリって人?の二の舞になる気がする。
{……もし、思考を聴いているのが、わたしだとバレたらわたしも一撃喰らっていたのでしょうか……?}
う、うーーん……?どうだろう?
──どうやら、セイカはセイ……ハルさんのことを恐れているみたいだ。無理もないけど。
見た目と裏腹に狂暴だからなぁ……。
{まあ…見た目はかわいらしい女性といえますね。
ゲンは見た目で判断するタイプですから。
『最高のお客様{ }』とか。
『僕好みのタイプだぁっぁっはっはぁっ……』とか言ってましたね}
最後のちょっと悪意あるよね!?
{……別に}
……えっと。なんか悪いことしたかな?ごめん……。
{何が悪いか気づいてないのに謝るのは余計に悪いですよ}
うっ……。
セイカが不機嫌になっている理由は何だ……?
思い出せ、思い出すんだっ! 僕は何をしたのか……!
「あのー?」
必死になっていると、聞き覚えのある声が。
僕は座りながら声のする方を向く。
「近いうちに会いましたね。早すぎますけど」
「セ{ハル!!}──ハルさん」
セ{ハッッルッッ!!}──ハルさんが僕の横に立って。
座っている僕を見下ろしていた。
「ハルでいいですよ」
「そう。じゃあ僕もゲンでいいよ」
「──いえ、年上なので、ゲンさんで」
「そう……」
……ねえ、セ{ハーーーーールーーーーーー!!!}
いや、今はセイカのことを呼ぼうと──
{あっ……すみませ──
ど、どちらも『セ』から始まるからなっ!
ややこしいですよなっ!}
セイカ……? えっ、セ……イカ?
{わ、わたしだよなっ!!
ど、どうしたのだっ!?}
その時。セイカのキャラが急に崩壊した原因を察した僕は……。
本心を伝えることにした。
おそらく、舞い上がってた僕が。
活発な子が僕好みと言ってしまったから……。
セイカなりに(ものすごい勘違いっぷりだけど)活発になろうとしたんだろう……。
{うっ……その通りです。性格の好みは初めて聞きましたし……}
……実はこっそり聴こえないように思考を隠す裏技がある。
{わたしは活発ではないので……}
そういうときはお互い黙っている時間が多ければ察しがつく。
ちなみに今の思考はセイカには聴こえていない……はず。
よし。セイカへの想いを嘘偽りなく伝えるんだ。
セイカ、ごめん。僕が悪かったよ……。
僕はセイカのことは大切だし……大好きだと想ってるから。
セイカは……セイカのままでいいんだよ。{……ゲン}
前にも異世界で似たようなことがあった。
その時は……とんでもないことになった。
あれほど自分の発言を後悔したことはないってぐらいに。
セイカは自分を捨ててでも。
相手が求める姿になろうとしてしまうところがある。
不機嫌になっていたのもこれが理由なんだろう──
{……そっちじゃないですけど}……え゛。違うの。
{それはさておき……}うん?
{思考の聴覚【リスニングハーモニー】、共有しておきますか?}あー……うん。
{では……}
『思考の聴覚【リスニングハーモニー】』
さっきまでは聞こえなかった『思考』が。
聴こえるようになる。
(……聞こえてないのか?)
ちょうど、ハルさんの思考が聴こえる。
「いや、ちゃんと聴こえてるよ」{あ゛っ}
「──そうか」
そういうと、うつむいたかと思えば……。
あれ?なんでストレッチしてるの?
{あああ゛……。覚悟を決めてください……}
……なぜかセイカの震えた声が聞こえる。
念のためセイカを守る体勢をとった──その瞬間。
スカートなんて、なんのその。
──見事なハイキックが僕に決まる……。
……いや、なんでぇぇぇぇ……?
{ハルさんは心を読まれているか確認する方法(わたしには恥ずかしくて言えないこと)を実行してて……。
それをゲンがずーっと聴いて心の中で笑ってたと勘違いして。
……それにしても見事なハイキック。
……そしてゲン。よく自力でわたしを守ってくれました……}
いや、理不尽すぎない……かな?
蹴っ飛ばされて床に倒れこみ。
そんな不慮の一撃に身もだえていた……。
──その時。『カツッカツッ』という感じの。
靴音が耳に入ってくる。
……何かがこっちにくるようだ。
僕は扉の方へ、予想外の痛みに耐えつつも。
ゆっくり体を向けようとする。
「起きたようだ……な?」(いや、えぇぇぇぇぇぇ!?)
誰か入ってきたみたいだ。
声がしたほうに体の向きを変えるとそこには。
以前、海外にいったとき、みかけたような。
アフリカ系のかわいらしい女の子が立っていた。
その女の子は倒れている僕をみて。
心のなかでは動揺しているみたいだけど……。
──その動揺は顔には一切でていなかった。
女の子はハルさんの方を向き、問いかける。
「これは……あなたが?」(違うよね……? ──タンスの角に小指ぶつけただけだよね……?)
いや、なんで?
「ああ、俺だ」
「ほうか……」
(そうか──やっぱりこれが愛のカタチ……!)
(……ほ?)
{!?}
「いや、ちょっと待って!?」
衝撃の反動を利用して、勢いで立つ。
こんな離れ業ができたのは。
その衝撃の(心の)発言の凄まじさが物語っているだろう。
いや、それより──『愛』!? 何故、愛!?
今まで思考の聴覚で聴いた言葉で意味不明さランク10には入──
あれ?この意味不明さはもしかして……。
セイカはあまりの衝撃に固まっている。
こんなときは……僕が何とかしないと。
「なんだろうか」(もしかしてぇ、もしかしてぇ!?愛し──
「君っ──!? がここへ僕たちを連れてきたのか……?」
表面状と裏側のギャップがありすぎて動揺しつつも、何とか質問できた。
「……ほうだ」(そうだ、こい(ぶぅぅぅぅ……。そっちのことかぁ……。ハァ……)
──ダメだ。全然状況が頭に入ってこない。
というかこの子……。
無表情で心の中ではここまではしゃいでるのか……。
{……一旦、思考の聴覚の共有止めますね}
うん……。
……そんなセイカの配慮に内心感謝していると。
「お前の目的は何だ? 俺たちをどうする気だ?」
ハルさんが聞きたいことを聴いてくれていた!
そう……っ! それっ! そこが重要で──
「わたひたちはお前たちを『ヘンテイ』する必要がある」
だめだもう泣きそう。
{……落ち着いてください。
あの少女はおそらくサ行が言えないだけです……}
……そっか。ありがとうセイカ。
ということは「『センテイ』ってなんだよ!?」
ハルさん聞き取れたのか……。
「……ふこし待っていろ」
そういうと女の子は。
何やら箱のようなものをどこかから出して。
良くはみえないけど……一冊の本を取り出すと。
──深呼吸して、高らかに。
「……『ヘンテイ』とはー! おおくのもののなかからー!」
っちっっがぁぁぁ{えぇぇ……?}ぁぁぁぁう!!!
「えらんでー!きめることであるー!」
そういうことをぉ……聞きたいんじゃなくてぇ──
「なるほど。そういう意味だったのか……ありがとな」
──分かってなかったんだ……うん。
分からないことを聞くのは大事なことだよね…。
その時。
僕の中でまるで弦がきれたような音がしたと思うと……。
──いつのまにか膝から崩れ落ちていた……。
(ゲンさ{──ッゲェェェェェェェンッッッッ!!!}
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
──どれだけの時間がたったのだろう。
{気がついたようですね。良かった……}
セイカ……?
あぁ……セイカの、安心できる柔らかな声が聴こえる……。
後……セイカの声と──
「でさ。そのあと──」
「えぇぇぇぇぇ!!ほんなことになっちゃったのぉぉぉぉ!!??」
……おもいだした。
{幸い、あまり時間はたってませんよ}
そっか……ありがとうセイカ。
少し痛むけど体を起こす。
僕の体には包帯が巻かれていた……巻く部分違うけど。
「……ゲンさん」
「……起きたか」
さっきの大声はなんだったのかと思うほど。
冷静な声で迎えられる。
そして、ハルさんは。
申し訳なさそうにしながらこっちへきて──
「ゲンさん。ごめんなさい……感情がおさえられなくって……」
さっきまで大声で騒いでい{でもハルさんのこの気持ちは本心ですよ}
──そうなの?{はい}
……そっか。ハルさんも反省してるなら。
「大丈夫。こっちも勝手に聴い──{あ゛っ……}」
僕は重大なミスをおかしたことに気づいたその瞬間。
ハルさんの拳が見事に思いっっきり顔面にヒット──
相手のことを思ってしたことってさ。
実際は相手のことを考えられていなかった……。
ってことあるよね。
そんな……意味のないことを考えながら。
『やって……しまった──』って感じの。
ハルさんの表情が印象に残りつつ。
僕の意識は薄れていった。{ゲェェェェ……