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「この話はフィクションってことで!」  作者: 成
終章 旅は終わり……。
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Epilogue


 月が満ち、夜が更け。


──世界は闇に包まれた。

 

           ☘──☘ ☘☘  ☘   ☘


 この世界を周り、俺は様々な想いを感じた……。


 その想いの果てには心が折れそうになったこともあったけど……仲間達のおかげで乗り越えることができた。

 

 みんなには感謝してもしきれないほどだ。


 ……そして、この世界は平和になる。

 きっと。みんな、色んな想いを抱きながらも。


 希望に溢れた毎日を過ごし……幸せにくらしていくことだろう。


 つまり、俺の役目は終わり。


 それに俺には帰るべき理由もあるから。

 いつまでもこの世界にいるわけにはいかない。


 だから……今まで旅してきた仲間達とは別れることを決めた。


 これが俺たちの……旅の最後だ。


          ☘──☘ ☘☘  ☘   ☘


 俺、『りーす』、『サビス』、『ナゾック』……後、『例外』。

 

 俺と旅の仲間達は『例外』を除いてそれぞれの想いを胸に。

 【とある宿屋】に集まっていた。


 『旅の最後はここにしよっか!』

 そう決めたのは、サビスだった。

 

 その意見にはみんな納得して。

 俺たち(主にサビス)がお世話になったここの主人である。

 『オバア』ちゃんと最後の挨拶を交わした後。

 

 【とある宿屋】の見晴らしの良い大広間に集い。


 俺が世界を回って、決意したことを。

 仲間達に伝えたところだ。


 この話に最初に反応したのは……やっぱり、りーすだった。

 感受性の強い子だったから予想はできてたけど……。


 俺の想いを聞いて、心友(しんゆう)『りーす』は。

 今にも泣き出しそうな勢いで小さな体を震わせている……。


 俺も本当は。りーすと一緒になって泣きたい。

 


──けど、そんなこと許されるはずがない。


         ☘──☘ ☘☘  ☘   ☘


 ……思い返せば。りーすと最初に出会ったときは。


 『リ、リスがしゃべったぁ!?』なーんて大声を出して驚いたんだっけ。


 今になってみればリスがしゃべるなんて些細(ささい)なことだけど。


 その後はとまどいつつもお互いに自己紹介して。


愛称(ニックネーム)』で呼んでもらうように頼んだんだよな……。

 

『どーして、セイタロウじゃダメなの? 良い名前だと思うけど……』なんて、言われたけど……。


『……この『ハル』は昔からの愛称(ニックネーム)で。俺がいた世界の大親友、レイカがつけてくれたんだ。それで……とても気に入ってるから』


 という本心から出た、言葉(いいわけ)を聞いて。


『そうなんだね! わかった!』って。


 りーすに笑顔で納得してもらってからは……異世界でもこの愛称で呼んでもらうことの方が多かったかな。



 そんな笑顔がかわいいりーすは。


 普段は臆病だけど。


 いざというときには……。

 見た目からは想像もつかないような、誰の目からみても明らかにヤバい力を使って──


 ああ、たしか『──(自主規制)オトコ』に襲われたときにはそれに助けられたけど……。


 あの力を使っているりーすはもうみたくないな……怖すぎて。


 でも、基本的にはとても心優しい女の子だったな。

 後、色んなことを知っていて。

 その知識には、いつも助けられたっけ……。


        ☘──☘ ☘☘  ☘   ☘


「やだ、よぉ……いっしょに、いたいよぉぉ……」


 うっ……。

 予想はできてたけどこんなりーすをみてると……。


(やっぱり、ここにいてあげようかな)って気持ちが……。

 決意が……揺らぎはじめてくる……。



(俺は……本当に帰るべきなの「ッオーーーーイ!\'(∋Α∈)'/セーイタロー!!」 


 ……『窓が割れる音』とともに。

 俺とりーすの間に見慣れたシルエットが……『例外』が飛び込んでくる。

 それも、相変わらずけたたましいうるさい声をだしながら。


 ……耳がキーンとなる。


 ・空気を読まない

 ・マナーを守らない

 ・他のことのやつなんておかまいなし。


 迷惑3点セット。

 コレが『例外』の──(自主規制)オトコだ。


 一応、セカリって名前があるけど。

 ──(自主規制)男で──(自主規制)な音をたてるコウモリだから。


 略して、『──(自主規制)オトコ』


 俺が『(にく)しみ』をこめて名付けてやってからは。

 みんな、そう呼ぶようになった。


 俺たちの旅の途中からは……。

 コイツとけたたましい不快な笑い声がいつもついてきた。

 まさにアンハッピーセット。


 まあ、助けられることもあったけど。

 ──(自主規制)な部分の方が目立つ。


 正直なところ、あまり仲間だとは思ってない。

 というか、最後までついてくるとは思ってなかった。


「キドイ……」 


 ……いつも通り、最初の勢いが嘘かのように落ち込んでるな。


 そして……このあとは恒例の小芝居(サビスげきじょう)が始まる。


 いつものように落ち込んでいる──(自主規制)オトコに。

 3……人目の旅の仲間。サビスが近づいていき。


「大ー丈ー夫。ハルはなんだかんだいっても、君のことを好きだと思ってるよーぉ!」

 サビスがそんな優しい言葉をかけると。


「えーー!?ほんとにー!?」

 と──(自主規制)オトコは照れくさそうにしながら。


「そーですよーぉ!」

 というサビスの心にもない励まし(……のはず)を受けて。


「そーーかなーーー!?キッシャキッシャキッシャキッシャキッシャーー!」

 ……さっきまで落ち込んでいたのが嘘のように。

 元気にけたたましい不快な笑い声をたて。


 ──(自主規制)オトコはスキップしながら。

 『もう1つ』窓を割り。

 部屋の外へ飛びさっていっ──   


 オ゛イ゛、──(自主規制)オトコォッ!!

 

 ──(自主規制)オトコのあまりの傍若無人(ぼうじゃくぶじん)っぷりに叫ぼうとしたとき……サビスがこっちに近づいてきて。


「ハル! あの──(自主規制)オトコは、わっぺに任せて!」


 と、親指をたてウィンクしながら大声で話しかけてきた。

 おそらく、この周辺一帯には聞こえるくらいに。


 こういうのって普通、こっそりいうものじゃないか……? 

 

       ☘──☘ ☘☘  ☘   ☘


 そんなどこか抜けているサビスは。

 魔法使いっぽいイメージのあるとても綺麗な女性で。

 

 最初出会った時は、胸の奥が……ドキッとなったっけ。

 (まあ、原因は別にあったんだけど……)


 でも、そんなサビスの一番の特徴は……おどけた感じかなぁ。

 いつも楽しませてくれるムードメーカーだったし。


 そして、厳しいところはあるけど、それはみんなのことを想っての発言、行動だったり。 


 みんなのことを一番よくみていて、分かっていたのもサビスだったと思う。

 その性格も相まって。みんなに慕われやすい。


 実は俺も『こうなれたらな……』って思ったこともあるくらいにはサビスに憧れを感じていたりする。



──でもそんなサビスには危険な力があった。


 確かプレゼントフォーユー(前途四遊)の一人と戦った時に分かったんだ。


 『言葉に魔力を込め、どんなやつでも思いのままにできる』

 それがサビスの能力だった。


 ……とはいっても。サビスはそんなことはしない。

 だって──


      ☘──☘ ☘☘  ☘   ☘


「……そうだ。ハルとはもうあの時……心を打ち明けあったから。

 ……これ以上伝えるようなことはないと思ってたんだけど……さ」

 

 サビスが背を向けて……話しかけてくるけど。


 ……だんだん涙声になってきているのが分か──


 「……言いたいことはぁ~? コレっ!」


 と思ったら。

 サビスはおどけた感じで元気良く振り返り、いつもの『決まり文句』をかけてくると。


 サビスが、一生懸命になって工夫を凝らしたのだとわかる、いつも以上にきらきら輝く文字が浮き上がり。


 今までのサビスにとって(……もちろん俺にとっても)の旅の思い出が表れると……同時に。


「君たちに出会えて

    本当に良かったと思ってるってこと! 

          ………ありがとね! 

            ラッサーガ! ハル!」


 サビスはいつものおどけた感じではなく。

 満面の笑顔とともに『想い』を……伝えてくれていた。


 『ラッサーガ』……か。

 この言葉の意味は伝える相手によって。

 相手の受け止め方によって変わる不思議な言葉だけど。


 今のサビスの場合は……分かりやすいな。


     ☘──☘ ☘☘  ☘   ☘


 そう。サビスの『言葉に魔力をこめ、思いのままにできる力』は俺たちと旅をするうちに。


“想いを伝えるための力”になっていたんだ。


『いつか、この世界のみんなの想いを伝えるための手助けができたらなって思うんだ!』


 そう自分の夢を語っていたあの時のサビスの嘘偽りのない言葉は今でも思い出として残っている。


    ☘──☘     ☘   ☘


 俺はこの想いを深く心に刻みこんで……いるうちに。


 サビスの姿はもうそこにはなかった。


 ……きっとサビスはいつも通り飛び去っていった──(自主規制)オトコを追っていったんだろう。


 …………。


「……ハル。ちょっといいか?」

「…………」 


「……お前は暴れまわるタイプなのに感受性が豊かだな……。

 いや、だからこそか……?」


 ……『ナゾック』


 プレゼントフォーユー(前途四遊)の一人。

 空気を読まない3等身。

 いつもの『?』マークのシルクハットに。

 しずくの形のアクセサリー。


 ハデッハデで、色がまばらな左だけチェックのタキシードをきている。

 肌の色がコロコロ変わるのが特徴で──今は水色か。

 ホントいつもと変わらない。


「お前がオレっちをどう思ってるかは簡単に想像がつくよ。

 ……そして、こんなときだがお前への問いかけがあってな……」


 ナゾックは問題を出す……いつもとは違った形で。


「……お前はこれからどうするつもりだ?」

「……え?」


「『帰る』『帰らない』の2択問題じゃない。

 オレっちはそんな答えがほしいわけじゃない……その後のことだ」


 そりゃあ……学校に行って、友達に会っ……て──


「……この問題に制限時間はない。

 あせらせてしまうと、間違った解答をしてしまうだろうからな。……まあ、ゆっくり考えろ」


 ゆっくり……か。


「ただひとつ。これだけはいっておく。

 ……その答えを導きだせたなら、その答えを信じて進め。

 だが、もし間違っていると思ったなら一度考え直せ。

 ……答えはひとつじゃないこともある」 


 ……ナゾック。


「オレっちからはそれだけだ。 ……悪かったな」


 そういい残した後。

 ワープホールをつくり。ナゾックは落ちていった。


──ひとつのカードを残して。


 ナゾックのトレードマーク。

 『しずくの形のクイズカード』だ。

 でも……いつもと違う。 


 いつもなら。

 このクイズカードを飛ばして、体の中に埋め込んでくる。


 そして──

『デレレレレン!上からビョーブ! したからテンジョウ! 

                これってなんだろなー!?』


 というように。『()()()』にクイズが始まる。


 しかも、頭の中で。

 ……一応、周りの音は聞こえるけど。


 視覚は完全に支配されて、そのクイズしか見えなくなる。


 この答えは俺には解けなくて、りーすの知識に助けられたけど……。

 

 今、考えてもあれは無理だよ。


 そんな無理難題(思い出)を振り返りながら……。

 俺はナゾックが残していったクイズカードを拾い上げる。


──そこには。


゛そう。 みつけろよ な

  オレたちのはるの正解をよう。


 とだけかかれていた。


 後は裏に──あると思っていた。

 いつのまにか当たり前になっていたいつものクイズカード。

 間違ったらペナルティ、正解したらご褒美がもらえる。


 敵の時も仲間の時もそれは変わらなかった。

 敵の時は恐ろしかったけど……仲間になってからは。


 実はこのクイズがちょっとずつ楽しみになってきていた。


 そんないつものこと……が。……なかった。


 カードを投げてくるときはクイズの時だけ。

 それがナゾックのルールのはず──


 ……そうか。


 俺はこのカードの意味を……間違えていたのかもしれない。

 といっても、推測でしかないけど……。

 

 このしずくのカードは……あいつなりの想いで。


 そして、これを埋め込むんじゃなくて。

 置いていった……ということは。


──『受けとるかどうかはお前が決めろ』


 ってことなのかもな……。


 そう……自分なりに答えを出して。

 俺はその想いを受け入れた。 

 

   ☘──☘     ☘   


「ハル……」

「っ、りーす……」


 気がつくと、りーすが覚悟を決めたかのように。こっちをみていた。


「ボクはすこしわがままだったんだね……」


「りーす?」 


「……ハル。ごめん。ハルが決めたことならボク応援するよ!もちろん、ボクはハルとまだ一緒にい……っ!

 ……ううん。……みんなだってハルと離れたくないわけじゃないけど、ハルの気持ちはよく分かるから。

 みんな自分なりにハルへの想いを伝えてる」


 ハルにはハルの大切なところがある。帰るべき場所がある。

 その想いは……縛っちゃいけないんだ。 

 ハルと……ハルとみんなと。

 一緒に過ごせて本当に楽しかった。 

 ハル。ありがとう……君にあえて良かった。


 ……ラッサ──


  ☘──☘         


 ……俺は。

 最後になるだろう言葉はもう聞いていられなくて。いてもたってもいられずに……飛び出してきてしまった。


 りーすの。みんなの想いを無駄にしないためにも。

 俺は……走らなければならない。


 みんなと過ごしたこの世界。 

 心の呪縛を解き放って。

 紡いできた言葉。

 共に乗り越えてきた問題。  


 みんなへの伝えきれないほどの。

 色んな感情がごちゃ混ぜになりながら。


──この世界での俺の最後の力を使った。


「……ラッサーガ。みんな」


 力が発揮されたことを確認すると。


 ……覚悟を決めて。

 始まりの(みち)へと向かった。 


 ☘──☘         


 始まりの(みち)には俺をこの世界へ引きずり込んだ元凶がそこにいた。

 ローブをまとっているせいで顔は見えないけど……間違いなくあいつだ。


「別れはきちんと済ませたようだなセイタロウよ! 数多(あまた)の冒険を終え、よくぞここまで……」

「……待った。最後に一つ聞かせてくれ」


 俺は帰る前にどうしても聞いておかなければならないことがあった。


「……む、お前に与えた力のことだな?」

 相変わらず心の声を聞いてやがるなコイツ……。


「……ああ。あの力は──」

「そのまま持っていくがよい」


 ……え?


「……あの力、俺の世界でも使えるのか?」

「うむ。……だがここで覚えた魔効【ニュー・オリジン】などは使えん」


 魔効(ニューオリ)か……あれはあれでやばいけど。俺が与えられた力はもっとヤバいから……。


「どのみちどちらも使うわけにはいかないけどな」

「……なぜだ?」

「なぜって……あの力、俺のいた世界で使ったらしゃれにならねぇって……」


「……こちらで、さんざん好き勝手してたやつが言うことか……」


「……なんかいったか?」

「こちらでさんざん好き勝手してたやつが言うことか」

「……あんた。案外度胸あるよな」

「自分の世界でなければ好き勝手できるお前に言われたくないわ……」


──そうだな。……後悔するほどには一理ある。


「念のために聞いておくが。その力の意味、あやつらと一緒にいたにも関わらずまだ分かっていないわけなかろうな?」

「……ん? 想いの力のことか?」

「…………」


 ん? あれ? もしかして違うのか……?


「……まあ、よいわ」

「え、いいのか?」


「……いずれ、気づくと信じておるよ」


 なんか煮え切らない返事だな……。

 俺が少し不安を感じている間に……元凶は俺の前に立ち。


「お前を元の世界へと返す……よいな?」


 俺のいた世界へ帰す準備を整えていた。


「ああ、頼む」

「では……こちらにくる、少し前の時間へ!」


〈イーリースガル・マジネード!!!〉


 元凶がそう唱えると。何かが吹き飛んだような音を立て。


 俺の後ろに魔力の渦──『(かえ)(みち)』が現れた。

 そして元の世界に導かれて行くように。俺の体は引っ張られていく。

 ……この世界ともおさらばだ。

 徐々に自分に与えられた力が薄れていくのを感じる。


 当然だな。あの力はそういう力だ。

 俺の世界ではどういう力になるのかわかんねぇけど……。


──あぁ、いや。その前に。


「いい忘れてたけどよ……!」

「?」

「お前はともかくこの世界は最高だったぞ! ラッサーガ! ──(自主規制)オトコ!」

「──っ! そうか、良かった! ……ラッサーガ!セイタロー!/'(∋♗∈)'/」


 ……お前のことは忘れても。

 ……この世界での旅は終わったとしても。

 俺はこの世界の想い(なかま)と共に進んでいく。


☘ ☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘☘


 終わりじゃない。始まりだ。

 俺たちの新しい旅の……な。

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