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新年会

「新年早々めんどいなぁ……」

「そんなこと言わないの。私もゆっくりしたいけどしょうがないんだから」

「仕方ない、か」


 バスの座席で溜め息を吐いたのは良治よしはる。彼を諦めた口調で慰めたのは隣に座るまどかだ。

 通路側に良治、窓側にはまどかの配置になっている。


「そうですよ。もう乗ってしまったのですから大人しく受け入れましょう」

「私はなんか旅行みたいでちょっと楽しいです」


 逆側の席から聞こえる声に目を向ける。通路を隔てて向こう側に座るのは窓側に優綺ゆき、通路側に天音あまねだ。


「まぁそれくらいの気分じゃないと気が滅入るだけか」

「そうですよ。私は初めての新年会なので普通に楽しみです」


 新年会。バスの目的は優綺の言うように新年会にあった。


 毎年行われている京都での白神会の新年会。現在この新品のマイクロバスで向かう先だ。

 良治たちはバスの前の方。後ろの方には葵やかける、正吾や千香ちかが座っている。


「俺も初めてだけど楽しみというより緊張するよ」

「ね、手を、その握ってあげるから」

「……ありがとな」


 そっと手を握るまどかの気遣いはとても嬉しいが、通路の向こう側を見るのが少しだけ怖いので前を向く。

 するとミラー越しに運転をしている結那ゆいなと目が合った。ムッとした目の感じから察するにどうやら会話は聞こえていたらしい。


 運転している以上こちら側に来ることは出来ないことも手伝って少し不満が溜まっていそうだ。休憩時間にでもフォローを入れておこうと心の中でメモを取っておく。


(……こないだのクリスマスも大変だったしな)


 今日は一月一日、元旦だ。

 今日から一週間前のことを思い出したが苦笑いしか出てこない。

 あの日は優綺が訓練を希望したため、色々あったが結局良治と優綺、そして彼女たち三人で過ごすことになり、優綺以外の面々はアルコールも入り盛大に盛り上がった。


 そして寝ることになった時に問題になったのが寝場所だ。

 良治の家には普段使っているダブルサイズのベッドと東京支部から持ってきた布団がある。

 人数的にはベッドに三人、布団に二人と寝れるスペースは十分にある。しかしその組み合わせを決めるのが大変だったのだ。


 そもそも決める方法の段階から揉めそうだったので、良治はじゃんけんで決めろと言い残してシャワーを浴びに逃げることにした。

 そして戻ってくると打ちのめされたように床にへたり込んでいた結那と、椅子に座って壁を見つめる天音に苦笑したのを覚えている。


 結局最終的には良治の寝室に布団を運び込んで五人で同じ部屋に泊まるというおかしなことになってしまった。

 優綺への教育的な意味で本当にどうかと思う。


(……このままでいいのかなぁ)


 漠然とした不安は感じる。しかしそれを今すぐどうにか出来る気もしない。

 考えても良い考えが浮かぶとも思えなかったので良治は京都に到着するまで少しだけ眠ることにした。











「やぁやぁ明けましておめでとう。今年もみんなよろしく頼むよ」

「はい。今年も東京支部は全力を持って白神会の為に努めて参ります」


 上座中央でにこやかに新年の挨拶をする三十代の男に、葵は東京支部を代表して頭を下げた。


 午後一時を一分ほど過ぎ、時間通りに挨拶は始まった。

 ここは白神会京都本部の大広間。

 大広間と言っても今回使われているのは襖を閉めた半分ほどだ。それでもこの部屋に十四人入ってなお、まだだいぶスペースが残っている。


 京都本部で新年会が行われる。

 この話を良治が聞いたのは三日ほど前だ。

 どうやら良治が白神会に入る直前までは毎年行われていたとのことだったが、敵対組織との抗争が原因で中止になっていたらしい。

 そして今度は良治がいなくなってから復活し、今年で復活してから三回目と葵から聞いていた。


 正直出席などしたくはなかった。

 しかし第七位階級以上の退魔士は強制出席とのことで、良治に逃げ場はなく、嫌々ながらここまで来ることになってしまった。

 今回子供組は東京に残って預けられている。正月早々こんな大人ばかりの場に連れて来られても嬉しくはないだろう。


 東京支部の面々は三列になって正座をしていて、一人だけ最前列に座っているのは葵。支部長なのでこれは当然だが、葵の性格的に嬉しくはないだろう。


 二列目には四人。右から結那、まどか、翔、天音の順だ。中央葵の後ろにまどかがいるのは副支部長だからで、翔は葵の伴侶だからだろう。残りの二人は実力的に前に座ることになっている。

 

 そして残る三列目。そこの右から三番目に良治は座っていた。一番目立たない、一番周囲から見られない好位置だ。

 左隣には優綺、そして右側には正吾、その奥には千香が座っている。


「今年は色々あったけど、本当に助けられたよ。――特に良治君。君が戻って来てくれたことは非常に喜ばしいことだね」

「……はい、ありがとうございます。隼人はやとさま」


 名指しで言われてしまえば無視するわけにもいかない。

 内心溜め息を吐きながら隼人――この白神会の総帥に言葉を返した。


 白兼しろがね隼人。現在の白神会総帥にして神刀しんとう流の現継承者。

 白神会最強の剣士にしてトップ。即ち白神会そのものと言える存在だ。


 現在三十代前半なはずだが外見は二十代半ばのように見え、まるで良治たちと同級生くらいのようだ。

 正月のめでたい場だというのに、平時と変わらないような紺色の着流しのような和装で周囲から浮いている。


「君が戻って来てくれた意味は非常に大きい。白神会うちにとっても綾華や和弥君にとってもね。もちろん君を慕っていた人たちにとっても」


 ちらりと正面の隼人とは違い正装をしている、横に座る面々に視線を送る。

 良治たちの右側には綾華と和弥が、左側には宮森道孝みちたか、そして黒髪ショートの女性――柊彩菜あやながちょこんと座っていた。


 良治が彩菜と白神会に復帰して初めて顔を合わせるのがこんな場面とは思っていなかった。正直な話居心地が悪いが、しかしそれを表に出すのは憚られた。


 義妹に当たる彩菜がここに出席している理由は見当がつく。間違いなく黒影こくえい流継承者の浦崎うらさき雄也ゆうやの代理だ。

 表に出てこない彼の代わりに公式の場に出ることは昔からたまにあったことだ。

 まさか自分がその公式の場に出るとは思っていなかったことだが。


「良治君は今都心で自由に動いていることは知っているんだけど、それはそっちの方が動きやすいからかな?」

「そうですね。あくまで私は人手が足りない時の緊急人員ですから」

「ふむ。じゃあ今まで通り好きにやってもらって構わない。でも一つだけ任せたいことがあるんだ」

「任せたいこと、ですか」


 嫌な予感しかしない。

 隼人は昔から常に何かを腹に持っていて、その思考が読み取れない傾向にあった。

 ここ数年会っていなかったこともあって彼が今何を考えているのか想像もつかない。


「うん。良治君、都心部に新たな支部を創設、そして君にはそこの支部長をしてもらいたい」

「――」


 どう答えればいいのか。

 やりたくはない。余計な仕事が増えるのは明白で、今よりも自由な時間が減るのは確実だ。


 しかし白神会総帥の勅命でもある。断るには相応の理由が必要だ。だがそれが思いつかない。単純にやりたくないでは通用しない。


「現在の東京支部から仕事の多い都心部に向かうのは時間も手間もかかるからね。まぁ東京支部の出張所みたいな扱いになるけどね。

 深く考えないで受けてほしいな。上手くシステムさえ作ってくれれば良治君も楽が出来るだろうし」


 支部長になる。

 人員とシステムさえ上手く解決出来れば良治の仕事は今と変わらない可能性もある。そして――


「もちろん手当は出すよ。人員も東京支部と兼任で」

「……有難くお受けいたします」

「はは、そう言ってくれると思っていたよ」


 断る理由がない。

 考えの読めない隼人の掌で動かされるのは癪だが、良治にとっても悪い話ではない。

 懸念した人手不足も兼任ならば都合はつきやすいだろう。


 そして金銭面も助かる。今は困っていないが、質素な生活をしていた流浪の時代から考えるとかなりの支出をしている。

 特に仕事の度にぼろぼろになって買い換えることになっている衣服代が地味に痛い。まどかたちとのデート代も稼いでおきたい気持ちある。


「いえ……その、一つお話したいことがあるのですが」

「ん? 珍しいね。なんだい良治君」

「抜ける時に頂いた『村雨』ですが、霊媒師同盟との一件の時に折ってしまったのですが……」

「残念だね。あれを扱える者はほとんどいないのに。まぁ返されても仕方ない。もしまだ使えるなら源三郎げんざぶろうさんの鍛冶場とこで加工して貰うといい。もし無理なら君に処理は任せるよ」

「はい、わかりました。ありがとうございます」


 ずっと引っかかっていたことがすんなりと終わったことに良治は安堵した。


 良治が言ったように村雨は白神会を抜ける時に、隼人から許可を得て貰ったものだ。

 一人前になった時に賜りずっと使っていたのだが、白神会を抜ける際返そうと思って京都まで来た。しかし隼人はそのまま持って行っていいと言い、良治はありがたく所持したまま旅に出た。


 だが良治の中ではずっと預かっていたという感覚が大きかった。それだけあの村雨は一般の武器とは一線を画す名刀で、人間の鍛えられる刀ではなかった。

 言葉通り、あれは魔界の刀匠によって作られたと言われ、その力を全て引き出すことは魔族、もしくは半魔族化した者にしか出来ないと言われていた。


 だからこそ隼人は良治に村雨を託し、良治はそれを受けいれたのだ。


「さて……隣に座っているのが石塚優綺くんだね。良治君の授業おしえはどうだい?」


 うわ、と思わず口に出そうになった言葉をギリギリで抑え込む。

 こちらがほっとした瞬間にまたあまり触れて欲しくないところに話を振ってくる。

 本当にいやらしい。


「は、はい! ええと、初めまして、石塚優綺です。……そうですね」


 横目でこっちに視線が送られる。どうしたらいいのか聞きたそうだったが、それを良治が言うのも問題だろう。

 それに彼女には思ったままを言って欲しかった。良治もちょっと気になっていることだ。


「……まだ教わり始めたばかりですが、基礎からしっかりと教えてもらっています」

「それは優綺くんの思ったようなものかな?」

「……いえ。最初はもっと知識を教えてもらうものだと思ってました。一緒に行った仕事がそういうものだったので」


 優綺が言うのは陰陽陣との交渉の件だ。

 確かにあれの後弟子にする流れになったので、知識や交渉術を教えてもらうと思うのは当然かもしれない。


「でもまだ教えてもらえてないと。それが不満かい?」

「いえ、そんなことないです。良治さんの教えたいことと私の目指したい退魔士像は重なっていると、そう思っていますので」


 彼女と具体的な話をしたことはない。

 良治の中にこうしたい、こうした方が彼女に向いている、そんな想像はあるが優綺にそれを伝えたことはない。


 だから彼女の言葉に驚いた。

 まだ数回彼女に訓練をつけただけ。それも基礎も基礎、棒の扱い方しか教えていない。座学も一度しか行っていない。


 それの何処で退魔士像が重なっていると感じたのだろうか。

 もしかしたら本当に理解しているのかもしれない。それだけ優綺は聡い女の子だ。真相を確かめに、近いうちに聞かねばならない。


「ふふ、この先が楽しみだねぇ。慕われているようで何よりだよ、良治君」

「……どうも、ありがとうございます」


 苦笑いを隠さずに言った良治に、隼人は全てを見透かしたように微笑わらった。

 隼人は良治にとって恩人の一人だが、どうしてもこういうところが好きになれず、味方とは思えない。

 この感情は出会った時からずっと変わらないでいた。


「次に葵くん、翔君。いさみ君の様子は――」


 話題が葵の方へ行き、自分の順番が終わったことを知り、良治は静かに嘆息した。













 隼人との面会は三十分ほどで終了し、東京支部の面々は広間から去ることになった。

 どうやらこの後は京都支部に到着して最初に通された部屋に戻って食事が出されるらしく、葵や結那などはむしろそれが目的だったようだ。


「あ。明けましておめでとう、皆さん」

「明けましておめでとうございます。ではまたあとで」

「ええ、いってらっしゃい」


 先頭を行く葵が誰かに挨拶をし、そちらを見ると見知った人々が入れ違いになるところだった。

 十人ほどの集団が通り過ぎていく。

 先頭の二人にだけ軽く会釈をすると相手も同じように返して、先ほどまで良治たちがいた広間へ向かっていった。


(まぁそりゃそうだ)


 先頭を歩いていたのは玖珂くが祥太郎しょうたろうと、旧姓蓮岡(はすおか、現在は玖珂性になった加奈だ。更にその後ろにいたのは長野支部員たちで、東京支部の挨拶が終わったのでこれから挨拶をするのだろう。


 新年の挨拶が東京支部だけなわけがない。

 第七位階級以上の退魔士が強制出席なのだから、それは全ての支部に適用されるのも当然だ。


 東京支部は京都本部を除けば最大、三大支部の筆頭だ。東京支部が一番手、二番手が長野支部となれば三番手は福島支部だろう。その後は比較的大きい支部から通されるに違いない。その順番まではわからないが。


「わあ、やっぱり新年はこうじゃなきゃね!」

「おせちは当然として、お刺身や天婦羅とかもあるって最高ね!」

「毎年こうなのか? いや料理じゃなくてこの二人」

「うん、毎年こんな感じ」


 戻って来た部屋に用意されていた御馳走にはしゃぐ葵と結那。目をキラキラさせて席につくさまを見てまどかに尋ねたが、やはり予想通りの答えが返ってくる。


「さ、みんなも席について。新年会よ!」

「わかりましたよ……って葵さんビールの準備早いですね!?」

「良治君が遅いのよ。ほら早くっ」

「はいはい……」


 翔が苦笑しているのが見えて良治も苦笑を返す。葵の酒好きは東京支部員なら皆知っていることだ。そして酔い潰れた後のことは翔の担当で、今からその苦労が思いやられる。


「じゃあみんな、今年もよろしくね! かんぱーい!」


 もう酒が入ってるみたいだな。そんなことを思いながら良治はまどかに注がれたビールで乾杯をした。










「あの、いつまでここで飲んでるつもりなんですか?」


 そう良治が葵たちに尋ねたのは、夕方を過ぎて夜の闇が濃くなった頃だった。

 面会後の十三時半くらいから飲み食いをしているのでもう四時間ほどになる。


 テーブルの上の料理もそのほとんどが誰かの胃袋に収まり、今は適度に摘まみながらコップやお猪口を傾けている。


「んー、何言ってるの? 今日はここにお泊りよ?」

「え?」

「良治知らなかったのー?」


 葵が当然とばかりに言う。結那も知っていたようでふわふわした声で言ってくる。


「いや言われてないんですけど。本当に帰らないんですか」

「だって無理じゃない?」

「なんで?」

「私も飲んでるし、翔さんもみーんな飲んでるんだからー」

「あ」


 酔っぱらいコンビの言葉通り、一人を除いて全員が酒を飲んでいる。今からアルコールが抜けるのはどう考えても深夜だ。


 今日中に帰るつもりでいたので何の用意もしていない。着替えも何も、一切ない。


「……はぁ」

「ね、ほら諦めついたでしょ。飲も飲も」

「結那……まぁいいか。仕方ない」


 一日くらいどうにかなるだろう。何か必要なものがあれば本部の人に言えば少しくらい融通してくれるに違いない。


 しな垂れかかってくる結那から日本酒を注いでもらって煽る。

 帰ることを考えていて、途中から水に切り替えていたのが馬鹿らしい。


「それにしてもぐっすり寝てるな」

「まぁ仕方ないわよ。まどか弱いし」


 以前二人で飲んだ時も二杯目にいった瞬間潰れてしまったまどかにとって、この場は向いているとはとても言えないものだ。

 案の定二杯目の途中で、座布団を枕にして眠ってしまっていた。


「天音は……」

「向こうで優綺と一緒よ……って今私といるんだからぁ」

「はいはい。失礼しました」


 酔ってるので適当に扱いながら再度天音たちを見る。

 どうやら酒の飲めない優綺に合わせて天音もお茶にしているらしい。相変わらず気遣いの出来る天音、隙が無い。今度労っておかないと、とこれもチェックを入れる。


「んー何処行くのー」

「トイレ」

「いってらっしゃーい」


 どうせ泊まるなら焦っても仕方ない。

 新年からゆっくり飲むのも悪くない。そう切り替えてまずはトイレに行くことにした。


 庭伝いにある廊下はガラス窓で遮られているが寒く、足の先からかじかんでいきそうだ。

 背筋がぞくっとするほどで、アルコールの入ってる時は基本的に力を遣わないようにしていたが、寒さに耐えるために全身に力を巡らせて血液の循環を活性化させた。


 少し距離のあるトイレに到着し用を足して出ると、少し落ち着いたせいか所々から賑やかな声が聞こえてくる。他の支部も似たようなことになっているのだろう。


(まぁ楽しい酒は大歓迎だ)


 良治個人としても酒は結構好きな自覚はある。ただそこまで強くはないので常に控えめに飲むようにしていた。記憶をなくすまで飲むのはどうかと思う。


「――……っ」

「――! ……ッ!」

「ん……?」


 賑やかな声に混じって、近くから男女の声が聞こえた。

 もしかしたらそういう行為の最中なのかもしれない。

 そう思って気にはなったが、ここはバレないままに移動するのがベターと判断して足を一歩踏み出した。良治に覗きの趣味はない。もちろん覗かれる方もだ。


「やめて、ください……っ」

「私と結婚すれば蒼月そうげつ流も福島支部も安泰でしょう? それに振られたって話も聞いてますと。――ねえ、今から婚前交渉といこうじゃないですか。姫はじめですよ、姫はじめ。ひひひ」


 踏み出した足が止まる。止めたのではなく、止まった。


「いや、です……!」

「そんなこと言っても結婚しなきゃ蓮岡家がなくなるじゃないですか。それに宮森家と縁が出来るのも悪い話じゃないでしょう。

 さ、そこの部屋が空いてますから――」

「――はい。そこまで」

「は?」

「あ……あぁ!」


 来た方とは逆の廊下の角を曲がった先に、その男女はいた。

 どちらの人物も知った顔だ。そして顔を合わせたくないと思っていたのも同じ。しかしその意味合いは全く異なる。


「柊、良治だと……!」

「ええ。こんばんは、宮森成孝なりたかさん。それと、祐奈ゆうなさん」


 暗がりにいたその男女にゾッとする酷薄さで、良治は笑った。



【村雨】―むらさめ―

良治の愛刀、だった日本刀。

やや長めの刀で扱いやすくはないがその分攻撃力があり、筋力に不安のある良治には重宝されていた。

魔界の刀匠の作品とされ、いつからか白神会にあったと言われ良治が十四歳の頃、一人前になったのを機に渡された。

現在根元から折られている村雨は良治の自宅の天袋に丁重に保管されている。

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