「君」
君は言った。
「優しくないよ。傷つけないだけ。」
傷つくのが怖いから、傷つけないだけ。
君は言った。
「聞き上手なんかじゃないよ。話せないだけ。」
特に趣味もなくて、面白い話もできないから、
だから、必死に相槌うって話を聞くくらいしかできない。
君はそう言った。
そして、こう言った。
「ごめんね。こんなつまらない奴で。」
寂しそうな顔をしていた。
けれど、笑顔であった。
「笑っているくらいしかできないんだよ。」
君は恥ずかしそうに鼻を掻く。
「自分なんかが誰かに受け入れてもらえるとは思えないんだ。」
私は思った。
私と同じだって。
自分なんかが誰かに受け入れてもらえるとは思えない。
キスしたって胸が寂しい。
口づけはマヤカシ。
彼が好きなんじゃなくて。
彼が私を求めていることが好きなの。
それは私に《生きてる》と《此処にいる》ってことを教えてくれるから。
「それ、誰でもいいんじゃないの?」
君は微笑みながらそう言った。
うん。
多分、君の言う通り。
「でも、手首を切るよりはマシだね。」
嗚呼。
君は聞き上手だよ。
話せなくなんかない。
ただ、もう少し君自身のことを話してほしいな。
「はは」
君は笑っている。
けれど、やっぱり自分のことは話そうとしない。