回想、会敵、邂逅-1
ヴァンカレイの賑わう市街を歩く圭護の脳裏には、この世界に来たばかりの記憶が蘇っていた。
家族を失ったあと、身辺は全て整理した。自宅は売却に出し、道場は父の協同経営者であった叔父に譲渡した。大学は既に必要な単位をほぼ取り終えていたためあとは卒業するのみだった。卒業証書その他諸々は全て叔父宅に郵送するように申請した。
そうして圭護は旅に出た。国内外さまざまな場所を3年間、両親や叔父のツテを頼みに彷徨った。国内の柔道や空手の道場から海外の格闘技ジムまで、あちこちを訪ねては教えを請い、時には道場破りまがいの行為もした。
そして日本に戻って来た圭護の胸には、変わらずぽっかりと何かを失ったような空虚感があった。いくら身体を鍛えても、いくら相手を倒しても、夜になれば家族の死に際が夢に現れる。
その度に、贅を削ぎ落とし機械のように無駄なく、鞭のように柔軟に動く身体にびっしりと冷や汗をかいて飛び起きた。
そんな時に思い出したのは、父と一緒にかつて行った山籠りだった。
必要最低限の荷物を詰め、自然の山林にわけ入り昼は山道を駆け、夜は寒さとひもじさに耐えて眠ることを繰り返す。生きることのみを目的にただひたすら感覚を研ぎ澄ましていく。
その日々の中で、圭護は言葉では言い表せない何かを得た気がした。
気がつけばリュックに必要なものを詰め、かつて自らを鍛えてくれた山にいた。何もかもが移ろい行く自然の中になぜか懐かしさを感じながら、ただ山を登る。
そして、やがて現れた以前の山籠りの際仮の宿としていた荒れ寺の奥で、見覚えがないのに奇妙な既視感のある祠を見つけたのだ。




