模擬戦!!
実技テスト最終は模擬戦。その準備のため生徒達は戦う場所を挟んで両側に列を作って座っていた。そして、全員がいることを確認し試験官が説明を始める。
「毎回やってることだからお前達も分かっていると思うが、ルールは何でもありのシールド耐久戦。フィールド外に出れば問答無用で失格とするからそこんとこ注意するように。」
シールド耐久戦とは、魔法の一種である、さまざまなものにかけることのできる防御結界のようなものでかけられたものは、一定の攻撃を無効化することができこの模擬戦ではその魔法効果を破壊することで勝利となる。
「それでは、一回目は3組の九条絵里子。それと、5組の泉琢磨。」
「早速私か・・・。はい。」
璃嵐たちと固まって座っていた絵里子が返事をし立ち上がる。その姿を見て心奈たちが「頑張ってー」と声援を送る。それに対して絵里子は一度振り返り小さくうなずくと、中央のフィールドに出て行く。向かい側からも名前を呼ばれた男子生徒が出てくる。見た目は身長も体格も標準的な男子高生といった感じだが、背中に背負っている大型の両手剣がその雰囲気を壊していた。
「一発目の勝負がお前と俺とはねぇ・・・!今回は俺が勝たせてもらうぜ!!」
琢磨は大剣を引き抜くと絵里子に剣先を向ける。そして一歩ずつ絵里子との間合いを近づけていく。
それに対して絵里子は黙ったまま腰に下げられた片手剣がゆれる音だけをならして間合いをつめる。そして両者が一足一刀の間合いに入ったとたん両者の動きがぴたりと止まる。それを見て教師が一度小さくうなずいた。
「それでは両者、武器を構え。武器同士を合わせろ。」
絵里子もここでようやく剣を引き抜きぬけられた剣先に自身の片手剣の剣先を当てる。
「それでは両者、開始の合図で間合いを開き戦闘を開始せよ。それでは―――始めっ!」
‘キンッ’と剣先同士のぶつかる音が響き両者一気に後ろに飛び間合いをあけた。それと同時に琢磨は、絵里子との間合いをつめなおす。
「シールド展開っ!!」
絵里子の左腕あたりに盾のようなものが発生し琢磨の攻撃を防ぎ回避する。
「いつも通りの展開か、だが今回は勝たせてもらうぜっ!」
琢磨はそのまま大剣は地面に突き刺し自身を中心とした地割れを起こした。地面が隆起し絵里子は吹っ飛ばされそうになるがうまく変化した地形を移動し、地割れの起きた地形から離脱する。
「ふっ、私にその程度の攻撃が通用すると思ったのかしらっ!!」
剣を下から振り上げ衝撃波を地割れの起きた場所へ飛ばしその地形を破壊する。それを琢磨はジャンプして回避しそのまま絵里子のほうへ飛び掛ってくる。
「あめーんだよっ!」
「そっちがねっ!!」
琢磨の振り下げを半身でかわすと、そのままの回転し後ろ回し蹴りで琢磨を蹴り飛ばした。コレには周りで見ていた生徒達も喚声を上げる。
「行けーっ!絵里子ーーっ!そのままやっちゃえー!」
「琢磨ぁー!女子に負けてどうするんだぁー!」
といった感じに周りから声援が飛び交う。絵里子はそれに対して軽く返事を交えつつ余裕の表情で詠唱を開始する。
「やらせはしねーっ!!」
「ふっ、馬鹿ね・・・。もうすでに私の術式は完成してるのよっ!!」
絵里子が剣を天にかざす。
「終わりよっ!!『コリエンテサブマーション』!!」
絵里子を中心に青い魔方陣が地面に展開されそこから一気に大河を流れるような水流が渦巻くように現れ琢磨に一気に襲い掛かった。
「ちょっ、いつの間に―――」
その言葉は誰にも聞こえず、魔法が消えた後に‘ドサッ’と倒れる音だけがフィールドに聞こえるだけだった。
「そこまでっ!勝者、九条絵里子!」
絵里子はその場で一礼すると、元いた場所に戻り心奈の横に腰を下ろした。対戦相手の琢磨はそのままぶっ倒れていたので保険の教師が治療スペースで治療することになった。
次の戦いが始まった頃一戦目の勝者である絵里子は相変わらず余裕な顔をして二回戦目の戦いを眺めていた。
「おい、絵里子。お前は相変わらずえげつないことをするやつだな・・・。」
そういって絵里子の横に座ったのは璃嵐だ。
「そうかしら?あれでも結構手加減したつもりよ。」
「そういえるのが九条らしいな」
後ろに座っていた拳が苦笑した。それに対して絵里子が殴えいかかる振りをする。
「やめなよ二人とも。」
心奈が二人にわって入って仲裁する。璃嵐は相変わらずその情景を見て、ふっ。と鼻で笑った。
「何よ璃嵐。馬鹿なことやってると思ってるわけ?」
「もちろん思ってる。」
絵里子はそれを聞いいたとたん璃嵐に強烈な顔面パンチを一発お見舞いした。
「いってぇー・・・なんでわたしだけいっつもこうなんだ・・・」
璃嵐が顔面を押さえながらその横で心奈が治癒魔法をかけている。その横で通ると拳と沙良の三人は微笑しながら璃嵐のことを見ていた。
「まぁ、エリスンもやりすぎ感あるけどねぇ。」
薫がそういって璃嵐の頭をグワングワンと揺らす。それを静止する和磨が薫を引き剥がして璃嵐の隣に座りその隣にかおるを無理やり座らせた。
「そこまでっ!勝者、飯島悟!次、1組、空野アリー!」
呼ばれたアリーは無言のまま立ち去っていく。
「アリー!ガンバレー!!」
心奈の声援に振り返って一回‘にこっ’と微笑むとそのまま走り出した。それを見た心奈はアニメさながらのぶったおれかたおし絵里子に看病されることになったのは言うまでもない。
圧倒的なアリーの前に対戦相手の生徒が手も足もでずに三回戦は終了し、そのまま四、五回戦目とすすんでいき璃嵐たちのいつものメンバー達も着々と試験を終了させかえってくる。そして、ここに因縁の対決が始まる。
「次っ!2組黒木心奈。対戦相手は、同じ2組の西島拳!」
「まさかお前とはな・・・。」
「ふふっ、その鼻をへし折る瞬間がやっと来たね・・・。」
名前を呼ばれフィールドに足を踏み入れる前から両者はにらみ合いフィールドへと一歩ずつすすんでいく。
両者とも位置につき右こぶし同士を合わる。
「さぁ、はじめようぜ。バカ女。」
「うるさいよっ!今日こそ決めてあげるよ!」
「両者準備はよさそうだな。始めっ!」
‘ゴツン’と軽くこぶしを当てて両者ファイティングポーズをとる。そして始めに仕掛けたのは心奈のほうだった。
軽く探るような左ストレートを拳は顔を傾けて交わす。そして両者そのままの体制で動作を止める。
「探りいれるような暇があるなら最初っから本気でやれよ。黒木。」
「んー?私が本気出したら西島なんて一撃だもん。」
心奈がにやりと笑ったと同時に拳のローキックをお見舞いするが心奈がそれをバック転で交わす。そしてそのまま着地と同時に右手に冷機を漂わせ飛び掛る。
「この一撃で決めるよっ!」
拳にその一撃を叩き込むがそれを軽く止められる。
「甘いな黒木。」
「フフッ。それはどうかな?」
その一撃を受け止めた拳の手がどんどん凍っていく。それに焦り拳は心奈から離れようとするが。
「あれ、おかしいぞ・・・離れねぇ・・・っ」
「当たり前だよ。だってその凍ってる手と私の手は氷で繋がってるんだからっ!」
離れようとする拳の横腹に一発蹴りを入れる。
「ぐっ、それだったらこっちもやってやるっ!」
「ごはっぁ。」
拳は心奈のみぞおちあたり膝蹴りを入れひるんだ隙に、氷だけを叩き割る。そして一気に距離をとる。
「ふざけやがって・・・だけどコレじゃないとなぁ!!」
拳は気合を入れなおし構えなおす。
「無駄なおしゃべりは終わり・・・っ!!私の本気を見せてやる・・・。」
すると心奈の足元あたりから地面に氷ができ始め、あっという間にフィールド全体がスケートリンクのように変化する。
「はぁ・・・はぁ。さぁっ!ようこそ!!『アイスオブワールド』へっ!」
心奈はおなかを押さえつつ息を荒げながら氷の世界を作り上げた。そしてその氷の上を普通の地面を走るよりも早く走り、拳に一気に近づく。
「クソッ!」
拳は一気に横に飛び心奈の突進を避けるが、着地に失敗ししりもちをついた。
「ふふっ。今回も私が勝たせてもらうよっ!」
拳に対して勝ち誇った顔で見下げ、思いっきりストンプを喰らわせる。
「ぐはぁっ」
「コレでフィニッシュ!」
ストンプの2回目を拳は両手で止める。そして心奈を思いっきり投げ飛ばした。
「甘いの・・・は・・・お前ダァぁーーー!!」
地面を思いっきり殴り凍った地面を拳のコブシが突き破り心奈の方向へ地面が隆起していく。そしてその隆起した地面が心奈を上空へと投げ飛ばした。
「お前の・・・考えがっ!分からないとでも思った・・・かっ!」
拳は地面に座り込んだまま心奈の倒れているところを指差し言う。が、次の瞬間。
「3秒あればこの距離くらいつめられるんだよ・・・西島っ!」
拳の目の前に急に現れた心奈はそういった。
「しまっ―――」
そして拳を思いっきり殴り飛ばした。
「勝負あり!勝者、黒木心奈っ!」
一瞬の出来事で何が起こったのかわかってない生徒たちが多かったせいか、一瞬の静寂がフィールド内を包んだそして一斉に喚声が沸きあがった。
「スゴイよ黒木さん!何したの?」
「さすがは俊足の心奈!!バカ力の拳に勝つだけはあるよ!」
「アハハ・・・それほどでもないよ・・・ははっ・・はぁ。」
心奈は少しぐったりしながら上半身を折りおなかを押さえながら苦笑した。
「クソッ・・・完全に『タイムフリーズ』のことを忘れてたぜ・・・。」
「それを計算に入れてないからこうなるんだよ。『ヒール』」
璃嵐が戻ってきた拳に治癒魔法を掛けながら反省点を一つ一つ拳に言ってた。その中でひとつ心奈の特技である『タイムフリーズ』とは、効果範囲内全域の空間の時を凍らせ自分以外のものすべてを止めるという魔法の一つ。ただ、その効果時間は現状3秒しか持たないうえ使った後はほとんどの魔力を使い切ってしまうため諸刃の剣の一面もあるが、その魔法の効果はとても強力で現在この世界でこの能力を持っているのは黒木心奈ただ一人のため研究対象にもなっているほどだ。
「るっせーなっ!それより最後はお前の番だろ?璃嵐。」
「あぁ、次は私だな。やってやるよ・・・。」
そういって璃嵐は立ち上がり右手に剣を持つとそのままフィールドへと歩いていく。そして反対側から小太りの男子高生と対峙し、璃嵐は左手で剣を抜き構え剣先を相手に向けた。
「おれは、負けぇーぞっ!璃嵐!!」
対峙した生徒がそういうと璃嵐がこうかえした。
「私を、なめるなよ?」