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ガーディアン この街を守る高校生達の物語  作者: 珠洲音リラン
生徒会役員の仕事
6/22

実技テスト

ここは演習場、能力を持つ生徒達が日夜訓練をしている場所である。

そこに、濃い紺色のコートと長ズボンを着た男子生徒たちと、同じ色のコートとスカートやショートパンツをはいた女生徒たちが集まっていた。


「はぁぁーーーーー!」

一人の男子生徒が高さ150cmほどの長方形の金属の塊のようなものに、刃渡り90センチほどの片手剣で思いっきり切りつけた。

‘キーン’と、金属音が鳴り響く。それと同時に、それを横で見ていた教師が一回うなずく。

「よし。次は・・・一組、鈴音璃嵐!」

教師にそういわれ、璃嵐は返事をすると金属の塊から20メートルほど離れたところに立つ。

「お前のタイミングで始めてくれて構わない。始め!」

璃嵐は、一呼吸おいてから左手で剣を抜き腰辺りで構える。

「―――行きます!」

その声と同時にその金属の塊へと走り出す。金属の塊と5メートル離れた辺りで、ジャンプし横方向に一回転ひねりし、勢いをつけ金属を切りつけた。

鈍い金属音が少し響いた。

「ふむ。次―――」

そこを見ていた教師はあまりいい顔をしなかったのを璃嵐ははっきりと確認する。それを見た璃嵐は、『はぁ。』と一回大きなため息をついて、次のテストを受けるために移動する。


璃嵐たちは今、能力者としてどれほどの力があるかをチェックするテストを受けている。

まず最初に長方形の金属に一撃与え、その威力を測定するテスト。次に、体力テスト。これは、持久力。跳躍力。脚力を主にテストする。そして最後は、一対一の模擬戦となっている。


肩を落としながら次のテストを受けにいこうとする璃嵐に、後ろから心奈が肩を組んだ。

「うぉーす!テンションあげてかないと次の持久走で死ねるよ?」

「わかってる。」

璃嵐はそう短く返事すると心奈を引き離し、さっさと次のテストへと向かった。

「ったく。人が心配してあげてるのに!」

「ふっ、黒木は余裕があるからいいな・・・。」

和磨は、頭を抱えながら心奈に言う。

「そう、ですね、ほんとに・・・。できれば、わたしも、持久走からは、逃げたい・・・です。」

肩を落としながらアリーは和磨の後ろに引っ付いてやってきた。

「んー!それなら私が担いで―――」

「そいっ!」

「痛っ!もー!なにすんのさ!」

アハハと笑いながら心奈の頭をたたいた張本人である拳は、勝ち誇った顔で心奈を見る。そして心奈はそれを見てにらみつけ両者の間に、火花が散っているようにも見えた。その一触即発の状況のところに絵里子がやってきた。

「はーい。アンタらバカやってないで行くわよー。」

そういって、心奈を引き剥がし襟元をつかんで引っ張っていく。

「はーなーせー!」

心奈は駄々をこねる子供のように足をばたつかせる。

「おーい。黒木ー!そんなに足ばたつかせるとパンツ丸見えだぞー!」

そんな状況を見た拳が茶々を入れる、それに対して心奈が、『今日はちゃんと、スパッツ履いてるから大丈夫ですよー!バーカ!』と返事したと同時に、辺りにいた数名の男子生徒が心奈を見たことを本人は知らないのであった。


模擬戦が行われるグランドの外周にちらほらと先ほどのテストが終わった生徒達が集まってくる。

そんな中、準備運動を念入りにしている璃嵐を少しはなれたところから心奈たちは見ていた。

「やっぱり、璃嵐はつらいのかなぁ?」

「だからといって俺達に何かできるかって言われると何もできないしな。あいつのやりたいようにやれせればいいんじゃないか?」

心奈と徹の二人は、璃嵐の姿を見てそういうと、後ろにいた絵里子が「徹の言う通り。あいつはほっておけばいいのよ。それは心奈も分かってるでしょ?」といって持久走のスタート位置へと向かった。

「あっ、ちょっ。待ってよ!」

心奈と徹も絵里子を追ってスタート地点へと向かった。


「これで、全員だな。」

テストを受けている生徒達が全員スタート地点にいることを試験官である男性教師が確認する。

「これより、10kmの持久走を行う。この演習場の外周は500m、つまり20週で終了とする。禁止事項は、能力を使っての加速、空を飛ぶ行為、ジャンプでの移動。その他違反と思われる行為をした奴は失格とする。」

そういうと、生徒達をスタート地点へと整列させていく。

「ラインより後ろからならどこでもいいから早く並べー。いくぞー。」

そうやってせかすと、おのおの好きなようにスタート地点へと並んでいく。

「よーい―――」

その言葉に先頭のほうに並んでいる生徒達がいっせいに、走る姿勢に入る。それに対して後ろのほうに並んだ生徒達はめんどくさそうに突っ立っている。

「スタート!!」

一斉に最前列にいた生徒達が飛び出した。その後をゆっくりと後ろの集団が追いかけるように走り出す。

スタートの時点ですでに先頭集団ができており、さらにその集団から10メートルほど前に心奈がぶっちぎりで走っている。

(ふふん、今年も私がもらっちゃうよ!)

心奈の余裕そうな走りを最後尾の集団のアリーや、和磨は眺めながら

「全く、あの独走女は・・・すごいな。」

「はぁ、はぁ、全く・・・です。」

ただただ自分達との差を嘆くことしかできなかった。二人が半周した頃にはすでに心奈は一周目を回りきったところだった。その後ろ、外周4分の1ほど離れている先頭集団の数名の中に徹・拳・薫・沙良の順で4人が固まってその集団の先頭を走っている。

「毎度思うが・・・あいつはやすぎやしませんかねぇ・・・流石の俺もあのスピードじゃ無理だぞ。」

「全くもってその通り。あいつは規格外だ・・・。追いつこうと思うほうがきついぜ。」

徹と拳は、余裕そうにそうやって話しながら前を走っている心奈を見た。

「二人とも・・・はぁ、はぁ。結構。余裕。そうだねぇ・・・」

4人の中一番後ろを走っている沙良がすでにつらそうな表情で言う。

「沙良っちも今年は頑張ってるみたいだけど、そんなんだとそこの二人に最後までついてけないよぉ?」

沙良のすぐ前を走るかおるが後ろに振り向きながら余裕そうな表情を見せた。その表情を見た沙良は「だぁー!今年こそは最後までここを守るっ・・・げほっげほっ。」と、何とか薫の前に出るが咳き込んですぐ追い抜かれてしまう。


そんな前の状況を少し後ろのほうを走っている璃嵐は複雑な気持ちで見ていた。自分自身の身体能力の限界を見せ付けられているようなそんな感覚に璃嵐は内心苛立っていた。


さらにその後ろの真ん中の集団。その一番前を走っている絵里子は、璃嵐が無茶しているように見え走りながらも大きくため息をした。


走っている生徒全員のペースが落ちてきてつらくなってきたのか、喋る生徒は誰一人いなくなった。

そうこうしている間に、心奈は最後尾を行くアリーを2週遅れにし20週目に突入する。その頃には、拳たちの集団もばらけて、心奈の後ろ5メートルほどに徹。そのすぐ後ろを薫。さらに10メートルほど離れた所に拳を先頭に3,4人の集団。そこから半周半はなれたところに沙良。その後ろを絵里子たちの集団が追いかけるような形になっていた。

「今回はぁっ!まけねー、ぞっ!黒木ぃー!!」

後ろから不意に声をかけられた心奈は超えのするほうを少しむいた。そして徹が自分を追い越せる距離まで迫ってきていることが分かった。内心心奈は焦った。が、

「抜かせるもんなら抜かしてみろぉー!」

一気に心奈は走るペースを上げた。ここにきてまだペースを上げる彼女に少し徹はひるんだが、かれも負けじと心奈に食らいつくようにペースを上げる。だがそれもむなしく心奈が先にゴールし、その後すぐに徹がゴールする形となった。その後、次々に生徒達は20週目を終え、「きつかった。」「しんどい」とうとういいながら乱れた呼吸を整えていくのであった。ただ一人の生徒を残して。

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ・・・もう、限界・・・です・・・。」

ばたっと、一人の生徒は19週目にして倒れこんだ。その姿を見て心奈は走り出す。

「頑張れ!アリー後もう少し!もう少しだから!」

倒れこんでしまったのはアリーだった。彼女は持久走というより運動があまり得意ではなく、毎回毎回このテストに関しては赤点だったりする。

それでも周りの生徒達は毎回このようになるアリーを何度も応援し時には体力をつけさせようと特訓に付き合ったりしている。だがしかし。

「もう、今回は・・・だ・・め・・・で、す・・・がくっ。」

アリーは起こしていた上半身を倒すとそのまま動かなくなってしまった。それを見て心奈が発狂しかけるがそれもいつもの姿だなぁーと、なだめる絵里子やアリーを介抱する生徒と教師の姿がそこにはあった。

ごく一部の生徒を除いて・・・。


「さぁ、次は実技テストの中でも一番点の高い模擬戦だぜ!空野もさっさと回復させてはじめよーぜ!」

一人の男子生徒がそういった。

そうこうしている間にアリーも回復し、模擬戦の準備が着々と進められた。

のんびりとしすぎたペースですが今年もよろしくお願いします。

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