面倒な報告
(あれ、ここどこだ・・・?)
目を覚ました璃嵐はあたりを見渡す。そこは璃嵐が一番見慣れた場所であった。
(自分の部屋?誰が――ん?)
ベッドのサイドテーブルの上に一枚のメモがあった。
とても、一人にしておくと大変な常態だったので気絶させて勝手に家まで送ったよ。
一応、応急処置と食べるかどうか分からないけど、夕食を買っておきました。(わたしの自腹なのであとでもらうからよろしく!)
報告とかその他もろもろはわたし達でしておくからその後の処理はよろしく!
薫
(ありがたいのかありがたくないのか・・・。よくわからん。それより今何時だ?)
メモの上においてあった時計の時間を見る。
(今6時か・・・。)
時計を確認した後、サイドテーブルとは逆のカーテンを開けて外を確認する。
外はうっすらと明るくなってきてどうやら夜明けだと確認ができる。
‘んー’と一回璃嵐は背伸びをしてから自分の部屋からでて、メモに書いてあった夜食と思われるものが入ったコンビニの袋がテーブルの上にぽつんと置かれているのを確認する。
(中身は、スタミナ弁当と――お、焼きそばパン。これはありがたい。)
袋の中から、焼きそばパン(198円)だけを取り出し袋をあけかじりつく。璃嵐の好物の一つである、ハウスマートの焼きそばパン。そこらへんにある焼きそばパンと変わりはないのだが、はさんである具の焼きそばはシンプルで麺とたまねぎのような何かと少しの生姜が乗っているだけのもので、他のコンビニのそれより人気がないが璃嵐はコレを好んで食べていることが多い、そのためコレを朝から食べられるのは璃嵐にとっては少しの幸福であった。
大して大きくないのですぐ食べ終わると、コーヒーをいれそれをゆっくりとのみながら自分のスマホを確認する。
(ん?メールかなり着てるな・・・)
璃嵐はメールを一件一件確認する。内容はみな同じで送ってきてたのは同じ生徒会の役員からのメールで、大丈夫?とか、明日は学校休んでもいいんだぞてきなことが書いてあるだけだった。
(全くみんなありがたい。グループメールでも送っておくか・・・)
リラン『おはよう。無事復活したから心配するな』
と、送信する。
拳『おー、復活したか』
送信してからすぐに拳が返信してその後すぐに
ここな『おっはーリランー。遅刻しないで学校着てよー』
和『昨日はすまんかった。今日また話して欲しい』
徹『朝っぱらから何かと思えば、相変わらずの復活の早さだw』
エリ『あんたのことだからすぐ復活すると思ったわ。』
(この時間に送っても返ってくるあたり。まぁ、いいか。)
璃嵐は一旦画面を消して、顔と歯を洗ってから学校へ行く支度をはじめた。
制服のグレーにチェックの入ったズボンに履き替え、カッターシャツに袖を通しホックではさむだけでつけられる紺色のネクタイをつける。
(さて、そろそろいくか)
リビングの壁にかけてある時計をみると、7時55分を差していた。それを確認した璃嵐ブレザーの紺の上着を羽織りカバンを左手で担ぎ家を後にした。
そのまま璃嵐が学校のほうへ向けて数分歩いていると、昨日ダイアウルフ達と戦ったところが見えてくる。そのときちょうど後ろから「リーランーーー!」と叫ぶ声が聞こえリランは後ろを振り向く。
「ぐほっ。」
振り返った瞬間強烈な腹パンがリランを襲った。
「なん、で。なぜ、わたし、を殴った・・・!」
リランは腹を押さえながら殴ってきた相手をにらみつける。
「フフン。そんだけ言えるってことは、元気になったってことだねー。」
腹パンした張本人である同じ学校の制服の紺のブレザーに下は赤にチェックの入ったスカートを身につけている薫は、前かがみになっているリランの背中をバシンバシンとたたいて、「いやー、よかったよかった。」といいながら笑う。
「いったいからやめろっ!薫!」
「全く、一応病み上がりのリランにそんなことするな薫。」
薫の後ろから少し遅れて和磨がやってきて薫を璃嵐から引き剥がす。
「ぶー。こんな美少女が心配してるんだからいいでしょー!」
引き剥がされてから「ぶーぶー」言いつつそれを和磨がなだめる。
「とにかく、早く行こう。遅刻したらそれこそあれだ。」
和磨は、薫をなだめると璃嵐をかばいながら学校へと向かった。
「ふぅ、だいぶ楽になった。ありがとな、和磨。」
璃嵐の腹パンされた痛みが引いたのは学校の校門辺りであった。そこまでは、なかなか引かず方を借りなければ歩けないほどの痛みが彼を襲っていたのである。
「いやー。ちょっと、やりすぎちゃったかな?」
‘あははは’と笑いながら謝る薫を璃嵐と和磨は睨み付ける。
「くそっ、朝からなんで私がこんな目にあわなければならないんだよ・・・」
「その辺は、心中察するよ璃嵐・・・」
大きく一つ璃嵐はため息をつきそのまま下足箱の方向へと向かうときだった。
「おい、鈴音!」
ふと後ろから声をかけられた。
「その声は・・・。まずい・・・!」
かけられた言葉を無視して走り出そうとした璃嵐だったがあっさりと右肩を捕まれて後ろにひっくり返される。
後ろを向いた瞬間、いかにも機嫌の悪そうな顔で璃嵐をにらみつける山岡がいた。
「お、おはようございます・・・山岡先生・・・。」
恐る恐る璃嵐はそう挨拶したがそれが逆に山岡をいらだたせた。
「おはようございます?じゃないだろうが!お前昨日の騒動の報告はどうなってやがる!」
他の生徒も登校しているなかで山岡の放った言葉は響き渡る。それと同時に璃嵐も一歩、又一歩と後ろに後ずさっていく。そんな風景を見た周りの生徒はその二人から少し離れていた。
そのため二人のいる場所には誰もいない空間が広がっていたのであった。
「えぇー・・・。私コレでも、昨日は戦ったあと無茶しすぎてぶっ倒れてたんですよ・・・?」
下がりながら少し震え声で璃嵐は返答する。
「あぁ、そうだったらしいな?だが今はこうやって元気につったんってんじゃねーかよっ!」
山岡は璃嵐の顔面めがけての右ストレートを繰り出す。
「うおっ、あぶねっ!なにしやがんだっ!」
璃嵐はそれをとっさにサイドステップでかわし、山岡の方向へと身体を向けてファイティングポーズをとる。
「ふん。まぁ、それだけの元気があればどのような経緯があったか話ししてもらえそうだな。今すぐどういうことがあったか説明しろ。」
「はぁ、分かりましたよ・・・先生。」
璃嵐は言われたとおり昨日の帰りしなに起こった出来事を山岡にこと細かく説明した。そして璃嵐は話し終わった後にようやく気付いたのだった。
「―――というわけです。って時間わ!?」
ふと周りを見渡せばさっきまでたくさんいた生徒の数もまばらになり走って行く生徒もちらほらいた。
「ん?8時28分。もう少しで朝のホームルームが始まる時間だな。」
山岡の答えに璃嵐はようやく理解し、下足箱のほうへと走っていくのであった。
(くそっ!コレだからあいつに何かと説明するのは嫌いなんだよっ!)
璃嵐は教室のある二階への階段を2段飛ばし位で上りながらそう思った。そのとき
『キーンコーンカーンコーン・キーンコーンカーンコーン』
と、チャイムが鳴り響く。
(あぁ、間に合わなかったか・・・)
少しあきらめて走る速度を落としつつ、『1年3組』と書かれた教室に入っていった。
一部修正(制服の詳細)3月21