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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

業(カルマ)

不快に思った方はそっとページを閉じてください。

高校1年生 信道のぶみちは他人の上辺ではない心からの(助けて)の声が聞こえる能力を持っていた。


だから信道は他人を助けて助けて助けまくる、同級生からは偽善者と言われようとも助ける。


それはできる範囲で困ってる人を助けた後の心からの(ありがとう)に自分は、この行いは間違いではなかったと、むしろ救われる気持ちになるからだ。


でも自分の力では助けられない(助けて)があることも分かっていた。病の(助けて)大怪我の(助けて)暴力いじめからの(助けて)

そしてその場に居れば助けられたのに居なかったというだけで助けられなかった(助けて)


(助けて)の気持ちが強ければ強いほど胸を締め付けられる悲しみに心を痛める信道、


肉体の痛みよりも心の痛みのほうが苦しく思うほどに。


ある日少しでも多くの(助けて)を助けたいという気持ちで将来の進路を考えながら学校帰りの電車を待っていた。


例に漏れず帰宅部なのに学校から駅の間の道筋で助けていたのだ。その為日は暮れ午後9時となっている。


充実した気分でもうすぐ電車が来るのを掲示板でチェックしていると。車体は見えないが線路がライトで光り始めるのが見えた。


もうすぐだなと思った瞬間目の前で信じられない光景が流れた。


酔っ払ったおっちゃんが乳母車を持つ母親の背中にぶつかり、押された母親はバランスを崩し乳母車を手放してしまう。そしてその乳母車は、


線路へと落ちていった。


それを見た瞬間信道は走り出すと同時に後悔する。


自分は先頭車両の一番前の乗り組み口に立っていたこと。押された母親は最後尾あたりが止まる所あたりだろう。


その距離は目算で30メートルはあるだろうか。なぜこんなに離れた場所に俺は居るんだ!


電車はもう見え始めている・・・・・・もっとはやく!


母親が半狂乱になり線路へ飛び降りる・・・・・・もっとはやく!!


着地の場所が悪かったのか足を挫き蹲る・・・・・・もっとはやく!!!


母親の(助けて)は今までに無いほどの声、その場に居るのに助けられない、あまりの心の痛さと感情の高ぶりで涙が溢れる。


運転手が気付いたのかけたたましいブレーキ音が鳴り響く中ようやくたどり着いた信道は躊躇い無く線路へと飛び降りる。


手前の泣き叫ぶ赤ん坊を乗せた乳母車をまずホームにそっと載せる。  あと20メートル


涙を流し痛がりながらもこちらを呆然と見つめる母親を抱え上げ力任せにホームへと投げ飛ばす。  あと3メートル




もう、間に合わない。




どこか満足して諦めていたその瞬間頭に流れたのは走馬灯なのか分からないが疑問だった。


自分がやったのは他者から見たら自己犠牲?英雄的行動?命を懸けた究極の自己満足?


投げ飛ばされた母親が何かを叫んでこちらを見ているが一切の音が消えて聞こえない。


この母親と子供は助かったがこれからの人生どんな想いで生きていく?


残した父母はどんな気持ちになる?


ニュースになって世間の人はどう思うのだろうか?


助けたつもりで実は大変な迷惑をこうむっているのではなかろうか?


そう思った瞬間信道は一つの言葉で頭の中を一杯にする。


<生きる>


その瞬間ホームの下へ走り出す。落ちた人の為にホームの下が窪んでいるのだろうと思うと同時にその存在を初めて知った。


電車と自分の距離はもう1メートルも無いが、


生きてさえいればいい!


窪みに飛び入ると同時に片足に衝撃がはしる。


片足がかなりグロテスクなことになっているのを見ながら目の前を横に流れていく車輪を呆然と眺める。


生きた。


生き抜いた。


足が痛い、でもその痛みを感じられるのは生きている証拠なのだ。


死にかけた恐怖、生きられた喜び、これから心配させる両親、誰かを助けられた達成感。


頭の中が感情でグチャグチャになりただただ涙を流し「ごめんなさい、ありがとう、ごめんなさい」と勝手に口が動いていた。




その後ホームの下から救出され救急車に運ばれ病院へと運ばれた。


同乗した赤ちゃんを抱きかかえた母親が涙を流し、病院に着くまでずっと「ありがとう、ありがとう」と言っていた。


そんな母親に僕はこう言った。



「救われたのは、僕のほうです」


と、それを聞いて母親はキョトンとした表情を浮かべていたが泣き出した赤ん坊をあやし始めた。


その光景を見ながら信道は思った。


(生きててよかった)




その後、病室に駆け込んできた両親に泣かれ、親父に拳骨を落とされ、3人抱きしめ合い一緒に泣いた。




あの出来事から月日はながれた。片足は義足になったが不満は無い。


あの時を境に(助けて)が聞こえなくなった。


あの能力は神様がくれた祝福なのか、悪魔がくれた呪いだったのか今では分からない。


でも一つだけ分かったことがある。



死んではならない



何を当たり前のことをと思うだろうが真理なのではないだろうか。


信道はこれからも誰かを助けていくだろう。


自己満足でもいい。


ただただ自分が信じた道を誇りを持って歩んでいこう。

昔実際に起きた事故をニュースで見たのを思い出し、生きてて欲しかったという悔しさのあまり書いたものです。間違いなく不快に思う方がいると思います。申し訳ありません。不謹慎に思いながらも投稿しますがこうであって欲しかったという想いで書きました。

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