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「暇だね」
「……退屈」
「……そんな事言えるのは君達ぐらいだと思うよ、まあ、いいけど」
ぼんやりと呟いた西坂と黒田の二人に思わずといった様子で笹木が苦笑しながら突っ込んだ。
というより、さすがに他に聞かれないようにしていたから良かったものの、一般の通信で流れてたら怒鳴られていたかもしれない。何せ戦場の真っ只中だからして。
……もっとも、二人のある意味抜けた会話も理由がない訳ではない。
何しろ、この二人は確かに【オーガニック】を起動させてはいるが、戦場に出ず後方支援部隊向けにデータを流しているだけだからだ。
もっと正確に言うなら、黒田機の集めた情報を笹木機が受け取り、それを指揮下のみならず各方面の部隊へと流している、というべきか。
そんな彼女が支援砲撃の全責任を負うというのは少々問題がある。立場と権限あってこその責任なのだ。
とはいえ、黒田の索敵能力は欲しい。
かくして、「支援部隊を統括する将軍の連絡役に任じられた笹木中尉が友人から貰ったデータを将軍の許可を得て部隊に流している」という建前の上でこういう事をやっている訳だ。初めて聞いた時二人して曰く「もう少し気楽に考えられないの?」と呟いたが、当然だろう。いちいち建前を考えてややこしい話にしてしまう官僚に呆れているのだろう。
かくして、黒田は動けない。
西坂はといえば、こちらも動けない。
何せ、この両者が出てしまうと一般兵へ回るポイントが予定より大分少なくなるらしい。
しかし、ポイントが減るという事は予定された戦力増強もままならない、という事で「今回は待機」を通達された訳だ。
自動的に【オーガニック】が集めたデータを転送するだけで、ただぼけっと立っているだけの仕事。それはぼやきたくもなるというものだ。
「まあ、こっちも色々と思う所はあるんだけどね」
ぼそり、と笹木も呟く。
彼とて思う所はあるのだ。こんな事をする為に軍に入ったんじゃない、とか色々と。
色々と三人がそれぞれに鬱屈を抱えている時の事だった。
「「あれ?」」
西坂と黒田、二人が揃って声を上げた。
「どうかしたかい?」
「緊急連絡が入った」
「……上がすぐに上がれって」
上?
……ああ、そうか、そういえばこの二人の現在の所属はあくまで宇宙軍であって、正式な命令権もあちらにあるんだっけ。
現状、日本軍にいるのはあくまで出向であり、研修。
緊急事態が起きた時は彼らは即時宇宙軍へ復帰し、その命令に従う義務がある……無論、日本軍側へも通達は為されるし、場合によっては宇宙軍に要請もされ向こうがそれを受けたならそのまま命令に従うが、そうでない場合は速やかに……。
そして、宇宙軍から正式に命令が下った為に二人は即座に宇宙へと上がる準備をする……と言っても彼らの【オーガニック】に特別な装備は必要ない。
「じゃあ、またな」
「……またね」
そう告げて、二人はそのまま上空へと駆け上がっていく。
ま、当然だよな。
『!?どうした!!急にデータが途切れたぞ!!笹木中尉、応答したまえ!!』
「ああ、申し訳ありません。今しがた黒田清美、西坂弘智両名、宇宙軍より指令がありただちに復帰、大気圏離脱を致しました」
『なッ…!?何故止めなかったのだね!!』
「正式な命令はあちらです。こちらはあくまで善意の協力によるものではなかったのですか?それとも、参謀殿は上からの正式な命令を無視しろと?」
『ッ!そ、そうは言ってはおらん!だ、だが……』
くだらない、本気でくだらない。
所詮中央から経歴を積む為だけにやって来た頭でっかちの参謀殿。現に実戦経験豊富な現場の面々はこっちからのデータが途切れたと判断するなりサブの同時に走らせていた索敵情報を元に支援砲撃を続行している。何も支障はない。
大体……。
「そもそも、正式に宇宙軍に要請を出していれば、宇宙軍とてこのような命令は出さなかったはず。何故このような事を?」
『い、いや、それはだな……』
ま、どうせ通常より精度の高い砲撃支援を行い、勝利に貢献した、なんて名声を得たかった、って所だろう。
正式に書類を残していなければ、現場で噂が流れようとただ単に実績という数字だけが中央には上がる、って所かね?
そんなだから責任者の中将に見切られるんだろ……。
正規回線にこの会話が流れてるのを確認しながら、あくまで事務的に対応する笹木だった。
(宇宙、か……)
自分も希望すれば上がれるのかね?
地上離脱
ちょっと黒い(?)お話
旧日本軍も有能な人もいれば、無能な人もいましたからね
間違っていると思ったら下っ端一人の為に上にも怒鳴り込むような人物もいたり……いや、実は辻正信ってそんなだったので下には案外信望あったとか?
まあ、「こういう良い所もあったんだよ」というのは日本では良くある訳で全く弁護の声が上がらなかったのは牟田口中将ぐらいだったとか……
もちろん、現在で非難の声が多いのはそれ相応の理由もある訳ですけれどね




