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■視点:黒田清美
「……久しぶり」
「本当にね」
女性陣二人が仲良く挨拶している。
横で西坂君は黙っていた。彼は余り女性同士が話をしている時はこちらから話しかけるか、用件がない限り黙っている。まあ、私達も男同士が話している時は同じ事だけど。
今日は一応は教導という事になっている。
けれど、実際は友達と話をしに来た部分が大きい。
今の私達は殆どする事がない、だからこそ、こうして各地への出張も認められている。
……けれど、私達には同じ軍の友達が少ない。
一年足らず、それだけで私達は宇宙へ上がる事になった。
友達はいたけれど、実の所私達はある意味孤立していた。なまじ入学前に【オーガニック】を起動させ、多数のポイントを得ていたからだろう。他の人間は彼らに対して無意識の内に壁を作っていた……あの時、同じやり方で進める事は出来なかった学校側の事情はあるとはいえ、特別クラスの設定は「自分達は特別」「彼らは特別」という意識を自然と起こさせ、その中でも更に特別と看做されていた四人がいた。
一年余りが過ぎて、さすがにその壁も学校側の尽力もあって大分緩んではいたが、それでもまだまだであったと言わざるをえない。
結局、更に一年近くをかけて、やっと壁が消えたが、そこには皮肉な事に西坂と黒田二人がいなくなった、という事もあった。二人が宇宙へ上がるという形で学校から、小隊から消えた事で笹木と南宮の二人の隊に積極的に学校側は別の者を入れた。
そうやって強制的に協力しあう形を作る事で解消していった訳だが……。
当然、一年足らずで転校してった二人には関係ない。
なので、今の黒田にとって南宮は貴重な軍学校時代の友人、なのだ。あ、同級生らから仲間はずれにされてる訳ではないぞ、念の為。
もちろん、教導だからちゃんと戦闘はやる。
とはいえ……。
「いやだあああああああ!!!!」
「無理、あんなの無理!!!」
「頼む!!!もう少しでいいから手加減してくれええええ!!」
西坂君が他の全員まとめて相手にしてるんだけど……。
確か、この隊って軍学校卒業したての人間で構成された部隊だよね。
だから、【オーガニック】もまだまだ進化し始めたばっかり。
おまけにこれまで学生だったせいで、まだまだ甘い所が多すぎる。
お陰で、地上では圧倒的に上の性能を持つ【オーガニック】を駆る西坂君のしごきに耐えられず、悲鳴を上げている。
……とはいえ、悲鳴だけだ。
さすがに卒業したばかりの新人ではあっても軍人だけあって腰が引けても逃亡はしていない。
というか、逃亡しようものならそれこそ厳罰ものだけど……。
「……いいの?」
そんな私は南宮と一対一で対峙している。
「両方の意味でいいのよ」
この場合、新人の事と、南宮が一対一で自分と対峙している事の両方を示している。
実際の所……。
「……まあ、楽しそうだし」
「それには同感ね」
悲鳴を上げてはいるし、教導ではあるんだけど……正式な訓練かと言われると実は違う。
悪魔にも上には上がいるんだ、って事を実感してもらう為。
だって、西坂君とも遣り合える相手、勝てない相手がいる。じゃあ、その西坂君はどうなんだ、ってのを実感してもらう為だから割合派手に転がされている。そもそも、本当の意味で模擬戦なら空戦型の西坂君と陸戦型機で教導やるのが間違っている。ベテランならともかく、新人なんだからまず陸戦を徹底的にやった方がいい。
幾ら戦車と違って対空も出来るとは言っても、ね。
「じゃあ、こちらも始める」
「お手柔らかに」
言うなり踏み込む。
……駄目だ。
……南宮の反応が遅すぎる。
こちらとしては倒すのが目的ではないから、わざと盾に体当たりをする……反応だけでなく出力も……。
思い切り体勢が崩れた。明らかにパワー負けしている。私の【オーガニック】の出力は同レベル機の中では決して高い訳ではないのに。
……地上と宇宙を一緒にしたらいけない。
それは分かっていたけれど、昔のイメージが邪魔をする……。
初めて入学しての戦闘で前線を支えていた彼女のイメージが……。
軽く頭を振って、今に専念する。
弱くなっているのなら、何が足りないかを洗い出す。……友達だと思ってる、だからこそ……。
引越しを繰り返してた子、って長い付き合いの相手がいないので友達が限られてますよね
とはいえ、本当に親友って呼べる人ってのは矢張り限られる訳で……
何だかんだで長い付き合いだよなあ、って言える人って貴重だよね




