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■視点:西坂
「………」
眼下に「キャットフィッシュ」を望む。
天気晴朗なれど波高し……。
というか、ぶっちゃけ津波なんだがね。日本で「キャットフィッシュ」によって起こされた地震の為に今度は半島方向へ向かって津波が発生している。警告は行ってるだろうから、後はあちらの問題だろう。
名付き悪魔の例に洩れず、「キャットフィッシュ」も巨大な悪魔だ。宇宙規模で見ても先だって初襲来した超巨大悪魔に匹敵するが、それ以上に恐ろしいというか凄まじいのは名付きの悪魔というのはその全てが「一体の悪魔」だという事だ。
すなわち、先日の大型艦のような「悪魔の集合体によって構築される巨大艦船」とは一線を画す。
ある意味、先日のアレとは別の上位悪魔、とでも呼ぶべき存在なのだろう。
そこから出現する小型の悪魔達、その出現の仕方もそれぞれの名付きによって異なる。
前に暴れてくれたリヴァイアサンの場合、奴のやり方は正に空母だ。
全身の鱗のような形状が展開し、そこから一気に多数の悪魔を同時に射出していく。無論、全ての鱗、ではなく幾つかの大型の鱗からだが。おそらくその鱗の裏側に甲板というか通路があって待機する悪魔が順次射出されていく、という事だろう。
これに対してキャットフィッシュの場合は物凄い大口を開けて、そこから次々と悪魔が飛び出してくる、という形を取る。
最もサイズに圧倒的な差があるのでグロい印象はない。洞窟の中から無数の蝙蝠が飛び出してくるような感じが精々だろうか。何でも最初に吐き出す際が見物だそうで、正に黒い塊のようにも見える群れを最初に一気に吐き出すらしい。その後は次々と飛び出してくるのだとか……ちなみに後の方が手強い。
観察しつつ、ちらりと周囲に視線を向ける。
戦場に到達した後は小隊ごとに分かれて援護と攻撃に回る。
せめて、もっと大型の火器があれば「キャットフィッシュ」に直接攻撃をかけて、注意をひきつける方法も、と思ったがよく考えれば地上で撃つのはアレらは制限がかかっているのだった。理由は当然外したら被害が甚大な事になるからだ。高い攻撃力は外れれば味方を傷つける刃になってしまう。
……やっぱり数が多い。
こちらの数に比して、有象無象が多いせいでなかなか本体に取り付けない。
だが……今の自分は小隊長だ。
勝手に突っ込む事は許されていない。
指揮官の最も大切な事の一つは耐える事だろう。部下の死に耐える、反撃の機を見出すその瞬間まで不利であっても耐える、すぐ暴発してしまうようでは良い指揮官にはなりえない。命令があるその瞬間まで待つんだ……。
■視点:部下
今、俺の目の前では次々と爆発が起きている。
いや、部隊でやってるなら別におかしな事じゃない。
けど、俺の目の前でそれをやってるのはたった一機の【オーガニック】なんだ……。
俺はそれなりにエリートの部類に属していると思っていた。
実際、これまで多少の挫折は経験したが、順調に戦果も挙げていると思っていただけに、突然別中隊にやって来た宇宙軍に現在は所属している、って同僚に対して最初はそれでもそんなに不満を持っている訳じゃなかった。むしろ、どんな奴か、腕を競う事が出来る奴かとそれが出来るなら一緒に訓練をするのも手かもな、と思っていたぐらいだ。
けれど、それはあっさりと覆された。
すぐに追い抜かれ、教えを請うようになった。
シミュレーションで追いついてみせると思っていたが、あいつがやっていたのは俺じゃ到底無理としか言えない代物だった。
こんなの無理に決まってる、そう決め付けて俺はそれに挑戦する事から逃げた……。
今、目の前ではあいつが跳ね回っている。
いや、跳ね回っているというのはこっちの理解が追いついていないだけの見せ掛け。実際は動きは滑らかである事が探知機の航跡からは分かる。
慣性を弄っているのだろう。
そうでなければ、あんな機動は描けない。最も同じ機能が使えたとしても俺があれをやるのは無理だろうが。
突き進みながら、360度自在に回転。
回転しながらもその攻撃は的確で前方、左右上下、更にはこっちの後方にまで攻撃が飛びながら、誤射はなく、悪魔を叩き落していく。お陰で、こっちのやる事が全然ない。
……分かっちゃいたんだ。
あんだけ強い機体を持つには大量のポイントがいる。
大量のポイントは多数の悪魔を倒すか、名付きなどの強い悪魔を倒す事でしか手に入らない。
あれだけ強くなるにはそれだけの戦場を越えてきたのだ、と理性は理解していたが、認められなかっただけだ、と。
(……どれだけ戦えば、あれだけ強くなれるんだろうな)
今、こうして多数の悪魔を落とす事でまた俺とは差が開くのだろう。
エリートなんて思っていない奴こそが本物のエリートなんだろうな……。
諦めてしまう人間もまたいます
諦めない人達だけが宇宙に上がれ、宇宙で生き残れます
そこら辺が……
ワールドネイションは好調
今週も日曜0時には挙げられそうです




