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■視点:????
「ふむ、では奴らまともに戦闘も出来ずに逃げられた、と」
報告を受けた側も受ける側も苦々しい顔をしている。
地震で混乱したのは分かる。
分かるが、何も出来ずに逃げられた、というのはどういう事かと問い詰めたい。
損害を何も与えずに逃げられた、となると相手は損傷を全く負っていない訳だから場合によっては即次の活動に移る可能性がある。
「……こちらに来る可能性は?」
「分かりません」
分かってはいたが、溜息が漏れた。
本当なら「まさか我が国に被害を与える可能性があるから見逃したんじゃなかろうな?」とでも言いたくなるが、あの国の混乱っぷりはそうではなく素で失敗した事を示している。
それに「キャットフィッシュ」の神出鬼没さを考えると他の国に出現する可能性も高い。
そうなれば、他の国からの苦情が出る事は必定だ。国際的な立場も落ちる事になるのは確実だろう。
「とりあえず我が国に出現する事がない事を願うしかないか……」
しかし、世の中そういう嫌な事に限って起きるものなのである。
■視点:西坂
それは突然の事だった。
強い突き上げるような振動。
日本人なら大小こそあれ経験のある感覚。
しかし、この時ばかりは別の心配をしなくてはならなかった。
「まさか……」
その予感が的中した事はすぐに判明した。
名付き悪魔「キャットフィッシュ」出現。
「ええい、あいつらがドジ踏んだせいでこの様かよ!!」
「言うな!!余計に腹が立つ!!」
怒鳴り声を上げながら全員が飛び出していく。
そう、この事態は可能性あり、として既に各基地へと通達されていた。
事前に予測出来ていれば、心構えも反応も全く異なってくる。事実、各基地も地震感知と同時に「悪魔」の検出の有無を確認。有、を確認すると同時に警報を鳴らした。
「航空部隊は先に出撃しろ!!」
隊長のその声に返事だけを返し、そのまま走る。こんな時にいちいち敬礼なんぞしていたらそれこそ怒鳴られてしまう。
外に出てみれば、既に幾人かが【オーガニック】を起動させて待機していた。
どうやら隊長格となる人物が…って自分か!!
急ぎ、自分も【オーガニック】を起動させる。幸いというか自分が最後ではなかったようで他にも飛び出してくる人間がいる。
それを横目で見ながらIFSを確認する。
自分が今回預けられている部隊は一個小隊。
一個中隊という話もあったのだが、いきなりは拙いだろう、という事でこの数になっている。その上で航空部隊を率いる大尉は少し遅れている。といっても別にただ足が遅いとかではなく、出現位置などの情報確認を行ってるだけだろう。とか思っている間に大尉も到着。
ただちに出撃する。
しかし……。
(…………お、遅い)
ついもっと加速したくなるが、そういう訳にもいかない。というか部下を置いていく訳にも自分勝手な理由で編隊を崩す訳にもいかない。編隊を崩してでも前に出ても許されるのは敵を発見した時だ。
なまじ宇宙の高速戦闘に慣れ、その高速戦闘を可能とする機体に乗っている為に遅いと感じてしまう西坂だった……最も、彼の【オーガニック】が全速で飛べば、地球の重力圏を離脱してしまう訳だが……。
下手に口に出す訳にもいかず、ゆっくり過ぎる速度に内心苛々してしまう西坂だった。
損害全然受けなかったので、お隣に顔を出しやがった悪魔さんです
ひょっとしたらと思ってたので迎撃準備はしてた為にこうなりましたけど




