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『停止の数は加速している』
『停止か……傍から見れば何と見るのかな』
『永遠か?』
『かような永遠なぞいらぬわ……事態に停滞は許されぬ、更なる加速を』
『次元の内には耐え切れず滅びを迎える世界もあろう……それでも加速を?』
『最早猶予はない……』
『……最早猶予を与える事すら我々にはないのか』
『そうだ、我々には進める事しか出来ぬ。巻き戻してやり直しているだけの猶予はないのだ…』
■視点:西坂
「……うーん、これでどうだろう?」
「いや、こっちの方が……」
さすがにその場でぱぱっと決まるようなものではないぐらいには稼いだポイントは多い。
だが、必要となるポイントもまた多い。
レベル1の機能を新たに成長させるのなら10ポイントでも、10Lvのものを成長させるのならば100ポイントが必要となる。
これまでレベルを順調に上げてきた一同ではあるが、それぞれがある程度機能を絞らざるをえなくなっていた。最も、ここまで来た連中の事方向性自体は既に定まっていたが。
この場で全て決める事はないにせよ、ある程度皆での意見を聞きたいというのはあった。
「……探知能力は上げるべき、だろうな」
ぽつり、とヴィルゲルムから呟かれた言葉に頷く者は多かった。
今回の上級悪魔。
と、ゴットフリート大佐。
両者の戦いは彼らには認識出来なかった。
余りに高速の戦闘。
瞬きの間にあちらへ、またこちらへ、と瞬時に移動しての戦闘。
彼らの【オーガニック】ではその動きをまともに捉える事すら出来なかった――時折現れる僅かな航跡を一瞬捉えるだけ。あれがもし、これから待っている戦いなのだとしたら……自分達なぞあっという間に殺されるだろう。
無論、そんな事はない。
上級悪魔はこれまで人類の前に姿を現したその数は極めて少ない。
そして何より、それらと一対一で真っ向戦える人類なぞそう多くはない。
更にその上、魔王級ともなれば一対一なぞ不可能だ。少なくとも、現状ではそれが可能と考えられる人類なぞ一人しかおらず、その当の本人は行方不明だ。いや、別に戦闘で行方不明になった訳ではない。人類史上たった一人、自らの【オーガニック】に恒星間航行能力を持たせ、宇宙へと旅立った人物。
幾つもの【オーガニック】が連結した大型とは異なり、単機でそれを可能とした【オーガニック】。
そんな人類の英雄とも呼べる彼はある日突然、姿を消した。
「求められているものを探しにゆく」
そんな言葉を残して。
見捨てられた、裏切られた、そんな気持ちを抱いた者は決して少なくなかったが、それでも彼が死んだと思う者はいなかったし、この事が公表される事もなかった。
なまじ人類が英雄として広めていた為に人々の落ち込みを懸念しての話だ。
そんな例外中の例外、或いはそれに続く僅かな者達を除けば上級悪魔と一対一で戦える者などいない。
けれども、西坂達にしてみれば現実に姿を現した脅威。
自分達が戦わねばならない可能性のある相手だった。その為にはまず探知機能を向上させて捉えられるようにするのが前提だ。
「後で教官に聞いてみよう、どの程度上げればいいのか」
「あと、あの高速戦闘にも種があるはずだ。瞬間転移にも見えたアレも聞いておきたいな」
「そうだな、西坂なら或いは可能になる可能性だってある訳だし」
西坂の機体の持つ空間断層はさすがに他の一同でも持っていない。
「後はあれだ。これは機能の問題じゃないが、戦艦というか超大型への対抗策は各自考えておかないといけないだろうな……」
続けられたアルバートの言葉に全員が渋い表情になった。
毎度毎度あんなひたすら潰すような戦いを強いられるのは溜まったものじゃない。まあ、さすがに次からは他の人も手伝ってくれるだろうが、逆に手が回らなくて今回以上に大変な状況で戦わねばならない可能性だってない訳じゃない。
「……やらないといけない事だらけだな」
「暇よりはマシだと思おう」
「どっちかってよりは生きてるだけマシって方が合うかもな」
まあ、いい事あるさ、その内きっと。
なんかグダグダに?
とりあえず次回は再び地球へとしばらく戻ります




