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■視点:カルロ
カルロは咄嗟に西坂を蹴り飛ばす形で自身も反対へ飛んだ。
この場合、別に彼に恨みがあったからではなく、突撃体勢に入っていた為に一瞬反応の遅れた西坂への攻撃を防ぐ為だ。
荒っぽい手段だったとは思うがお陰で悪魔からのビームは二人の間を抜けていった。ちら、と確認したがその攻撃をそのまま受けるような迂闊な者はいない。
「無事か」
声がぶすっとしたものになったのは我ながら情けなかった。
こんな時まで自分は感情を抑制しきれないのかと。
『大丈夫だ、すまない』
「構わない。それでどうするんだ、あれ」
最早砲塔を破壊する意味はあるまい。
ばれたから、なのかそれとも何かの思惑があるのか、砲塔はもう砲塔ではなくなった。
しかし……。
「……なら、どこを攻撃すればいいんだ?」
思わず声が洩れた。
こうした大型艦ともなれば人が乗り込んでいるのならば艦橋やCIC。
乗り込んでいないとなると、機関部。
砲塔を破壊しようとしたのはこいつで地球を攻撃されたら危険だと判断したからだ。
だが、目の前で解けていく砲塔と機関部が同じ存在なのだとしたら……どこを壊せばいい?
思わず、といった感じで洩れた自分の声に周囲の連中も思わず黙り込んでしまった。
『ふむ、ここまでか?』
そこで聞こえてきた声は有難い事にゴットフリート大佐の声だった……っていうか、そういう事を言うという事はこの事も……知ってたんだろうな、きっと。
そのまま戦闘しながら聞け、と言われて出来るようになっている自分が何か妙な生物に思えたよ。
■視点:西坂
……何でもこうした超大型悪魔の場合、核となる存在がいるらしい。
そいつを中心に悪魔が集合して一体の巨大な悪魔を形作るんだとか。もしかして、地上のも、と思ったがあれはそうなのと、そうでないのとがいるそうだ。
生体型の悪魔だからこう、機械型の悪魔だからこう、という事はないが生体型の悪魔の一部はあそこまで育った、というのがいるらしい。……なんて迷惑な育ち方だ。
「でも、先生。それなら教えて下さい」
『すまん、超大型はまだ太陽系に出ていなかったからな。卒業前にざっと教えておけばいいと思っていたよ』
まあ、先生も迂闊だったと言ってしまえばそうなんだが。
別の先生曰く外宇宙関連の勉強のカリキュラムに加えておこう、との事。どうやら来年入ってくる二期生からは俺達みたいな体験をしないで済むみたいだ……。
「それで結局どうしたらいいんでしょうか?」
『うん?それはお前らが考えろ』
………えッ?
『何で俺達が手出さないと思ってるんだ?何時だって予定通りに進むとは限らんのだ。お前達現場にいる者で何とかしてみろ、突発事態への対処試験だ。課題はそうだな、お前達全員で意見を出し合い相手の核を撃破せよ、って所だな。核まで出せば合格と看做すとしよう』
……そりゃないです、先生……。
といっても、スパルタの先生達が言い出したら引かないという事は理解している。……本当に危ないと思ったら教官達で問題なく撃破出来るんだろうと推測出来た時点で焦る必要も消えた。
まあ、こういう恒星間航行船としては小型の核は本当に単なる頭脳であり、戦闘能力も皆無な事が普通だという。
……まあ、神々って奴のサービスだと割り切ってしまった方がいいんだろう。数がとにかく大量なお陰で、現在も猛烈な勢いでポイントたまってるし。
「で、どうする?」
皆に声を掛けた。
何かアイデアがあれば言って欲しいと。ちなみに、すぐに思いつく案ぐらいは言った。ひたすらに全滅するまで攻撃、ってぐらいはね。
まあ、最後の案だけど。
さすがにそれは勘弁して欲しい。
全長3km余の巨体を構成する悪魔全部を滅ぼすってどんだけ大変な事になるやら考えたくはない。
うん、自分か誰かがいい案を思いつく事を期待しよう、三人寄らば文殊の知恵、て言葉もあるし、その四倍以上いるんだ。もっといい案も思いつくさ、きっと。
その時はそんな風に考えた事もありました。
さて、いきなり試験です
抜き打ちテストって嫌だよね…




